第61話 ②癒しの天使様は正月太りにお困りです

 ダイエット一日目。

 今日は天気も良く、走るには絶好の天気をしていたので朝のうちに文秋君に連絡をして、夕方に一緒に走る約束を交わしていた。

 そして、夕方。

 集合場所は駅前。

 私は十分前に駅に到着して文秋君を待っていた。 

 服装は走りやすいように上下ジャージ。


「お待たせ」

 

 それから数分もしないうちに文秋君がやってきた。

 文秋君も上下ジャージ姿だった。


「待った?」

「いえ、私も今来たところです」

「よかった。紫穂さんもジャージなんだね」

「これが一番走りやすいですからね」

「だね」


 ランニングコースの土手に移動する。

 冬ということもあって日の沈みは早い。後一時間もすれば完全に日は沈むだろう。オレンジ色の夕日が目に眩しい。


「走る?」

「走りましょうか」

 

 私たちはゆったりと走り出した。

 土手には私たちと同じように走っている人たちがいた。

 すれ違うと挨拶をしてくれる人もいて、そのたびに私たちも挨拶を返した。

 

「なんだかいいですねこういうの」

「だねー。他人同士でもこうやって走っている間だけは同じ目的を共有してるって感じがするね」

「みんな正月太りをした人たちなんでしょうか?」

「それはないんじゃないかな」


 文秋君はおかしそうに笑った。


「まぁ中にはいるかもしれないけどね」

「それにしても、まさか二人とも正月太りするとは思いませんでしたね」

「紫穂さんの家のおせちが美味しすぎたんだよ」

「それを言ったら文秋君のお家のお雑煮も美味しかったですよ?」

「だから正月太りしたんだろうね」

「ですね。しっかり走って痩せましょう」

「紫穂さん、本当に太ったの?」

「それを女の子に聞くのはダメですよ?」

「あ、ごめん。でも全然変わってないように見えるから」

「まぁ、文秋君だから許しますけどね。太ったんです。二キロも!」

「そうなんだ」

「だから、しっかり痩せないとです!」


 土手の半分くらいまで走ってきた。

 そこで一旦ランニングをやめてジョギングに切り替えた。

 残りの半分はジョギングで流す。 

 

「冬なのに走ったら結構汗かきますね」

「そうだね。帰ったら真っ先にお風呂に入らないと」

「運動した後のお風呂は気持ちいいですよね」

「そして、お風呂上がりの牛乳を飲む!」

「最高ですね!」

「紫穂さんのお風呂上りに牛乳飲むの?」

「飲みますよ」

「そうなんだ。美味しいよね。お風呂上がりの牛乳!本音を言えば、紫穂さんのココアを飲みたいところだけどね」

「それは今後のお楽しみとして取っておいてください」

「そうだね。そうするよ!」


 そんな会話をしているうちに土手の端までやってきた。

 ここからは折り返し。

 今来た道をランニングとジョギングをして戻る。

 夕日が半分ほど隠れてしまった。 

 向こう側につく頃には暗くなっているだろうなと思いながら私は走り始めた。

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