第63話 ①癒しの天使様は服のサイズを間違えてお困りです

 冬休みが終わり、学校が再開した。

 俺は天谷さんが住んでいるマンションの前で、天谷さんが出でくるのを待っていた。

 今日は、雪ではなく雨が降っているので傘をさしている。

 

「おはようございます」

「おはよ」

「今日は雨ですね」

「そうだね」

「あの、よかったら途中まで一緒に行きませんか?」

「ん?そのつもりだけど?」

「いえ、そうじゃなくて、相合い傘で・・・・・・」

「あー、そういうこと・・・・・・いいよ」

「ありがとうございます」


 嬉しそうにはにかんだ天谷さんは傘を持っていた。

 どうやら、今、相合い傘をすることを決めたようだ。

 そういえば、一度もやったことなかったっけ。


「それじゃ、行こうか」

「はい」

 

 俺の傘では少し狭く感じたが、まぁそこは俺が肩を濡らせばいいだろう。

 そう思いながら天谷さんと相合い傘をして歩き始めた。


「今日から学校ですね」

「そうだなー」

「文秋君の学校は冬休み明けテストありますか?」

「あるよ。明日から二日間」

「今回は大丈夫なので?」

「まぁ、なんとか?」

「あまり自信はなさそうですね」

「それは毎度のことだから」

「今日は学校お昼までですか?」

「うん」

「じゃあ、あまり意味ないかも知れませんが『鈴のカフェ』で一緒に勉強しませんか?」

「それは嬉しい提案だね。ありがとう」


 ということで放課後は天谷さんと『鈴のカフェ』で勉強会をすることになった。

 流石に天谷さんの学校の前までこのままで行くのはまずいと思いつつも、天谷さんが傘を開く気配がないので、しばらくそのまま歩いていていたが、一応声をかけておいた。


「紫穂さん、そろそろ自分の傘開いた方がよくない?」

「なんでですか?」

「だって、もうすぐ学校だよ。誰かに見られらたまずくない?」

「それは、大丈夫ですよ。私の学校は女子校ですし、バレたところで質問攻めにあうくらいでしょうから」

「それは、いいの?」

「はい。私はそんなに気にしませんよ?」

「そっか・・・・・・」


 それなら俺も覚悟を決めよう。

 そこで、俺は一度だけ天谷さんの学校の前で絡まれたことを思い出した。

 あの子に会わなければいいなと思いつつ俺は歩く足を進める。

 そして、何事もなく天谷さんお学校に到着した。


「ありがとうございました。あの、肩大丈夫ですか?」

「あ、気づいてたんだ」

「当たり前です。気づかないわけないじゃないですか」

「そっか。大丈夫だよ。学校に着いたらどうせ乾くし」

「風邪、ひかないでくださいね?」

「もしひいたらその時は看病よろしくね」

「ひかないのが一番ですからね。もちろん、看病しますど」

「じゃあ、風邪ひいちゃおうかな」

「もぅ〜」


 少し呆れつつも天谷さんは笑顔で俺の肩をハンカチで拭いてくれた。


「ごめん。ありがと」

「いえ、じゃあ、また放課後に」

「うん。また後で」

 

 手を振る天谷さんに手を振り返すと俺も自分の学校に向かった。

 今日はあの生徒に呼び止められることはなかった。が、いろんな生徒から視線を感じていた。

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