第59話 ⑩唯川の実家
翌日、お母さんが車で家まで送ってくれると言ったのでそうしてもらうことにした。
俺と天谷さんは後部座席に座っていた。
「紫穂ちゃん、この二日間はどうだった?」
「はい。とても楽しかったです!」
「それはよかったわ。またいつでもいらっしゃね。今度来たときは文秋の子供のころの写真とか見せちゃうから」
「ほんとですか!?それは楽しみです!」
「ちょ!?俺は許可しないよ!?」
「別にいいじゃない。減るようなものでもないし」
「そうですよ。私、見たいです!」
そんな懇願するような目で見られたら断れないだろ。
「分かったよ。好きにすればいいよ。その代わり笑うなよ?」
「それは無理じゃない?子供のころの可愛すぎて今でも見ると思わずにやけちゃうから」
「それはますます楽しみです!また、近いうちにお伺いしますね!」
「うんうん。いつでもいらっしゃい」
その後は天谷さんとお母さんの話が弾み俺はすっかりと蚊帳の外とだった。
まぁいいか。二人が仲良くなってくれるのはいいことだしな。
俺は窓の外を眺めながらそんなことを思った。
そうこうしているうちに天谷さんの住んでいるマンションに到着した。
「ここが紫穂ちゃんのおうち?」
「はい」
「立派なところに住んでるのね」
「実家はもっとすごかったよ」
「あら、紫穂ちゃんの実家に行ったの?」
「うん」
「本気なのね」
「まぁね」
「そっか。手放すんじゃないわよ?」
「分かってるよ」
俺が頷くとお母さんは微笑んだ。
「安心してください。お母様。私が放しませんから」
「あらあら、これは早めに孫の顔が見れるかもしれないわね」
「楽しみにしててください!」
「し、紫穂さん!?」
「愛されてるわね~」
「愛してますから」
天谷さんは微笑むと俺のことを見つめた。
その目は何かを言ってほしそうな感じだった。
だから、俺は窓の外を見ながらボソッとつぶやいた。
「俺も、愛してるよ……」
「知ってます」
「もぅ~見せつけてくれるわね~。後は車の外でやってちょうだい」
「え?俺は送ってくれないのか?」
「ここなら、あんたは電車で帰れるでしょ」
「ケチ」
「いいの~?紫穂ちゃんとここでお別れでもいいなら送って行ってあげるけど?」
「分かったよ電車で帰るよ」
電車で帰るめんどくささよりも天谷さんといる方を選んだ俺は車から降りた。
「じゃあ、またね~」
「はい。お元気で。またお会いしましょう」
「お父さんにもよろしく」
お母さんは車を走らせた。
その姿が見えなくなると天谷さんが言う。
「ほんとに楽しかったです。また連れて行ってくださいね」
「もちろん」
「さ、中に入りましょうか。ホットココアを入れてあげます」
「それは嬉しい」
その後、俺は天谷さんの家でホットココアをごちそうになって、この数日間のことを思い返しては幸せな気分になったのであった。
☆☆☆
実家編終了!
次回からまた甘々な話を書いていくぞ~!
書きたい話がたくさんある!笑
おたのしみに~!
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