第54話 ⑤唯川の実家
残り二つの福袋も無事に買うことができた俺たちは三階でお母さんが来るのを待っていた。
お母さんは十分もしないうちにやってきた。
「お待たせ~」
その両手には二ずつ紙袋をぶら下げていた。
「ちゃんと買えた?」
「買えたよ」
俺は手に持っていた四つの福袋を見せつけた。
「ありがとう!二人とも、お疲れさん。ご飯食べて帰りましょうか」
「とりあえず、この福袋をどうにかしたい……」
「そうね。まずは車に置きに行きましょう」
すべての福袋を車に乗せて、屋上にあるフードコートに向かった。
「さ、好きなもの食べていいわよ!」
「紫穂さんも遠慮せずに好きなもの食べて」
「はい。ありがとうございます」
お母さんにお金をもらって、天谷さんと一緒にフードコート内を見て回ることにした。
「何食べる?」
「う~ん。これだけお店がたくさんあると悩みますね」
「そうだな」
百貨店の屋上にあるフードコートには十種類以上のお店があった。
どのお店からもいい匂いが漂ってきて、何を食べるか悩ましかった。
「どれ捨てがたいですけど、決めました!」
「何?」
「ちゃんぽん麺にします!初めての挑戦です!」
「マジ?」
「はい。文秋君は食べたことありますか?」
「もちろんあるよ。美味しいよ」
「じゃあ、ちゃんぽん麺で決まりです!」
「俺は何にしようかな。紫穂さんは先に注文してきていいよ」
「分かりました」
俺は天谷さんにお金を渡した。
天谷さんを見送って、俺も早く決めないとなと思いながらお店を見ていたが、なんだかちゃんぽんが食べたくなってきた。
「俺も同じのにするか」
そう呟いて、俺は天谷さんの後を追った。
「あれ?文秋君どうしてここに?」
「俺もちゃんぽんにしようと思って」
「そうなんですね。一緒ですね!」
「そうだね」
最後尾に並んでいた天谷さんの隣に並んで順番が来るのを待った。
順番が来てちゃんぽんを2つ頼むとお母さんが待っている席に戻った。
「あら、2人とも同じものにしたのね」
「はい」
「仲がいいわね~」
そう言ってお母さんは微笑むと自分の昼食を買いに行った。
「先に食べてよう」
「いいのですか?」
「冷めちゃうからな」
天谷さんと隣同士に座ってちゃんぽんを食べ始めた。
何気に久しぶりに食べるちゃんぽんは格別に美味しかった。
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