第43話 ⑩癒しの天使様はお見合いにお困りです

 天谷家行きつけの神社に到着した。

 元日ということもあってかなりの賑わっていた。

 長い階段を上がって本殿に向かった。

 賽銭箱の前には長蛇の列ができていた。


「凄い人だな」

「かなり人気の神社ですからね」

「そうなんだ」

 

 俺たちは天谷夫妻の後ろに並んでいた。

 その後ろ姿は将来、俺たちが目指すべき姿のように感じた。

 並ぶこと1時間。

 ようやく、賽銭箱の前に到着した。

 

「文秋君は何をお願いしますか?」

「そんな決まってるだろ」

「ふふ、きっと私と考えてることは一緒ですね」

「かもな」


 お賽銭箱に5円玉を入れて手を合わせた。

 これから先も天谷さんと一緒にいれますように、と。

 

「せっかく一緒に初詣に来たのでおみくじ引きませんか?文秋さんはいつもおみくじ引きますか?」

「まちまちかな。その年の気分」

「そうなんですね。私もそんな感じです」

「じゃあ、引くか」

「ですね」


 俺たちは天谷夫妻に断りを入れて、おみくじコーナーに向かった。

 おみくじコーナーにはいろんなおみくじが置いてあった。

 去年は引かなかったから、内心俺はワクワクしていた。

 それは、天谷さんも同じなのか、どれにしようかと迷っている様子だった。


「どれにしましょうか?」

「こんだけ種類があると悩むな」

「ですね〜。最近のおみくじは種類が多いですよね」


 結局、色々悩んだ末、シンプルなおみくじをすることにした。


「大吉を引きたいですね!」

「そういえば、最近引いてないなー」

「私もなんですよ。前回大吉を引いたのは数年前です」

「俺もそれくらい前だな」


 お金を入れて箱の中からおみくじを1枚選ぶ。

 もちろん直感で、最初に手に触れたやつを選んだ。


「選んだ?」

「はい!」


 2人で一緒におみくじを開いた。

 俺の結果は大吉だった。

 久しぶりの大吉に思わず顔がにやけそうになる。

 それを我慢して、天谷さんに結果を聞く。

 

「どうだった?」

「どうでしょう〜」


 天谷さんはニヤニヤと笑っていた。

 これは・・・・・・。


「大吉を引いたな?」

「正解です!大吉でした!文秋君はどうでしたか?」

「俺も大吉だったよ」


 そう言って、俺は自分のおみくじを天谷さんに見せた。


「一緒ですね!」


 天谷さんは嬉しそうに笑った。

 その笑顔を見て、俺はこのおみくじは一生の記念になりそうだな。


「文秋君、記念にこのおみくじ取っておきませんか?」

「そうだな。そうするか」

「ありがとうございます!一生の記念にします!」

「それは、大袈裟だな」

「そんなことないですよ〜」


 天谷さんは嬉しそうにそのおみくじを空に掲げていた。

 俺は大吉のおみくじを大事に財布にしまった。

 

「さて、お母さん達が待ってますから、戻りますか」

「そうだな」


 お守り売り場にいた天谷夫妻のもとに戻ると一緒にお守りを選んだ。

 俺は健康祈願のお守りを買って、天谷さんは交通安全のお守りを買っていた。

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