第42話 ⑨癒しの天使様はお見合いにお困りです

 それから、俺は紫苑さんと水穂さんか質問攻めにあった。

 その様子を隣に座っている天谷さんは楽しそうに、時に恥ずかしそうに見守っていた。


「それで、2人はいつ結婚するの?」

「ちょ!?お母さん!何言ってるの!?」

「そうだよ。水穂さん。2人はまだ高校生なんだから、そんな話は早いだろう。で、子供はいつできるんだい?」

「ちょっと!?お父さんまで!」


 天谷さんが慌てたようにそう言うと、天谷夫妻は楽しそうに笑っていた。

 その光景だけで仲のいいのが分かる。

 

「本当に仲のいい家族ですね」

「ありがとう。娘達のことは本当に愛してるからね」


 紫苑さんは優しい微笑みを浮かべそう言った。

 大広間の扉が開いて玄さんが食事を運んできてくれてた。

 お正月ということもあって運ばれてきたのはおせちだった。

 しかもめっちゃ豪華だった。


「凄いですね・・・・・・」


 その豪華さに俺は圧倒された。

 数段重ねの重箱に入っていたおせちは、どれもキラキラと輝いていた。


「それじゃあ、食べましょうか」

「文秋君。遠慮せずに好きなの食べていいですからね?」

「うん。分かった」


 天谷さんから箸とお皿を受け取って、4人でいただきますをした。

 どれを食べようかと俺が迷っていると、天谷さんがいくつかのおせちをお皿に乗せてくれた。


「私のオススメです」

「ありがとう」


 天谷さんが乗せてくれたおせちを食べた。


「美味しい!」

「ふふ、よかったです」

「もっと食べてもいい?」

「どうぞ」


 天谷さんは嬉しそうに微笑んで自分もおせちを食べて幸せそうにしていた。

 久しぶりの家庭の味に満足そうだった。


「美味しそうに食べるな」

「実際美味しいですから」

「それは、同感」


 天谷さんの家のおせちは本当に美味しかった。


「なんだか、すでに夫婦ね」

「そうだね」

「もう、お見合いは必要なさそうね」


 俺たちの様子を見て、天谷夫婦はそんな会話をしていた。

 その言葉は俺たちには聞こえていなかった。

 その後は、おせちを食べ進めた。

 いつの間にか重箱一杯に埋まっていたおせちは空になっていた。

 

「ごちそうさまでした」

「お口にあったかしら?」

「はい。美味しかったです」


 俺は丁寧に手を合わせ、もう一度ごちそうさまを言った。


「よかった!さて、それじゃあ初詣に行きましょうか」

「そうだね。そろそろ、初詣に行こうか」

「初詣ですか?」

「私の家では毎年恒例の行事なのです」

「そうなんだ。だから、着物だったのか」

「ですね」


 ということで天谷家を後にして天谷家がよく行く神社に向かうことになった。

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