第41話 ⑧癒しの天使様はお見合いにお困りです

 天谷さんと一緒にドアノブに手をかけ、一緒に扉を開けた。


☆☆☆


「おかえりなさい。紫穂ちゃん」

「おかえり。紫穂」


 大広間の真ん中に白いテーブルと4個の椅子。

 左手は全面ガラス張り。

 右手には大きな絵が飾ってあった。

 

「ただいま。お母さん。お父さん」


 天谷さんが2人に向かって丁寧に頭を下げた。

 すると、赤い着物を着た天谷母が立ち上がって、天谷さん目掛けて一直線に走ってきた。


「紫穂ちゃん!紫穂ちゃん!会いたかったよ〜」


 そう言って、天谷さんに抱きつくと頬擦りをしている。


「もぅ、お母さん。着物で走ったら危ないっていつも言ってるでしょ!それと、文秋君がいて恥ずかしいからやめて!」

「だって〜!ずっと会いたかったのよ!」


 天谷母は俺のことなど眼中にないかのように、天谷さんにべったりだった。

 

水穂みずほさん。お客さんの前ですよ。もう少し抑えてください。僕も我慢してるんですから」

「は〜い」


 天谷母は天谷父に注意され、天谷さんから離れた。

 そして、乱れた着物を整えて、俺の方に向き直った。

 そこでちゃんと天谷母の顔を見た。

 天谷母は、天谷さんによく似ていて、綺麗な人だった。

 赤い着物もよく似合っていた。


「あなたが唯川君?」

「あ、はい。初めまして。唯川文秋といいます。えっと、あま、じゃなかった・・・・・・紫穂さんとお付き合いさせもらってます。よろしくお願いします」


 そう言って、俺は天谷母に向かって丁寧に頭を下げた。

 すると、天谷母はうふふ、と笑って俺の頭をわしゃわしゃとした。


「紫穂ちゃん。この子可愛いわね!昔の紫苑しおんさんにそっくり」

「え・・・・・・」

「文秋君、だっけ?」

「はい・・・・・・」

「改めて、私は天谷水穂。紫穂ちゃんのお母さん。で、座ってるのが・・・・・・」

「天谷紫苑です。いらっしゃい。紫穂からいつも君のことは聞いてたよ」


 水穂さんと紫苑さんは優しく微笑んでいた。

 その顔を見て俺は緊張が溶けた。

 天谷姉妹が覚悟しておいた方がいいとか言うから、どんなご両親かと思ってたけど、普通の人たちぽくて安心した。


「さ、2人とも座りなさい」


 紫苑さんに手招きされて俺たちはテーブルに向かった。

 紫苑さんのとなりに水穂さんが座り、俺と天谷さんは2人の対面に座った。


「まずは、食事にしようか」

「そうね。玄さん、お食事の準備をお願いしても?」

「かしこまりました」


 扉のそばに立っていた玄さんは渋い声でそう言うと、大広間から出ていった。


「さて、唯川君」


 紫苑さんが改まって俺の名前を呼ぶ。

 その眼光は鋭く、テーブルに肘をつき、顔の前で手を組んでいた。


「話を聞かせてもらおうか」


☆☆☆

更新し忘れてました😂

すみません! 

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