第28話 ⑤癒しの天使は雷が怖くてお困りです

 翌日。

 クリスマス当日。

 学校を終えた俺は待ち合わせ場所の駅に向かっていた。

 歩きながら空を見上げる。

 灰色に覆われた空は今にも雪が降りそうだった。

 

「雪、降るといいな・・・・・・」


 駅に到着して、天谷さんが来るのを待った。

 それから5分後に天谷さんがやってきた。


「お待たせしました」

「ん、お疲れ様」


 天谷さんは、手袋にマフラーにコートと完全防寒をしていた。

 

「温かそうだな」

「温かいですね。寒いですか?」

「まぁ、首元が寒いな。誰かさんがマフラーを買わせてくれなかったから」

「ふふ、それも今日までですから、もう少し我慢してくださいな」

「それはどう言う意味?」

「まだ秘密です!」


 天谷さんは少し前屈みになって、人差し指を口にあてて微笑んだ。


「それじゃあ、行きましょうか」

「うん。夕飯の買い出しだっけ?」

「そうです。唯川君は何が食べたいですか?」

「う〜ん。向こうについてから決めてもいい?」

「もちろんですよ」


 2人で並んでスーパーに向かって歩き出した。

 スーパーはわりと近くにあり、すぐに到着した。

 

「おー。温かい」

「ですね」


 そう言って、天谷さんは手袋を外した。

 俺も手袋を外して、コートのポケットにしまった。

 買い物かごを持ち、野菜売り場の方から回っていく。


「それで、何にしましょうか?」

「天谷さんは何でも作れるの?」

「1回作ったことある料理なら、基本的に作れますね」

「凄いな」

「そうですか?私なんてまだまだですよ。お姉ちゃんの方が料理は上手でしたから」

「へぇー。そうなんだ」


 そういえば、一緒に作ってたって言ってたな。


「本当に仲良いいな」

「仲良いですよ〜。また、一緒に料理したいな〜」

「できるといいな」

「はい!で、何食べたいか決まりましたか?」

「やっぱり、クリスマスっぽいのがいいよな」


 と言ったものの、クリスマスっぽい料理ってなんだ?

 実家でよく出てたのは、オムライスとかフライドチキンとかコーンポタージュとかだけど・・・・・・。


「天谷さんの家ではクリスマスにどんなもの食べてた?」

「私の家ですか。参考にならないと思いますけど、いいですか?」


 そう言って、天谷さんがあげた料理たちは、ほとんど俺の知らないものだった。

 それを天谷さんに伝えると、苦笑いを浮かべていた。


「だから、言ったじゃないですか。唯川君のお家ではどんなものが出てたんですか?」

「オムライスとかかな」

「オムライス、いいですね!それにしましょう!」


 天谷さんは、決まりです、と微笑むとオムライスの材料をどんどんと買い物かごに入れていった。


「あとは、ケーキはあのお店で買うとして、他に何か欲しいものありますか?」

「うーん。お菓子とか?」

「それは、買っておきましょう!後、飲み物もいりますね」


 お菓子のコーナーと飲料水のコーナーに行って、それぞれ好きなものを買い物かごに入れていった。

 パンパンになった買い物かごをレジに持っていき、お会計を済ませてスーパーを後にする。


「たくさん買ってしまいましたね」

「だな」

「さて、後はケーキを取りに行って、家に帰りましょう」

「もしかして、予約してくれたの?」

「はい。勝手にしちゃってごめんなさい」

「いやいや、むしろありがとう、だよ」


 あの高級ケーキ屋で、天谷さんが事前に予約してくれていたケーキを受け取った。

 中身は食べる時のお楽しみということらしい。

 買い物を終えた俺たちは天谷さんの家に向かった。

 天谷さんの家に近づくにつれ、俺の心臓はドキドキと大きな音を鳴らしていった。


☆☆☆

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