第27話 ④癒しの天使は雷が怖くてお困りです
ご飯を食べ終えると、クリスマスプレゼント交換会が始まった。
「それじゃあ、毎年恒例のクリスマスプレゼント交換会を開始します〜!参加される方はプレゼントを持ってこちらにお集まりくださいね〜!」
凛さんがそう言うと、バラバラと人が集まっていった。
凛さんを中心に輪が出来上がっていた。
「私たちも行きましょうか」
「え、俺、何も持ってきてないよ?」
プレゼント交換会なんてものがあるなんて知らなかった俺は何も用意していなかった。
「大丈夫です。私が用意しておきました」
「え、そうなんだ。ありがとう」
「どうぞ」
用意周到な天谷さんからプレゼントを受け取って、俺たちも輪の中に参加した。
「これで、全員ね!じゃあ、プレゼント交換会を開始するわよ〜!」
凛さんの掛け声で、博さんが音楽をかけ、プレゼント交換会が始まった。
軽快なクリスマスらしい音楽が店内に流れ、俺たちはプレゼントを右隣へと渡していった。
やがて音楽が止まり、俺の手には水色のラッピング用紙に包まれた小さな箱が収まった。
「あ、それは凛さんが用意したプレゼントですよ!」
反対側にいた天谷さんが駆け寄ってきてそう言った。
「いいな〜。羨ましいです」
「そうなの?」
「はい。毎年凛さんのプレゼントを狙ってるんですがなかなか巡り会えません」
「そっか。じゃあ、天谷さんのと交換する?」
「いえ、こういうのは自分で手に入れてこそですから。また来年リベンジします!」
天谷さんは悔しそうに微笑んだ。
来年はこのプレゼントが天谷さんの元に行けばいいなと、俺は心の中でそっと願っておいた。
プレゼント交換会で得た、プレゼントを持って、天谷さんと一緒にカウンター席に戻った。
「このイベントが終わったら、今年も、もうすぐ終わるって感じになります」
「今年もあと少しだもんな」
「ですね。とはいえ、私たちには、まだ明日がありますけどね」
そう言って天谷さんは楽しそうにクスクスと笑った。
俺は明日のことを考えると緊張で胃が痛くなりそうだった。
明日は学校が終わったら天谷さんの家でクリスマスパーティをすることになっていた。
もちろん、2人で・・・・・・。
「明日は16時に駅で待ち合わせで大丈夫ですよね?」
「うん」
「明日雪降りますかね?」
「どうだろうな。予報では50%になってたけど・・・・・・」
「できれば、降ってほしいですね」
「そうだな」
去年は数十年ぶりに1度の大雪で、今頃にはすっかりとあたり一面が銀世界になったのを覚えている。
しかし、今年はまだ雪は1度も降っていない。明日、ようやく降るか降らないかといった天気だった。
「天谷さんは、雪は好き?」
「もちろんです!ですが、雪起こしの時になる雷は嫌いです。というより雷が嫌いです」
「雷、嫌いなんだ。可愛いな」
「だって〜。怖くないですか雷?梅雨の時期にも凄い雷が鳴った日があったじゃないですか、もう心細くて、私、その日はずっと布団にくるまってました」
その姿を想像すると、やっぱり可愛かった。
確か梅雨の時期の雷は凄かったな。そして、その後の雨も凄かった。
「唯川君は雷平気なので?」
「俺は全然大丈夫かな」
「そうなんですね。なら、明日もし鳴ったら頼りにしてますね」
「わ、分かった」
明日、雷が鳴るフラグにしか聞こえなんだが、大丈夫なんだろうか。
その後は、常連さんや鈴村夫妻と楽しくおしゃべりをして、クリスマスパーティーが終わるまで、『鈴のカフェ』にいた。
☆☆☆
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