第24話 ①癒しの天使は雷が怖くてお困りです

「テストお疲れ様でした」

「お疲れ様〜」


 テストは無事に終わった。

 休日に俺は天谷さんと一緒に、パンケーキを食べに来ていた。

 

「何とか無事に乗り切れたと思う。ありがとう。天谷さんのおかげだ」

「ふふ、どういたしまして」

 

 天谷さんはパンケーキを口に運んで微笑んだ。

 俺もパンケーキを食べた。

 ふわっふわのパンケーキ。口に入れた瞬間に溶けてなくなった。

 

「うまっ!」

「本当に美味しいですね」

「よくこんなお店知ってたな」

「甘いものと可愛いものには目がないですからね!」

「俺も甘いものには目がないけど、このお店は知らなかったな〜」

「ふふ、私の勝ちですね」


 天谷さんは誇らしげに笑った。


「なら、今度は俺のオススメのお店に連れていくよ。きっと、天谷さんは行ったことないはず」

「それはどうですかね?ですが、楽しみにしていますね」

「うん。楽しみにしてて」

 

 パンケーキを完食して、お店を後にした俺たちはブラブラと街を歩いて帰ることにした。

 街中はすかりとクリスマスムードになっていた。


「もう、こんな時期か」

「ですね。なんだか、早いですね」

「だな〜。天谷さんの彼氏のフリをし始めてから2ヶ月くらい経つのか〜」


 自分で言って、なんだか不思議な感じだった。

 2ヶ月前までは、天谷さんはお店の中でのみ話す関係だった。だが、今はこうして一緒にスイーツを食べに行く仲になっている。

 まぁ、彼氏のフリなんだけどな。あくまで、フリだ。本当に付き合っているわけではない。

 ストーカーに困っていた天谷さんを助けるために、彼氏のフリをすることになった。

 今ではすっかりと、ストーカーのスの字も見当たらない。本当はもう彼氏のフリなんてする必要はないんだろうけど、なんだか、自分から、「この関係もう必要なくない?」と言い出すのはもったいと思っていた。

 もう少しだけ、天谷さんが、そう言うまではこの関係を続けたいと思っている自分がいる。


「本当にありがとうございます。唯川君のおかげで、あれからなんともありません」

「そっか。それはよかった」

「唯川君にお願いしてよかったです」

「俺はほとんど何もしてないけどな」

「いえ、そんなことはありません。唯川君にはたくさん助けてもらってます」

「助けてないって。むしろ、こっちがいつも助けてもらってるよ」


 天谷さんをそばで見れるだけで、心が癒されてる。

 天谷さんと話すと、楽しくなる。

 天谷さんのココアを飲むと、心が温かくなる。

 本当に天谷さんにはいろいろと助けてもらっている。


「私の方が絶対に助けてもらってます!」

「いや、俺の方だね」

「むぅ〜。私の方です!」

 

 そう言って、天谷さんは頬を膨らませた。

 俺が何を助けたのか言ってほしいくらい、自分では思い当たる節はなかった。

 そんな言い合いをしていたら、天谷さんが不意に笑った。

 

「あはは、お互い譲りませんね」

「そうだな」

「それだけ、お互いが相手のことを思い合ってるってことですかね?」

「そう、かもな。俺の方がその気持ちは負けないと思うけどな」

「まだ言いますか?私の方が負けないと思いますよ?」


 天谷さんはそう言って小悪魔的笑みを浮かべると、何かを思いついたように手を叩いた。


「あの、もうすぐクリスマスじゃないですか。なので、そこでどっちが相手のことを思いやってるか確かめませんか?」

「プレゼント交換的な感じ?」

「ですです」

「分かった。やろう」

「決まりですね!」


 プレゼント交換か。

 何あげようかな。

 何あげたら天谷さんは喜んでくれるだろうか。

 それを考えただけで、クリスマス当日が待ち遠しくなった。


☆☆☆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る