第25話 ②癒しの天使は雷が怖くてお困りです

 クリスマス当日1週間前。

 俺は、天谷さんにあげるクリスマスプレゼントに頭を悩ませていた。


「なぁ、こんなこと聞く間柄じゃないのは、分かってるんだが、鳴瀧ならクリスマスどんなものをプレゼントする?」

「どうした、急に」


 鳴瀧は目を丸くして驚いていた。

 無理もない。俺が鳴瀧に相談するなんて初めてのことなのだから。


「ちょっとな。いろいろあるんだよ」

「その相手は女性か?」

「・・・・・・まぁな」

「やっぱり、彼女いるんじゃねぇか」

「そんなんじゃねぇよ」


 俺は否定したが、鳴瀧は何度も、そうかそうか、頷いてにんまりと笑っていた。

 

「通りで、いろんな生徒からの告白を断るわけだ」

「いや、勝手に決めつけないでくれるか?」

「まぁ、いいじゃねぇか。で、その女性にあげるクリスマスプレゼントで悩んでんのか?」

「・・・・・・あぁ」

「なるほど。つってもな〜。俺も彼女なんていたことないから、何あげればなんて分かんないぞ。まぁ、無難に消耗品とか?」

「消耗品か」


 天谷さんの家にはたくさんあるだろうな。

 こうなったら、頼りになるのはあの人か・・・・・・。

 

「ありがとう。参考にするよ」

「悪いな。あんまり、いい答え言えなくて」

「いや、いいよ。俺もこの前、役に立たなかったし。ところで、どうなったんだ?告白はの件は?」

「断ったよ。相手の子には申し訳なかったが、泣かせてしまった」

「・・・・・・そっか」

「まぁ、唯川が気にすることねぇよ」

 

 鳴瀧は苦笑いを浮かべた。

 そこで、昼休憩の終わりを知らせるチャイムが鳴り、鳴瀧は自分の席に戻って行った。


☆☆☆


 放課後。 

 美術準備室に向かった。

  

「こんにちは」

「いらっしゃい」


 部屋に入るとすでに天谷先生は待っていた。


「珍しいわね。唯川君の方から私を呼び出すなんて」

「すみません。突然、呼び出してしまって」

「大丈夫よ。それで、どうしたの?」

「実はですね・・・・・・」


 俺は天谷先生に、天谷さんにどんなクリスマスプレゼントをあげればいいかという相談をした。


「なるほどね〜。紫穂ちゃんにあげるクリスマスプレゼント〜。そうね〜」


 天谷先生は顎に人差し指を当てて考えるフリをした。


「唯川君があげる物ならなんでも喜ぶと思うけど、可愛いネックレスとかどう?あの子そういうのつけないし」

「つけないのにあげるんですか?」

「そこは、ほら。これまでは、あげる人がいなかったからね。でも、今年は違うでしょ?」


 天谷先生は悪戯っぽくウインクをした。

 ネックレスね。

 次の休みにでもショッピングモールに行って見てみるか。


「ありがとうございました。参考にしてみます」

「紫穂ちゃんのことを大事に思ってくれるのはいいけど、あんまり気負わないことね。唯川君が本当にあげたい物をあげなさい。あなたが真剣に悩んで買った物に文句を言うような子じゃないから。紫穂ちゃんは」


 天谷先生にそう言われ、肩をポンっと叩かれると、なんだか肩が少し軽くなった気がした。

 俺は天谷先生に頭を下げると、美術準備室を後にした。


☆☆☆

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