第23話 ⑤ 私の彼氏(フリ) は勉強が出来なくてお困りです

 テスト当日。

 

「今日、テストだ〜」


 隣を歩いている唯川君が心配そうな声でそう言った。


「大丈夫ですよ。私とみっちり勉強したんですから」


 唯川君も今日がテストらしく、元気があまりなかった。


「うん。まぁ、頑張ってみるよ」

「はい。応援してます」


 何か元気付けてあげれることでも言えればいいんだけど・・・・・。

 唯川君はどんなことをしてくれたら、喜んでくれるのだろう。

 

「そうだ!唯川君。テストが終わったら甘いもの食べに行きませんか?」

「それは、行きたい!」

「じゃあ、決まりですね。なので、テスト頑張ってくださいね?」

「頑張ります!紫穂先生!」

「ふふ。頑張ってください」


 よかった。元気になってくれたみたい。

 その後はいつもの調子の唯川君と一緒に学校に向かった。


「では、私はここで」

「うん。また、後で」


 唯川君と校門で別れ、私は教室に向かう。

 廊下を歩いていると夢来ちゃんに声をかけられた。


「紫穂ちゃん。おはよう」

「おはようございます。夢来ちゃん。今日はテストですね」

「そうだね。勉強した?」

「もちろんです」

「自信ありって感じだね」

「まぁ、毎日やってるので、それなりに?」


 夢来ちゃんは可笑しそうに笑った。

 

「じゃあ、今回も勝負だね?」

「今回は負けませんよ?」

「勝つのは私」

「いえ、私です」


 夢来ちゃんは親友であると共にライバルでもあるのです。

 中学生の時からテストの点数をよく競い合っていました。

 今のところ、勝敗は五分五分といったところでしょうか。前回のテストでは負けてしまったので、今回は勝ちたいものです。

 

「では、お互い頑張りましょう」

「うん。またね」


 夢来ちゃんとエールを送りあって、私は自分の教室に向かった。

 クラスメイトたちは皆、テスト勉強に勤しんでいた。1人、黙々と問題集に向かっている生徒いれば、友達と問題を出し合っている生徒もいる。

 私は自分の席に座り、問題集をカバンから取り出した。

 唯川君に勉強を教えていたからって、自分の勉強を疎かにしていたわけじゃない。

 チャイムが鳴り、先生が入ってきてテストが始まった。


☆☆☆


 私の学校は2日にかけて、テストは行われる。

 なので、基本的にテストの日は午前中で終わりとなる。

 1日目のテストを終えて、向かう先はもちろん、あの場所だった。

 バイトとしてではなく、お客として。

 

「いらっしゃい」


 凛さんが笑顔で迎えてくれた。

 相変わらず、可愛らしい笑顔だな。


「凛さん。こんにちは」

「今日は早いね〜」

「テストだったので」

「あら、お疲れ様。いつものでいいかしら?」

「はい。ありがとうございます」


 私は空いていたカウンター席に座った。

 お昼時ということもあって、お客様がたくさんいた。

 唯川君は1日中テストらしい。

 なので、ここに来るのは夕方くらいになるだろう。

 カウンターには博さんが立って、洗い終わったコーヒーカップを拭いていた。

 その博さんと目が合った。博さんは凛さんと同じように笑った。

 何十年一緒にいたら、夫婦でそっくりの笑顔で笑えるようになるのだろうか。

 そう思ったところで、ふと唯川君の顔が頭に浮かんだ。

 いやいや、何考えてるの私・・・・・・。

 

「お待たせ〜。博さん、ホットココアよろしくね!」

「分かりました。天谷さん。少々お待ちを」

「はい」


 いつものと言ったら、フレンチトーストとココアを出してくれる。

 この組み合わせは私が中学時代からいつも食べているものだ。

 ココアのいい香りが漂ってきた。


「お待たせいたしました。ホットココアです」

「ありがとうございます」

「ごゆっくりどうぞ」


 目の前に置かれた、フレンチトーストを手に持って一口食べた。

 数年前から全く変わらない優しい味。

 この味は心を温めてくれる。

 次に、ホットココアをふうふうして飲む。


「やっぱり美味しいな〜」


 博さんのココアが世界一美味しい。

 このココアも中学生の時から、ずっと変わらず同じ味だ。

 冷えた体に染み渡る。

 フレンチトーストとココアを堪能して、心も体もポカポカになった。

 

「さて、勉強しよ」


 私はカバンから勉強道具を取り出して、唯川君が来るまで勉強をして待つことにした。


☆☆☆


私の彼氏(フリ) は勉強が出来なくてお困りです編

終了〜!

次回もお楽しみに〜✨


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