第21話 ③私の彼氏(フリ) は勉強が出来なくてお困りです

 そしてやってきた週末。

 私は唯川君が来るのを駅で待っていた。


「お待たせ。天谷さん」

「おはようございます。唯川君」

「待った?」

「いえ、今来たところです」


 本当は十分前には来てましたけど、それは唯川君には内緒です。


「それじゃあ、行きましょうか」

「うん」


 私たちは電車に乗って、隣町にあるショッピングモール向かう。


「休日の電車は多いですね」

「だな、大丈夫?狭くない?」

「はい。大丈夫です」


 休日の電車は人で溢れかえっており、私は唯川君の胸の中にすっぽりと収まる形で電車の扉にもたれかかっていた。

 心臓の音が大きい。

 唯川君に聞こえないといいんだけど・・・・・・。

 電車が大きく揺れて、私は体勢を崩した。そんな私を唯川君がしっかりと支えてくれた。


「大丈夫か?」

「はい。ありがとうございます。助かりました」


 顔を上げると唯川君の顔がすぐ近くに・・・・・・。

 唯川君って睫毛長いな〜。それに、肌も綺麗。そういえば、こんな間近で唯川君の顔見るの初めてかも・・・・・・ドキドキしちゃう・・・・・・。

 私は恥ずかしくて顔を逸らした。

 と、そこで、電車のアナウンスが鳴った。

 もうすぐ、目的の駅に到着するらしい。


「もうすぐ到着だな」

「で、ですね」


 電車が到着した。 

 この駅で降りる人が多いらしく、私は人の波に流されないように、唯川君の服の裾を掴んだ。

 唯川君は何も言わなかった。その心遣いが嬉しかった。

 そのまま駅の出口に向かった。


「俺この辺分からないから、案内よろしくな」

「分かりました。私に任せてください」


 駅からショッピングモールまではそんなに離れてない。

 私は何度か行ったことあるから迷わずに行ける。

 ショッピングモールに到着して、2階に上がるためにエスカレーターに乗った。


「へぇー。結構大きなショッピングモールだな」

「ですね。この辺で1番大きいんじゃないですか?」

「かもな。お、本屋さんまであるじゃん」

「ですです。いろんなお店が入ってるんですよ」

「何時間でもいれそう」

「でも、今日の目的は防寒具ですからね?」

「分かってるよ」


 そう言って、唯川君は笑った。

 楽しそうでよかった。

 唯川君とこうして、どこかにお出かけって初めてだから、少し心配だってけど、杞憂だったみたい。

 2階に到着して手袋の置いてあるコーナーに向かった。


「どんなのがいいですか?」

「うーん。自分では決められないから、天谷さんが決めてくれない?」

「私が決めていいんですか?」

「うん。その方が俺も嬉しいし」

「分かりました。じゃあ、これとかどうですか?」


 そう言って、私はシンプルな黒色の毛皮の手袋を唯川君に渡した。

 唯川君はその手袋をつけた。


「おー。温かいな」

「でしょう。それにしますか?」

「うん。これにするよ!」


 唯川君はよほど気に入ったのか、その手袋をレジに行くまでずっとつけていた。


「ついでにマフラーも買ってもいいかもな」

「あの、マフラーは買わなくてもいいかもです」

「え、なんて?」

「なんでもですっ!とにかく、マフラーは買わないでください!」


 自分勝手なことを言ってるのは分かってるけど、クリスマスプレゼントに手編みのマフラーをプレゼントしようと思ってるから、買われると困るのです。

 

「わ、分かった。じゃあ、マフラーは買わない」

「はい。なんか、すみません」

「いや、いいよ」

「ありがとうございます」

「じゃあ、これからどうしようっか?」

「せっかくですし、ご飯でも食べて帰りませんか?」

「そうだな。じゃあさ、それまで本屋に行ってもいいか!?」

「ええ、もちろん」


 本が好きなのだろう。 

 私が頷くと、唯川君は嬉しそうに本屋に向かっていった。


☆☆☆

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