第18話 癒しの天使様は仕送りが多くてお困りです⑩

 それから、1週間が経った。

 その間に『鈴のカフェ』に何度かダンボール箱を運んで行った。

 天谷さんの仕送りはお客さんに人気らしく、部屋に山積みになっていたダンボールはあっという間になくなっていった。

 

「それにしても、綺麗になってよかったなー」

「ですね。唯川君のおかげです」

「いやいや、博さんたちのおかげだって」

「そうですね。また、恩返しすることが1つ増えてしまいしました」

「前から気になってたんだけど、その恩返しってなんなの?」


 俺はいちごのショートケーキを口に運んで聞いた。

 今日は、天谷さんと約束をしていたケーキバイキングにやってきていた。

 俺のお皿にはいちごのショートケーキ以外にも2つのケーキが乗っている。

 天谷さんのお皿にも3つのケーキが乗っていた。


「まぁ、いろいろと助けられたんです」

「そっか」


 天谷さんはモンブランを口に運んだ。

 なんだか、言いたくなさそうだったので、それ以上は聞かなかった。


「ところで、あの後、天谷先生とはどんな感じ?」

「う〜ん。再会したことを若干後悔しています」


 そう言って天谷さんは苦笑いを浮かべた。


「どうした?」

「あの日以来、お姉ちゃん、毎日連絡してくるんですぅ」

「なんだか、想像つくな」


 俺も苦笑いを浮かべた。

 天谷先生の天谷さんへの愛は尋常じゃない。

 俺に天谷さんの近状報告を1週間に1回させるくらいに。そういえば、今週はなかったな。

 天谷さんの様子を見るに、本人から直接聞いているのかもな。俺は用済みというわけだ。


「話せるようになって嬉しいんですけどね、たまに鬱陶しいって思う時があります」

「天谷さんは優しいからなー」

「そんなこと、ないですよ?」

「いや、優しいよ。俺なら、両親にあそこまでされたら、愛想尽かしてると思う」

「私が優しいのは特定の人にだけですので」

「へぇー。その中に俺は?」


 俺は興味本位で聞いてみた。

 すると、天谷さんは頬を赤くして小声で言った。


「もちろん、入ってるに決まってるじゃないですか」

「そっか。ありがとう」


 なんだか、天谷さんの照れ臭くて顔が見れなかった。

 今日の天谷さんは、この前のかっこいい雰囲気の服装とはガラッと変わり、肩空きの黒色のニットに花柄のスカートと可愛らしい服装だった。

 

「それにしても、ここなケーキは美味しいな」

「ですね。何個でもいけそうです」

「一緒に来てくれてありがとうな」

「いいえ、こんなんじゃ返せないくらい、唯川君には助けてもらってますから」

「俺、そんな大層なことしてないけどな」

「してますよ」


 天谷さんは優しく微笑んで、そう言った。

 俺が天谷さんから貰ってるものは大きいけど、俺が天谷さんにあげれてるものは、ほんのわずかなものしかないと思う。

 だから、これからも天谷さんが困っていたら、手を差し伸べよう。それが、自然にできる関係で居続けよう。

 そう思いながら、いちごのショートケーキを口に運んだ。


☆☆☆

仕送り編終了!

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