第36話 と言…ヤバイどうしよう…。
俺の名は葛城千智。
どこにでもいる様なパッとしない22歳の社会人だ。ある日、俺は楽しみにしていたトレカを買いに行こうと町に繰り出した時、道端に札束が落ちているのを見掛けた。
別に欲しかったとか、そんなんじゃないけど気になったから手を伸ばしてみた。すると突然後ろから誰かに押された様な感覚がした。それと同時に道路を走っていたトラックに轢かれて…
ソニーラ「っしゃ!上がり!!」
ソニーラが最後のトランプを机に置き、勝利の声を上げる。
ちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇいッ!!
今小説のあらすじを一通り語ろうとした所だろ!?それを…妨害するかの様に上がりやがって…!!
これで何敗目だ…(涙)
そりゃステータス使えば何とでもなるけど、そんなんじゃ面白くないじゃん。
だからズルせずにやってるけど、めちゃくちゃ負ける…。
悔しさ故に涙を流す俺にソニーラが笑いながら挑発をしてくる。
ちくしょう…!!
嘗めやがって…!!
人があらすじを読んでいる最中に…油断の隙を衝きやがって…!!
次は絶対に負けんぞッ!!
再びトランプを手に取りソニーラともう何度目になるか解らない真剣勝負を開始した。
千智「今度こそは絶対に譲らねぇ…!!」
って事で、本編スタート!!
……………………………………………………………
千智「はぁ…はぁ…はぁ…!!」
美奈咲「ほぉ~れ千智~♥️」
今、俺は目の前でたわわな胸を押し付け妖笑を浮かべながら体に触れる美奈咲に、なす術も無く無抵抗に叫ぶ事しか出来ずにいる。
こんな時、ステータスが使えれば良いのだが、この状況の中でそんな事やっている暇がない。そもそも今の美奈咲には《幻の力》が作用して俺のステータスはほとんど通用しない。
クソ…!!
どう打開する…千智…!!
事の発端に戻ろう。
今日、俺は警備員が門番をしてくれていると言う事もあり、気持ちを安心させて玉座に座っていた。
清々しい風がそよそよと吹き、暖かい陽射しが俺を包んでくれる。
…何となく、眠たくなってきたなぁ。
そんな事を考えていたら、知らない内に寝てしまった。
…ん?ここ…どこ?
目を覚ますと真っ暗な空間に用意された椅子に座っていた。
どこかで見た事ある展開だ…。
……………死神の間…!!
即座に身構えた。
途轍もなく嫌な予感と悪感に襲われ全身から汗が噴き出した。
直後、前方から何かが近付いてくる足音が聞こえる。
落ち着け…今の俺にはチート能力があるじゃないか…!!
椅子から立ち上がり、戦闘ポーズを取る俺の前に現れたのは…
…サキュバス…?
綺麗なピンク色のロン毛からちょこっと角が生えており、赤く誘惑するような瞳、透き通る様な白い肌は、まるで世の中の全ての男を虜にする程美しい。身に付けている衣類はとても少なく見せちゃいけない部分だけを隠している。腕には淫乱ピンクのアームカバー、足には網タイツの様な履き物を履いていて、尻尾の先はハート型でうねうねとイヤらしく動いていた。
ステータスは…え?覗けない?
あ…これ夢?
だから覗けないのか!!
なるほど~(笑)
自問自答で納得した俺に、サキュバスは妖笑を浮かべ人差し指を軽く舐めながら語り掛けてきた。
サキュバス「さぁ…お姉さんが良いものをプレゼントしてあげる…。」
そう言いながら自らの体を撫でる様に触り、俺に顔を近付ける。
ままままま待って!!
まだ心の準備が!!/////
そう言っている俺を他所にサキュバスは少し厚めのキスをしてきた。
…あぁ、俺…夢の中で良い思いしてきます…!!
しかし、俺がサキュバスとの触れ合いに身を構えた瞬間、サキュバスが顔を離しながら「フフ…。」と言い薄れる様に消えていった。そして俺は目を覚ます。そこはいつも俺が座っている玉座から見える何の変哲もない景色だった。
…クソ…。
もう少しで良い思いが出来る所だったのに…。
でもキスは出来た。それだけでも良いか。それに、何となく体が軽くなっている気がするぜ!!
よぉし!!町に繰り出すとするか!!
町に行くと、丁度狩りから帰ってきたのか食料調達係が戻ってきた。その中にいたセシルとソニーラに「お~い!!」話を掛けに行く。セシルは相変わらずの様子で崩れ落ち、ソニーラは元気そうな笑顔で返事をしてくれた。
二人に狩りの釣果を聞いている時、何故か二人の話が頭に入ってこなかった。
何と言うか…ぼぉ~っとしてしまう感じと言うか…。
そしてそれとなく…ムラムラする。
俺も男だし性に快感を覚える生き物だ。けどこんなに体が熱くなる程って訳でもない…。
何かあると嫌だから今日は黙って帰るか…。
二人に「じゃあな!」と告げると休息の為に城への帰路につく。その道中、別方向から来たミーニャに不意を突かれ抱きつかれた。
ミーニャ「千智捕まえたぁ~!!」
いつもの如く可愛くて無邪気な彼女だが、今はそんな事を考えている場合ではない。
笑顔で俺を見上げて構ってちゃんするミーニャを見ると思わず生唾をゴクリと飲み込んでしまう。
いや、待て待て。
ダメだ。こんな無垢で清んだ心を持っている女の子を汚すのは絶対にあってはならん。
ミーニャの肩を軽く掴むと優しく離し、少し具合が悪いから休むな!と言ってミーニャを後にした。
いつもの俺なら何ら変哲もない城への道なのだが今日は違った。頭がぼぉ~っとし、体が火照って女を見ると理性を失いそうになる。その感情を抑えながら何とか城に辿り着く。運が良い事にリーナさんの姿が外には無かった。
鉢合わせにならぬように《潜伏》を使いながら部屋に戻る。
ってか、城に帰る途中も《潜伏》使えば良かったやん。今気付いたわ。
自室に戻った俺はいつも寝る時に着ている軽い服に着替える。しかし着替え終わった途端、部屋のドアが開かれ、今一番聞きたくなかった声が耳に入る。
美奈咲「なんじゃ千智。帰ってきておったのか。」
部屋の鍵を閉め忘れていた自分に憎悪の念が沸く。
美奈咲に向かって動揺が隠せない返事をしてしまう。それを不審に思った美奈咲が怪しむ顔をして俺に近付いてきた。
止めろ…来るな…近付くな…!!
そう念じるのも虚しく終わる。
美奈咲が俺の体に触れながらいつもの妖笑を浮かべ、誘惑と色気の入り混ざった声で耳元で囁く。
美奈咲「さては千智…発情しておるな…。ワシには解るぞ…ソナタから溢れ出るオスのフェロモンが…!!」
終わった。全てが終わった。
コイツにだけは会いたくなかった理由がこれだ…。
今の状態で美奈咲に会ってしまえば100%爆発する。そして今、それが現実になりつつあるのだ。
この作品の主人公になる前は、こう言うシチュエーションに憧れたが、いざ対面すると置かれた立場、役柄を考慮しなければならない。
クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!
ちくしょう…!!何もかもに腹が立ってきたぞ…!!美奈咲の圧とフェロモンで頭がどうにかなりそうだ…。
そんな俺をもろともせずに美奈咲はたわわな胸を押し付け妖笑を浮かべながら体に触れる美奈咲に、なす術も無く無抵抗に叫ぶ事しか出来ない。
こんな時、ステータスが使えれば良いのだが、この状況の中でそんな事やっている暇がない。そもそも今の美奈咲には《幻の力》が作用して俺のステータスはほとんど通用しない。
クソ…!!
どう打開する…千智…!!
潜在能力の《冷静》や《誘惑耐性》が全く作用しない…!!と言うより今の俺にはステータスが使えない…!!
美奈咲が服を脱ぎ始める。豊満で柔らかな胸がブルン!と跳ね露になった。
見る訳にはいかない…!!
見てしまえば…もう…!!
こうなりゃ一か八か…!!賭けるしかねぇッ!!
美奈咲の手が俺の服を掴み、脱がそうとした瞬間、俺はリーナさんの名前を思いっきり叫んだ。
数秒後、リーナさんが「どうしたの!?」と言いながら部屋に入ってきた。
「にゅわっ!!」と言いながら焦る美奈咲。それを見たリーナさんが、美奈咲にこれでもかと言わんばかりの殺気を飛ばす。観念した美奈咲は服を着て俺から離れた。リーナさんは心配する様に俺に触れようとした。だが触れられる直前で「触れないでください!」と声を少し荒げてしまった。
「何があったの?」と言いながら俺を見つめる。リーナさんを見る限り、どうやら《情報凝視》を使っても何も解らないようだ。困った表情で顎に手を着けるリーナさんに苦し紛れの声で話し掛けた。
千智「サカモッちゃんを…坂本さんを呼んでください…!!それと…女性を俺に近付けないでください…!!」
そう言うとリーナさんは「わかった!」と焦った様子で部屋を飛び出た。それに続きリーナさんの圧を覚えた美奈咲も続く。
今の俺に女を近付けるのはマズい…。何故こうなったかを聞きたいけど、それを《高知力》の持ち主であるセシルに聞こうと思ったが、俺がこれだからダメだった。でも確かサカモッちゃんの潜在能力に《高知力》があったはずだ。となると男であるサカモッちゃんに来てもらうしかない。
ベッドに横になっていると数分後、サカモッちゃんが部屋に入ってきた。サカモッちゃんは俺を見て「ど、どうしたのでござるか!?」と焦りを見せた。
現状を何も解っていない為ちゃんとした返事は出来なかったが、一つだけある心辺りをサカモッちゃんに話した。
千智「何でこうなったのかは正直解んない…。でも、一つだけ心辺りがあるんだ…。」
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