第27話 と言う事で、このスタイルこそが葛城千智です。

 今日も今日とて新たな一日を迎える。いつもの様に朝食を食べ、他の連中は自分の家で遣り繰りしてる為俺が片付けやら洗濯を行って、それが終われば自由な時間。


 今日は何をしようか。そう考えながら玉座に座っているとゼータが元気な笑顔で手を振りながらこちらに近付いてきた。そっか、町の構築はほとんど終わったって言ってたっけ。たまには男二人で語り合いでもするか。俺は玉座の隣にもう一つ椅子を用意して城の中からお茶を持ってきてゼータとたわいもない話をしていた。


 しかし、そんな楽しい時間も束の間。いきなり周囲の音が消え、涼しげに吹いていたそよ風がピタリと止まる。正に嵐の前の静けさと言ったものだろう。そして間も無くして俺はとてつもなくエグい何かが近付いてくるのが解った。森の中から何かが来るのが見えた。


 その正体は一人の女だった。容姿は全体的にゴツく、身長も俺より高い。キリッとした顔だちに黒の綺麗なロングヘアー、赤い瞳は炎を宿したかの様なギラツキがあり、服装はヘソの出たタンクトップ、腹部にはハッキリと割れた腹筋が見える。腕には黒いアームカバーの様な物を着けており、腕の筋肉の形までもがハッキリと浮かんでいた。ズボンはシンプルなダメージジーンズ。だが、そのジーンズのダメージは明らかに何かに攻撃された時に付いたような傷だった。


 これは俗に言う【筋肉娘】ってやつか?とりあえずステータスを覗くか。



【アドメル】Lv.259 HP185/∞ (火神族)

《火魔力:792(上限∞)》《水魔力:150(上限280)》

《風魔力:140(上限185)》《光魔力:162(上限190)》

《闇魔力320(上限500)》

   《未解放特殊潜在能力:測定不能》

《解読能力》《浮遊》《能力透視》《怪力》

《強者》《冷静》《戦略》《超見切り》

《能力強化》《覚悟上等》《起死回生》

《漢気》《友好》《護衛》《ヒーリング》

《ダメージ軽減》《錬成》《立体化》

《調整》《判断力》《実現化》


 ………え?何これ?ふざけてんの?一瞬にして俺の思考がバグった。火魔力が792?あ…アハハハハ…。あれだな。たぶん疲れてるから能力透視がイカれてんだな!それしか考えられん!等と考えてたら、隣でゼータが冷や汗を流しながら少し震えた様子で身構え口を開いた。



ゼータ「アドメル…!!」



 ま、まぁ、一応確認しておくか。俺はゼータにアドメルの能力を伝え、本物のステータスかどうかを聞くと、ゼータは静かに頷き生唾をゴクリと飲み込んだ。


 ほ…ほほほほぇ~…。なるほど…。


 完全に脳内がイカれた。


 アドメルは口元を吊り上げ不適な笑みでゼータに話し掛ける。



アドメル「へッ!!帰って来ねぇから全員死んだと思いきや、魔王なんかに寝返ってたなんてな!!ま、今のソイツの能力を見る限り、言いくるめられたか力で伏せられたんだろうな…情けねぇぜッ!!」



 ゼータは依然として少し怖じ気付いた様子で反論をする。



ゼータ「ち、違う!!皆あの女に騙されてるんだ!!ここにいる魔王は魔王じゃない!!あの女の標的にされた異国の民なんだよ!!」



 必死の叫びの如く声を荒げる。しかし、その叫びはアドメルに通用することはなく、表情を変えずに笑い続ける。それを見たゼータはこの世の終わりを迎えた戦士の様な有り様だった。 


 俺はゼータの前に出てアドメルと睨み合う。ゼータは「止めておけ」と言わんばかりに俺の肩を掴む。


 いいかゼータよ。男ってもんはな、やらなきゃいけねぇ時っつうもんがあるんだよ…!!今コイツと戦うのを諦めれば、どう取っても結末は変わらない。全員がミリリアの支配下になってしまう。結局そうなるのであれば、少しの可能性にでも掛けるのが俺の流儀だ。それに…俺はその可能性に自信がある…!!あと、チートキャラってのはクソ強い奴にも割と呆気なく勝つもんなんだぜ…!!つってもまぁ、一か八かの大博打に過ぎねぇけどな…!!


 肩に乗っているゼータの手を優しく払い除けると、俺はアドメルとの距離を縮める。アドメルは更に口元を吊り上げ笑いながら俺に挑発の言葉を放つ。



アドメル「ケッ!!そんなクソザコステータスで、この俺に勝てると思ってんのか?一瞬にして消し炭にしてやんよ!!まぁ安心しろって…他の連中はちょいと痛め付けてミリリア様の所へ連れてってやっからよ…!!」


 

 返事もせずに黙ったまま意識を集中させる。そんな俺を見たゼータは更に必死になり止めようとする。だが、ここまで来りゃあ、もう後戻りはしねぇよな…!!ニヤリと笑みを浮かべ、俺自身に覚悟を決めさせる。


 アドメルが技のモーションに入ったと同時に、潜在能力の《超見切り》を最高潮にもたらす。


 さぁ…来いよ…!!人生を賭けた俺の技を見せてやるッ!!



アドメル「デアァァァァァァァッ!!!」



 周囲を覆い尽くす様な熱気だ。ちょっと焦っちまったぜ…!!けど、先手必勝…!!俺から仕掛けさせて貰おうかッ!!


 アドメルに意識を集中させ、右手を突き出し左手で右手の手首を抑え技を放つ。



千智「記憶…抹ッッッッ消ッ!!」



 俺の手から放たれた白銀の光はアドメルを包み込み、やがて先程と変わらぬ平和な空気、音を取り戻す。


 アドメルはキョトンとした顔で「あれ?」等と口にしている。それを見たゼータが動揺を隠せずにいた。俺の側に来たゼータは俺に「何があったんだ?」と半ば間抜け面で聞いてくる。それに対して俺は「記憶を消した」と笑いながら言った。


 つまり俺の賭け、それは奴の潜在能力には存在しなかった《記憶抹消》を使ってミリリアに出会うまでの記憶そのものを消し飛ばしたのだ。《能力透視》で潜在能力を確認されたけど、自分の魔力の方が上って事を確信した時点でコイツは高飛車になっていた。そこの隙を突いて記憶を消させてもらった。


 アドメルに近付く。しかしアドメルは余裕の表情で俺を見て「あ?何だよ?」と藪から棒に口にする。ステータスを覗かれただろうが関係ない。俺はゼータに《アイコンタクト》で合図を送り、真剣な顔と目線でアドメルに話を始める。



千智「今、このイヴェンタはミリリアと言う一人の悪女の手によって支配下にされつつある。俺はその女からこの国を守る為に立ち上がった異国の民なんだ。だがミリリアは俺の事を魔王と称し、敵に回した。そんな中で自我を失ってここに来た君を、たった今自我を取り戻させた所なんだ。」



 アドメルは半信半疑で「はぁ?」と言う顔をしている。そしてその表情のまま「じゃあ、何でゼータがここにいんだよ?」と口にする。なるほど、ミリリアに出会うまでの記憶を消したとなるとゼータがここにいる事がまずもって不自然だもんな。俺の隣でゼータは握り拳を作り、ミリリアへの憎悪を表す顔で「俺も…いや、今はいないが、ここにいる全員…レイド、セイナ、ミーニャ…その他にも騙されてた奴等が…この千智に助けられたんだ…!!」と言った。ナイスだゼータ。今の一言で60%ぐらい信じたぞ。


 しかしアドメルも引かずに少し声を荒げながら反論する。



アドメル「で、でも、コイツのステータスは本当に魔王みたいな素質を持ってるぞ!?」



 なるほどな。このステータスを見たらそうなるわな。俺はアドメルにここまで来た経緯を全て話した。その最中、アドメルの疑いが信用に変わっていくのが解った。さてと畳み掛けるか。アドメルの手を握ってマジな目線でアドメルの目を見て「俺と一緒に…戦ってくれないか…!!」と言葉を放つ。アドメルは「わかった…!!///」と言いながら顔を赤らめた。何を仕掛けたかは言わなくてもいいだろ?そう言う事だから。手っ取り早く事を済ませるにはこれしかなかったしな。


 っしゃあ~、アホみたいに強ぇ奴仲間にできたのはデカいな。マジで。例え実戦になったとしても有利になるぜぇ~。


 そんなこんなで今日はアドメルって言う鬼強筋肉娘が仲間入りした。残りの連中にも事情を説明して何だかんだってしてたらもう日が暮れちまった。

 さてと、明日はどんなお客様が来るかな(笑)


【今日の千智のステータスチェック!!】



【葛城千智】Lv.198 HP23/∞ (異国の民)

《火魔力:450(上限∞)》《水魔力:98(上限∞)》

《風魔力:97(上限∞)》《光魔力:102(上限∞)》

《闇魔力465(上限∞)》《打撃魔力472(上限∞)》

   《未解放特殊潜在能力:不明》

《解読能力》《浮遊》《能力透視》《演技》

《侵食》《冷静》《戦略》《超見切り》

《ド根性》《覚悟上等》《ホームラン王》

《起死回生》《漢気》《友好》《護衛》

《死神の加護》《超魅力》《超誘惑》《色気》《NTR》《デンジャラスキッカー》《五感鬼神》

《無邪気》《魂の投手》《アイコンタクト》

《調整》《超記憶抹消》《心の潜入》《疑り》

《判断力》《超妄想癖》《イメージング》

《実現化》

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