第17話 と言う事で、どうにかなりました!!
来てくれたんだな!!ありがとう!!マジでありがとう!!
…で、どこまでやったっけ…。あ!そうだ!!今の俺の目の前には俺をギロリと見つめるゼータがいる。
そしてゼータの目の前にはギロリと見つめる俺がいる…!!
ここまで来れば後戻りは出来ない…!!
まぁ、元から後戻りなんかするつもりは無かったけどなッ!!
千智「ハァァァッ!!」
ゼータ「デアァァァッ!!」
同時に地を蹴り走り出す。
今の俺達はもう誰にも止められないだろう。俺もゼータも戦う事に集中してやがる。
死ぬか生きるか?そんなのはどうでもいい。今はただ…コイツと決着を付けてぇッ!!
俺はゼータにまた火球を撃ち込む。今度のはさっきよりも威力が上がってるぜ…!!覚悟しな!!
と思った矢先、ゼータも俺に光の球を撃ち込んで来やがった…!!
同時に撃ち込んだ攻球は二人の間で爆発を起こす。その煙が晴れる頃、俺とゼータはつばぜり合いをしていた。
ゼータは息を切らしながらも俺の目を見て話す。
ゼータ「やるじゃないか…!!ここまで強いとは思わなかった…!!」
それに応える様に俺もゼータの目を見て話す。
千智「そりゃどうもよ…!!俺もまさか被害者でありながらこんな思いをするとは思ってなかったぜ…!!」
いい加減このクソ安もの感が半端ないバトル展開をどうにかしたいけど、今の俺の力じゃどうしようもねぇ…!!
俺にとっても作者にとっても、そして読者にとってもマジで耐えきれない間だぜ…!!
早いとこ決着を付けてぇ…!!
そう考えていた時、ゼータの蹴りが腹に入る。
千智「グハッ!!」
待って、めちゃくちゃ痛ぇ…。久々に腹にダメージ喰らった(涙)
根性だ…!!根性だ…!!
痛みを誤魔化す様に笑う。いや、内心笑ってないけどね?
けど、これでゼータとの距離を置くことが出来た…!!
あ、そうだ。チート能力でダメージの無効って出来るかな?
無効…無効…無効…無効…!!
ゼータ「ハァァァッ!!」
またしてもゼータが光球を撃ってきた。腹のダメージからして避ける事は出来ねぇ…。好都合だ…!!無効が効くかどうか試せるからな…!!
その場で足と腰に力を入れ、腕を顔の前でクロスさせてゼータの攻撃を待ち受ける。ゼータの攻撃がクリティカルヒットした。怯えと眩しさ故に目を固く瞑ってしまう。光球が爆発し俺を爆風と熱気が包んだ。だが、俺はその場で踏ん張る事が出来た。さっきまでならこんなの喰らったら普通に死んでただろうけど、チート能力が働いてくれたのか怪我はしているものの、そんなに酷いダメージを負う事は無かった。
ゼータは俺を見て悔しげな顔をして「ちくしょう…!!」と口にしている。
いやいや、おめぇの方が圧倒的にダメージ与えてるし力だって上だ。そんなに感情的になるなよ。
…そっか、俺がタフなだけか。
対してレイドやリーナさんは「何で避けねぇんだ!!」やら「何してるの!?」と言っている。
ならば逆に聞きたいが、あんた等は腹が痛くてどうしようもない時に俊敏に動けるのか?俺は無理だ。
苦笑いしながらそんな事を考えていると、ゼータが光剣を縦に振り上げ、刃に雷?みたいな光の覇気を纏わせ、叫ぶ。
ゼータ「これで決めるッ!!光神雷激波ッ!!」
何か奥義みたいなの出てきた…!!
ゼータが光剣を振り下ろすと、先程まで纏われていた覇気が刃を離れすんげぇ勢いでこっちに飛んできた。
さすがにこれを受けるのはキ◯ガイだ。避ければ周りに被害が出るし…!!クソ!!
全力で思考を張り巡らす。その時、頭に一つの案が浮かんだ。
………打ち返そう…!!
馬鹿だと思ったか?その通り、俺は馬鹿だ。けどな…今の俺にはこうするしかねぇんだよッ!!
鎌を両手で持ち、さながら野球選手の様な構えでゼータの攻撃を迎える。
見せてやる…!!中学生の時に体育の授業で野球部のエースピッチャーからホームランを奪い取った俺の実力をッ!!……紛れだけどなッ!!
【見切り】で攻撃を良く見て《打撃魔力》を乗せれば何とかなるだろッ!!
そしてゼータの攻撃が目の前に来た。その瞬間、鎌を思いっきりフルスイングし、鎌と攻撃が当たった時に打撃の威力をありったけ乗せる。しかし攻撃の威力が強いせいで逆に圧し返されそうになってしまう。全身の筋肉をフル活用して力を込め続けていると、腕の血管が切れたのか両腕の二頭筋から前腕に掛けてじんわりと熱くなってきた。…ここで圧されて堪るか…!!根性を見せろ…!!
最後の力を振り絞り体を捻りながら腕を振る。
千智「打撃…ホォォォォォォォォムランッ!!」
俺の根性が勝った。圧し返した攻撃はゼータに真っ直ぐ飛んでいく。この事を予想もしていなかったのだろう。ゼータは驚いた表情で後退りをした。
自分の攻撃で倒れろッ!!と思った時、ゼータが光剣をその攻撃に当てる。
そしてゼータの叫び声が聞こえ攻撃が別方向に飛んだ。
えぇ…そんなのあり…?
自分でも訳が解らない展開に疑問を抱いていると、俺の耳をある声が支配した。
ミーニャ・セイナ「きゃぁぁぁぁぁッ!!」
なんと攻撃が飛んだ先にはミーニャとセイナが居たのだ。突然の出来事に対処しきれずその場で叫んでいた。ゼータは二人の名を叫ぶがどうして良いか解らないのだろう。悔しげな顔で冷や汗を垂らしている。
…それが仲間を持つ野郎のやり方かよ…!!
気付けば俺は痛みで動く事もままならない体を無理矢理動かし、少しでも軽くする為に鎌を地面に投げ捨て二人の方へ向かって走り、二人の前に飛び込んだ。
ゼータは変わらぬ表情で俺を見る。ミーニャ、セイナは目を瞑りその場にしゃがみ込む。低い体制を取り二人を突き飛ばす。二人のいた位置で俺は攻撃を喰らう瞬間、最後の足掻きと言わんばかりに頭の中で【無効】を連想させる。そして攻撃が俺を襲った。
さっきまでとは打って変わった威力を喰らい、凄まじい爆発が起こる。同時にレイド、リーナさんが俺の名を呼ぶ声が聞こえる。
爆発による煙が晴れた。俺は地面に倒れ、服はズタボロ、体は傷まみれ、意識も朦朧として死に掛けていた。だが、幸いさっきの【無効】が作用してくれたのか少しながらも軽減されたらしく、こうして辛うじて生きていた。
とは言え、息をするのもしんどい。本当に死ぬかもしれん。軽く咳き込んだだけで多量の血が口から流れる。ここまで来ると痛みとかそんなんじゃなくて死ぬか生きるかって感じになるんだな。
こりゃ【無効】じゃなくて【軽減】だな…。
レイド、リーナさんは俺の元に駆け付ける。レイドが膝を付き俺を抱き抱えてくれ、リーナさんは介抱してくれる。
視界が霞む中俺は周囲を見ると、ゼータが俺を見て言葉を失ったかの様に立ち竦んでいる。ミーニャ、セイナの二人は立ち上がりこっちに近付こうとしていた。
ゼータが変わらぬ体制のまま口を開いた。
ゼータ「お前…何で…!!」
喋ったりなんか出来る様な状況じゃないが、体力を使い切る覚悟で血を吐きながら口を開く。
千智「ガハッ…!!…周りも…見えずに…グハッ…!!…対処仕切れない様な…奴がな…グッ…!!…いっちょ前に…リーダーやら…主人公やら…気取ってんじゃねぇ…!!ウグァッ…!!…仲間を思うなら…それ相応の覚悟で…やれよ…ッ!!」
もう喋れない。限界だ。眠たくなってきた。このまま目を瞑れば楽になれるだろうな。…もう、何も考えなくても良いんだろうな。今のHPはドクロマークの付いたマイナス5とかだろうな。そう思いながら目を瞑る。レイドとリーナさんが必死になって俺を呼ぶ。だんだんとその声も遠ざかってきた。
しかし、いきなりセイナが俺の元へ来て手を翳し始め、目を瞑りながら何かを唱えていた。
セイナ「癒しの神よ…ヒールの精霊よ…この汚れ無き栄光を救いたまえ…。」
セイナがそう言うと、次第に意識が戻ってきた。周りの音も、声も聞こえる。
…セイナが俺を助けてくれた…のか?
体が動くまで回復し、自ら起き上がりセイナに質問した。
千智「何で…?」
セイナは俺の目を見て応えてくれた。
セイナ「神が貴方を魔の存在ではないと言ってくれました。彼を救い、癒せと言ってくれました。貴方は魔王ではなかった。勘違いしていた私達を…許してはくれませんか…。」
直後、ミーニャもこちらに来て必死な顔で俺に言った。
ミーニャ「そ、その!今更こんな事…言ってもダメかも知れないけど…ご、ごめんなさい!」
俺は二人に微笑み掛けゼータを見る。するとゼータは戸惑いながらも俺を見て話す。
ゼータ「その…俺はお前の事を…魔王だと…思ってここに来た…。だが…お前は…魔王らしからぬ事をして…その…あの女に…騙されてたのかもしれない…」
何を言ったら良いのか解らないのだろう。途切れ途切れで話して自分でも収集が付かなくなっている。
…正直、最初はマジでコイツ等を嫌ってた。罪も無いのに攻撃しくさって非情にも追い詰めてきたからな。けど、今はそんな事、もうどうでもいい。俺の事を、事情を解ってくれればそれでいいんだ。
ゼータに近付くとゼータの手を取り笑って見せる。少し動揺した様子のゼータだったが構わずに微笑んで話す。
千智「もう攻撃するつもりもねぇし、どうしようとも思ってねぇよ。とりあえず、俺の誤解が解けて良かった。ありがとな!」
そう言うとゼータははにかみながら照れる様にして返事をした。
ゼータ「お、おう…その、よろしくな…!!」
一件落着だな。マジで死ぬかと思ったけど、頑張って良かった。セイナとミーニャがこっちに近付いてきて笑顔で俺に言った。
セイナ「これからは私達も味方です。」
ミーニャ「よろしくね!千智!!」
千智「あぁ!よろしくな!」
二人に向かって少し下心を持ちながらキメ顔で笑い目を見て爽やかに返事をした。
…気のせいだろうか。二人の俺を見る目が変わった様な気がする。その、何と言うか、【異性】をみる様な…いや、気のせいだろ。きっと。
俺は三人に事情、そしてここに移住する事を説明した。三人は承諾し、晴れて俺達は対ミリリアの結集を組む事が出来たのだ。
さてと、これからどうなるのかね(笑)
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