第16話 と言う事で、いい加減この安っぽいバトルどうにかします。

 前回のあらすじを説明しようと思ったけど、説明してる最中にまたゼータの攻撃を喰らう事になると思うから割愛するぜ!


 とりま反撃が出来た訳だが、肝心なのはここからだ…。俺が反撃した事によってゼータのパターンが変わるはずだ。


 恐らくだが、さっきまでは力を抜いていただろう。ここに来て日は浅いから何とも言えんが、あんだけのステータスを兼ね備えててさっきのレベルって事はまぁまず無いだろ。


 っつう事は、マジで命懸けにならねぇといけねぇな…!!


 ゼータは変わらず動揺している様に見える。しかし、俺を狙う眼光やオーラは変わり、本気でやり合う剣士の如く、鋭く威圧的なオーラを発していた。


 だがそれは俺も同じだ。ここで死んでしまえば被害が増える一方、この国は確実にミリリアの支配下になり得る。それだけは何としてでも避けねぇといけねぇ。じゃねぇと…俺がこの物語りの主人公を勤めてる意味すらも無くなる…!!


 さぁ…ゼータ…!!掛かってこいよ…!!



ゼータ「ハァァァァッ!!」



 そっちから来たか!!ならば【見切り】で動きを見るんだ…!!


 しかしゼータが俺との距離を2m程まで縮めた時、俺の目を眩い光が襲った。


 反射的に目を瞑ってしまう。だが特殊潜在能力の【冷静】が働いているのか、落ち着いた判断を取る事が出来た。


 気配を感じ取り、ゼータが至近距離まで来たのが解った。一か八かの賭けではあったが、鎌を縦に思いっきり振り下ろす。すると鎌の先に何か切り裂く様な手応えを感じた。


 やったか…!!そう思い目を開ける。鎌の先端には上着である丈の短い半袖の服の破片が刺さっていた。

 ゼータに視線を向けると、半袖の服とマントが縦に裂け、黒い肌に密着したインナーが露になる。


 …クソ…!!良い体してやがるじゃねぇか…!!決してゴツくはないがうっすらと浮かび上がる胸筋のライン、そしてその下にはハッキリと割れた6パック。これぞ正に有酸素の体。しなやかで、美しいラインの体だ…!!


 ちくしょう…!!俺も多少なりとも鍛えてたし、悪い体付きではないと思いたいが、ゼータの様に【THE・無駄が無くしなやかな体】って感じではない。


 …世間一般ではゼータの方が理想の主人公なんだろうか…(涙)


 おっと、そんな事を考えてる場合じゃない。


 対するゼータはまたしても後退りをして動揺している。無理もないだろ。あと数センチ前に出てりゃ、体が真っ二つになっていたのだから。

 


ゼータ「チッ!!やはり魔王…!!力や武器を隠し持っていたか…!!」



 ま~た変な誤解産んじまったよ。まぁ隠してたと言うよりかは忘れてたって言った方が正しいがな。

 それにしてもこの鎌、マジで使い心地が良いなぁ。ゴーレムの時は一瞬で飛ばされたけど、実戦で使ってみると軽いし最高だな。


 刃の部分で遠心力が掛かると思ったがそんな事もないし。ミリリアには勿体ない武器だ。

 しかし、ゼータが目を瞑り光剣を天に掲げ何かを唱え始めた。



ゼータ「勇者を救う聖なる光の剣よ…今我を導きたまえ…悪を滅する栄光の煌めきよ…今我に力を与えよ…!!我を覆いし閃光の輝きは…世の最悪に僅かたる慈悲をも与えぬ…!!冥闇に包まれた現世を造りし…邪悪を打ち消す賢者の名に懸けて…!!」



 ゼータの唱えを聞いたレイドが少し身構える。その様子は、まるで今から何か天災が起こるかの様な緊迫感を出していた。


 そして焦りを見せる表情で俺に語り掛ける。



レイド「ゼータが唱えやがった…!!」



 ゼータが唱えやがった?おいおい、そんな雰囲気と言葉でフラグを掻き立てないでくれよ。


 これってあれだろ?力が増すとか強くなるとか、そう言うパターンだろ?


 …って、ヤバくね?それを対処するんだよな…。


 今考え直したら…え…(汗)


 ……はぁぁぁぁぁぁッ!?


 レベルも経験もダンチなのに更に面倒な事になるのかよ!!俺の思ってた通りと全く同じじゃねぇかッ!!


 俺まで焦り出した。どうしよう…!!


 ゼータが光剣を降り下ろし、目を開いて叫ぶ。



ゼータ「我の導く栄光は目前にありッ!!幻華天翔蒼滅奥義ッ!!【覇王の烈聖術】ッ!!」



 ゼータの振り下ろした光剣が眩い光を放ち、ゼータを黄金の光が包んだ。


 次の瞬間、ゼータは俺の目の前にいた。


 

千智「ッ!?」



 急な出来事過ぎて言葉を失う。【見切り】が追い付かない程だった。


 このままじゃ不味い…!!何か策をッ!!


 しかしゼータが攻撃するまでの間は僅か約1.5秒。その極端に少ない時間でゼータの光剣を鎌で受ける事しか出来なかった。そして俺はゼータのクソ速くなった光剣の威力と覇気に圧され5m程吹き飛ばされる。



千智「グアァッ!!」



 ちくしょう…結構キツいな…!!


 こんなのに勝たねぇといけねぇのかよ…!!クソッ!!嘗めて掛かったりはしていない…!!けど、俺が思っていた以上だった!!


 歯を食い縛りガクガクとなる膝を手で支えながら体制を立て直す。


 しかし立ち上がる事はおろか、再びゼータの光剣を受け更に吹き飛ばされる。

 


レイド「千智ッ!!」



 レイドが俺の名を呼んでいる。だがそんな事を気にしていられる程今の状況に余裕がない。


 何を考えれば良いかすら解らなくなってきた。


 痛みも衝撃も、今まで感じた事の無い領域だ。何なんだ…あのゼータって奴は…!!俺が何をしたって言うんだ…!!俺が…お前等に何か迷惑を掛けたとでも言うのか…!!


 何に怒りや気持ちをぶつけて良いか解らず、倒れたまま地面の土を握る事しか出来ない。

 情けなかった。そんな俺を想像するのが、本当に情けなかった。


 クソッタレが…!!てめぇ等の好き勝手な想像だけでこんなになるまで追い込みやがって…!!ふざけんじゃねぇぞ…!!


 良いぜ…!!やってやんよ!!この俺、葛城千智の根性を見せてやろうじゃねぇかッ…!!


 俺が立ち上がるタイミングでゼータの攻撃が飛んでくる。さっきまでの俺ならふっ飛ばされて死にかけてただろうけど、今の俺は違う…!!



ゼータ「何…!!」



 ゼータの攻撃を鎌で防ぎ、飛ばされる事なくその場で踏ん張り留まる。そして光剣と共にゼータを弾き飛ばした。俺自身、こんな力が出るとは思ってなかった。


 ゼータは吹き飛んだ拍子に地面に勢い良く尻餅をつく。



ゼータ「ウアッ!!」


千智「デアァッ!!」



 すかさずにゼータに火球を撃ち込む。殺すつもりは無いが、手を抜くつもりも無い。

 火球が爆発した瞬間、ゼータの元へと走り込み鎌を振り下ろす。俺の理想はここでゼータを仕留めて三人共仲間にする。だったが、現実はそうは甘くねぇみてぇだな…!!


 この野郎…火球を喰らってももろともせずに光剣で受けやがったか…!!


 さすがはレベチの冒険者だな…!!



ゼータ「ハァァァッ!!」


千智「クッ!!」


 

 次に弾かれたのは俺みてぇだな!!でも倒れねぇぞ…!!倒れて堪るかよッ!!


 再び踏ん張り、目を反らさずにゼータを見る。ゼータも同じく俺の事を見ていた。 


 奴の目を見るのが怖い。だが今はそれ以上に奴の目を見なきゃいけねぇんだ…!!これはたぶん奴も同じだろう…!!


 同じ土俵に立つ者どうしなら…ソイツの勇姿を認めて…ソイツの期待に応えねぇと…ソイツと戦う資格も人を守る権利もねぇッ!!


 だから…どんだけ痛かろうがどんだけ怖かろうが…大切なもんを守って大事なもんを貫く為にやり通さなきゃ…ならねぇんだよッ!!


 鎌を構えると【見切り】を最高潮に活かすべく集中する。


 ゼータは光剣を構えると鋭く威圧的な目で俺を見つめる。


 この時点でかなり在り来たりだが…これに関しては勝手に攻め立ててきたコイツ等が悪い…きっとな!!

 っつう事で、尺の都合で一旦切るぜ!!

 すぐ後の17話で会おう!!


 

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