第14話 と言う事で、俺が求めてたハーレムは消えました。
前回、俺の前に突如として現れた謎の三人、ゼータ、セイナ、ミーニャ。
言うまでもなくギルドの依頼で来たのだろう。じゃねぇと魔王討伐のクエストなんざ受けやしねぇ。
しっかし、考えてなかったな。仲間持ちの冒険者が来るだなんて。
だが隣でレイドが明るい声でゼータに話す。
レイド「ゼータじゃねぇか!!」
ゼータ「レイドさん…貴方は魔王に寝返ったんですね…!!」
相変わらず睨み付けてくるなコイツ。俺だけじゃなくレイドにまで牙を剥くんじゃねぇかな?
…まぁ寝返ったって言う解釈は間違いじゃないけどさ。
それにしても、コイツ正統派の主人公っぽいな。力をもらって仲間を増やして、自分の力で強くなって魔王討伐。それに合わせてハーレムと来たか。俺が魔王にならなかったら同じ道を歩んでたのかも知れないな。
…正直…羨ましい。
俺の思い描いていた異世界転生ものを実現してんだ。どれだけ在り来たりで何回も見たパターンだとしても、お前が羨ましいぜ…。
俺は腕を組みながらゼータを見ていた。
レイドは必死にゼータを説得しようと試みる。
レイド「違うんだゼータ!お前達はあの死神から騙されてるんだ!!」
ゼータ「レイドさんは騙されても…俺は騙されない…!!あの女神は真実しか言わないからな!!」
ちょっと待て。女神って何だ?俺の頭を疑問が埋め尽くした。そして気付けばゼータに声を投げ掛けていた。
千智「め、女神ってなんだ!?」
ゼータ「お前、ここに来る前に会ったんだろ?女神様に…!!」
千智「いや、だから女神って…」
ゼータ「お前が散々な無礼を働いたあのお方は女神様だったって言ってんだよ!!」
…一つ教えてくれ。俺の頭が悪いから理解が追い付かないのか、嘘を流されて洗脳されたコイツ等が哀れで慈悲を感じているのか。いや、それすらも解らん。
何?
女神?
ミリリアの事だよね?
アイツって死神じゃないの?
…何か全部が解らんくなってきたぞ。そんな俺の隣でリーナさんは腕を組み呆れた顔で溜め息を付いている。
千智「ど、どうしたんすか?」
リーナ「はぁ…ミリリアのやりそうな事だわ(汗)」
千智「やりそうな事?」
リーナ「情報凝視でゼータの事を調べたのよ(汗)」
リーナさんが言うには、俺がこの城に来た後にギルドの依頼で俺の討伐が追加され、報酬は従来の依頼の何十倍もの額や支給品だったらしい。当然の如く冒険者共が興味を持ち討伐を検討していた。とは言え魔王であり人とは違った力を持っている事は間違いではない。その為か勇気を出せない奴等もいたんだってさ。
そんな中で勇気を出して来たのがレイドとゼータ達。そして気になる【女神】の話が、ミリリアが町の住民を洗脳して自分自身が【死神】ではなく【女神】だと言い張り事実を塗り替えたんだとよ。
…全く迷惑な話だよな。
だってさ、俺何にも悪いことしてないんだよ?
はぁ…ふざけんなよ…。
俺まで呆れた顔で溜め息を付いちまったぜ。
そんな俺とリーナさんを気にする事なくゼータは相変わらずの様子でいた。
レイドも変わらず必死の様子で語りかける。
ゼータ「お前は俺が倒す…!!」
レイド「落ち着け!」
ゼータ「レイドさん…貴方には恩があります…!!ですが、これ以上魔王の味方になり俺達の敵であり続けるのであれば…俺は貴方を倒します…!!」
レイド「何だと…!!」
おっ、レイドの表情が変わって敵を見る時の目になったな。
…このままレイドに任せて良いかなぁ?俺もうしんどいよぉ。
片手をポケットに突っ込みながら膝を軽く曲げ立ちすくしていると左右の二人が口を挟む。
セイナ「レイド…これは貴方の為に言っているの…。今ならまだ間に合う。きっと神も貴方を許すわ。」
ミーニャ「例え相手がレイドでも、ミーニャのゼータに怪我をさせたら許さないんだから!!」
セイナ「なっ…ゼータは私の…!!」
ミーニャ「違うもん!昨日もゼータはミーニャと一緒に寝てくれたもん!!」
セイナ「そんなの…私だってこの前は…!!」
…目の前でいきなりゼータの取り合いが始まった。両者ともゼータの腕を掴み引っ張りあいをしている。その最中、ゼータは困った顔をしていた。しかし俺には解る。…あの野郎…この状況を楽しんでやがるな…。
…………自分、キレて良いっすか?
マジでムカついてきた。目の前で美女と巨乳妹系ロリっ娘が男の取り合いをしているのがこんなにもムカつくなんてな。思っても見なかったぜ。
困った表情を見せていたゼータが口を開いた。
ゼータ「おいおい、こんな所で俺の取り合いはやめてくれよ(笑)」
何が【(笑)】だこのクソ野郎ッ!!
気付けばさっきまでポケットに突っ込んでた手を出して顔の横に持っていき、クッソ固い握り拳を作っていた。眉はひそめ眼球はガン開き、激しい歯軋りをしながら額や腕、手の甲に【💢】マークを多数表示させていた。
リーナさんは俺を見て呆れ顔で言った。
リーナ「何考えてるのよ(汗)」
千智「アイツぶっ殺していいっすか?」
リーナ「あのね…(汗)」
千智「アイツをぶっ殺してあの二人を味方にしてやる…!!」
思わず心の声が出てしまう。まぁ出ても出なくてもリーナさんにバレるけど。
とりあえず腹が立つ。俺がこうしてる間にも野郎は半笑いで困った表情をしたフリをしていやがる…。
チクショウがッ!!俺がどんな思いで魔王にされて斬新なストーリーを作って行こうと決心したと思ってんだ…!!
拳がより一層固くなる。爪が手に刺さりそうな勢いだ。
俺の心を読んだのか、リーナさんが呆れた顔で声を掛けてくる。
リーナ「だったら魔王にならなきゃいいじゃない(汗)」
千智「そう言う訳には…!!」
ゼータ「とにかく魔王!!覚悟しろ!!」
千智「許さんぞ…!!」
ゼータ「は、はぁ?」
ゼータに体制や顔を変えず思っていた事を全て吐き出した。
千智「絶対に許さねぇからな!!俺がどんな思いで魔王になったのかも知らずに冒険者でハーレムなんざ築きやがってよ!!ふざっけんなよッ!!こっちとら在り来たりな展開を作らないように必死になってんのに、何在り来たりな展開でウハウハしてんだコラァッ!!しかもお姉さん系ヒーラーと巨乳妹系ロリっ娘ケモ耳ヒロインなんか引き連れやがってよッ!!嘗めてんじゃねぇぞてめぇッ!!」
スッキリした。心が浄化される様だ。
対してゼータは昨日のレイドと同じく「お前マジで何言ってんの?」って顔をしている。
そりゃあそうか。理由は…言わなくても解るよね。
そんな中、左右の二人が口を出してきた。
ミーニャ「ゼータは悪くない!!このゴミ!」
セイナ「やはり魔王。心が汚れまくってる。即刻排除すべきね。」
言いたい放題だな。さすがの俺も泣くぞ?いや待て、心が泣いている。
クソ…とりあえず三人は味方にするがあの二人は特にこっちサイドにしたいな。正統派ヒロインNTRだ…。
…何でだろ。心がマジで汚れてきた気がする。
いやしゃあねぇだろッ!!こんな状況に陥ってんだぞッ!!
ちくしょう!!掛かってこいよッ!!冒険者だか討伐魔力だか知らねぇが、俺の打撃魔力を嘗めんなよッ!!
ミリリアの鎌を部屋に置いてきた俺は武器もない状態で戦闘体制に入った。
それに答えるようにゼータが腰の短剣を抜き、片手で持ちながら俺に威嚇するかの様に構える。
ゼータ「二人は下がってろ…!!奴は俺が片付ける!!」
千智「レイド。手は出すな。死ぬか生きるか…やってみねぇと解らねぇってかッ!!」
ゼータ「やる前から解ってるぜ…お前の敗北がなッ!!」
ミーニャ「信じてるから…!!」
セイナ「何かあれば頼って…!!」
レイド「俺はお前の味方だぜ…千智!!」
ゼータは二人に応える様にコクりと頷く。
レイドに応える様に親指を立て、半分苦笑いでグッドサインを出した。
場には緊迫した空気が漂う。その場にいた全員の心臓の音まで聞こえて来そうだぜ。
読者の諸君…申し訳ないが、また安っぽいバトルマンガ展開に付き合ってもらうぜ…!!
新しい展開も挟んでいくからよ…!!
見届けてくれ…俺の…勇姿をッ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます