第13話 と言う事で、正統派主人公が来場しました。

 俺の名前はゼータ。一年前に不慮の事故で死んでから暗い空間に誘われ、死神から力をもらってこのイヴェンタに降り立った異国の民であり、冒険者だ。


 今は仲間でありこの国の住人、ヒーラーのセイナと俺と同じ異国の民で獣人族のミーニャと一緒にこの平和な国で魔獣を討伐したり、緊急依頼を受けては国と人々を救っている。


 俺が死神の場所に行った時にもらった力。それは【人々の役に立ち、世界を平和に出来る力】。


 この力でこの国を守ろうと心に誓った。


 今の俺のステータスはこんな感じだ。


【ゼータ】Lv.75 HP97/150 (異国の民)

《火魔力:59(上限170)》《水魔力:45(上限135)》

《風魔力:51(上限100)》《光魔力:105(上限200)》

《闇魔力:35(上限90)》《討伐魔力:120(上限∞)》

   《未解放特殊潜在能力:無し》

《解読能力》《護衛》《建築》《錬成》

《戦略》《見切り》《友好》《威力アップ》


 残念ながら俺の特殊潜在能力はこれが最大だった。

 でも《討伐魔力》って言う他の人のステータスには無い力が俺にはある。


 この力で様々な戦いに勝利してきた。その度に国から認められ感謝される。それが嬉しかった。

 でも、つい先日。この平和な国に突如として最悪がもたらされた。それは俺と同じく異国の民である魔王の君臨。

 そして俺が死んだ時に出会った死神は死神ではなく、世界に平和を捧げる女神だったのだ。その女神が死神の世界からこの国を守る為に地上に降り立ってくれたのだ。

 女神に迷惑をかけ、尚且つこの国を恐怖に陥れるだなんて…絶対に許せねぇ…!!そんな奴は俺が撃退してやるぜ…!!


 って事で今日はギルドの依頼である魔王討伐クエストに来た。もちろん仲間も連れて。




ゼータ「待ってろよ…!!」


セイナ「もうすぐみたいね…!!」


ミーニャ「魔王なんか、ミーニャ達でやっつけてやる!!」



 俺が物語の主人公として君臨してやる…!!


 待ってろよ…魔王様よ…!!



 ………………………………………………………



 部屋に漂う料理の匂いで目を覚ます。

 とても良い匂いだ。デミグラスソースの様な、それでいて少し甘く心地の良い…。

 そうか。リーナさんの作ってくれてる朝食の匂いか。


 ベッドから起きると顔を洗いに洗面所に向かう。朝の洗顔は冷たくも気持ちの良い目覚めを俺にくれる。洗面所の窓から朝日を見つめ、小鳥の鳴き声を聴きながらこの素晴らしい朝と俺の一日に笑顔で挨拶をした。



千智「おはよう。今日もよろしくな…!!」



 タオルを洗濯かごに入れ、リーナさんが待つ食卓に向かった。



………。



千智「って言う朝の出だしをしたんすよ!!めちゃくちゃ良くないっすか!(笑)」



リーナさんに満面の笑みと最高の元気で朝の事を話した。


リーナ「そ、それは良かったわね(汗)」


千智「いやぁ、主人公なんでその辺も気遣わないとっすよねぇ!!」


リーナ「そ、それよりも、レイドを呼んできて(汗)」


千智「了解っす~!!」



 しかしリーナさんは苦笑いを浮かべ正直心底どうでも良さそうな雰囲気で聞いてた。何でだろ?ま、良いか!! 


 俺は笑顔のまま城の外に出てレイドを呼びに行く。しかしそこには俺の目を疑う光景が広がっていた。

 棒立ちと格好の悪い体制でそれを眺めてしまう。

 そして俺の口からは考えていた事と全く同じ言葉が出てきた。



千智「何これ…スゴい…!!」



 俺の目の前には木造住宅の他にレンガが使われた家や恐らく飲食店やその他の店に使われるであろう建屋が三十軒前後建てられており、道や通路も完璧に作られていた。


 これは一つの【町】と言っても良いだろ…!!

 呆気を取られ眺める俺の後ろから楽しそうに笑っているレイドの声がする。



レイド「どうよどうよ!!」



 俺は振り向きレイドの手を取りブンブン振り回しながら感激の感想を伝える。



千智「いやすげぇよ!!マジですげぇって!!」


レイド「なっははは!!そう言ってくれると嬉しいな!今日の朝早くから作ってたんだぜ!」


千智「なるほどなぁ!ありがとよ!!」


レイド「おう!」



 レイドが一番最初の仲間で本当に良かった。そう心から思いながらレイドと城に向かい朝食を食べた。


 …やっぱり最高だ。今日はパンにハンバーグの様な肉料理、サラダも付いてスーパー旨すぎる…!!これは正に…味の異世界転生や…!! 


 おっと、俺とした事が、朝から最高の食レポを決めてしまったな。なんて考えていられる内は幸せだよな。


 皆も【今】を大切にしなよ!


 昨日と同じく食器の片付けを手伝うと外に出てレイドと町の構成を練っていた。

 その時だった。城の入り口辺りから何と言ってるかは解らないが誰かの声が響いた。


 声の方を見つめ、少しだが身構える。



千智「誰だ…?」


レイド「あの声って…」



 レイドには聞き覚えがあるらしく、声に反応して俺と一緒に声のした方向を見る。


 リーナさんも外で用事事をしていたらしく、こっちに気付いて来てくれた。そして次第に声の主が見えた。


 そこには俺と同じ歳ぐらいの男が一人、身長も俺と同じぐらいで170cmと言ったところ。髪は茶髪で目にかからないぐらいの長さで立て髪、眉はキリッと、目は優しくも逞しい眼差し。正に好青年と言った爽やかでなかなか良い顔をしてる。マントの様な物を羽織りレイドの様に肩、胸、前腕、腰、脚に銀色の装備を付け、丈の短い半袖の服の下にはピッチリとした黒の長袖のインナーを着て腰には短剣を装備、ズボンは黒のスキニージーンズの様なもので、焦げ茶色のブーツを履いていた。


 そいつの隣、俺から見て右側には身長が170cm程、黒髪の長髪と瞳は落ち着いた青色でどこかお姉さんの様な雰囲気を出している。紫のフード付きマントを着ていて、その下は丈の長く白いワンピースを着て茶色いベルトが胸の下、腕、腰に巻かれており首からは十字架のネックレスがぶら下がっていた。


 そしてもう一人、俺から見て左側には身長が150cm程、金髪で髪はそんなに長くなくツインテールで頭には猫耳、瞳は赤色で大きくクリクリとした目が印象的な顔、服はヘソ出しの半袖、両腕には包帯を巻き、丈が膝上ぐらいまでのジーンズで黒のストッキング?の様なものを履いていた。後ろには尻尾が生えており、明らかに人間では無いことが確認できる。だが、胸は大きくてたぶんFぐらいあるんじゃないか?


 …見た感じ男が主人公で右がヒーラー、左は妹系に巨乳と言う常識破りのおてんばケモ耳ヒロインって感じだな。

 とりあえず能力透視で覗くか。

 

 【ゼータ】Lv.75 HP97/150 (異国の民)

《火魔力:59(上限170)》《水魔力:45(上限135)》

《風魔力:51(上限100)》《光魔力:105(上限200)》

《闇魔力:35(上限90)》

《討伐魔力:120(上限∞)》

   《未解放特殊潜在能力:無し》

《解読能力》《護衛》《建築》《錬成》

《戦略》《見切り》《友好》《威力アップ》


【セイナ】Lv.65 HP95/100 (光神族)

《火魔力:30(上限50)》《水魔力:35(上限55)》

《風魔力:42(上限70)》《光魔力:89(上限∞)》

《闇魔力:2(上限10)》

   《未解放特殊潜在能力:無し》

《回復》《癒し》《神の加護》


【ミーニャ】Lv.59 HP95/110 (異国の民)(獣人族)

《火魔力:58(上限105)》《水魔力:30(上限75)》

《風魔力:25(上限80)》《光魔力:27(上限85)》

《闇魔力:7(上限12)》

   《未解放特殊潜在能力:無し》

《瞬速》《見切り》《高聴覚》《高視覚》

《高嗅覚》《ジャンプ力》


 ほほぉ。やっぱり右がヒーラーか。んでもって左が獣人、火力は無いが特殊潜在能力でリカバリーって感じか。


 問題は男…いやゼータか。俺と同じで変な魔力を持っていて特殊潜在能力も厄介なものが多そうだ。とは言え俺の持ってる能力透視は無い。そこはラッキーだったな。…けど、討伐魔力って何だ?嫌な予感がするぜ。


 俺が生唾をゴクリと飲み込み身構えているとゼータが俺に指を指し大きな声で言った。



ゼータ「平和な国を襲撃する魔王…!!だがな!!今日でお前は終わりだッ!!」



 今日と言う一日がどう言う一日になるか…。それは俺が生きるか死ぬかで決まるって事だな…。



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