第9話 と言う事で、異世界居候生活開始します。


 その日から俺はリーナさんの古城に居候することになった。

 部屋は念の為と用意されていた寝室があったからそこを借りる。


 中は外見に比べるとめちゃくちゃ綺麗で、そこそこ広くおよそ15畳ぐらいのスペースがあり、洋風なホテルを彷彿とさせる室内となっていた。家具もそれなりに揃っていて、洋風なタンス、リッチ感が溢れる金と茶色の装飾を施されたテーブル、それに合うような椅子が二つ、ダブルサイズぐらいのベッド、その他ランプや絨毯等も寘かれてあった。


 異世界に来てまだ一日目だが、これ程までの部屋に住める(居候)のはめちゃくちゃありがたい。


 …あの死神…いや、ミリリアが来てなかったら今頃小さい小屋みたいな家で暮らしてたんだろうなぁ~。


 ………圧倒的にこっちの方が良くないか?


 だって、ボロいとは言え城に住めて尚且つ魔王になった事で本来頭を悩ませるはずの斬新なシナリオが楽になったも同然だ。


 …俺の時代が来るかもしれない…。


 ニヤニヤしながらベッドに横たわり手を後頭部に回し足を組んでいた。

 幸福感と期待を胸に詰め込んでゆっくりとしていると部屋のドアが叩かれる。


 ベッドから立ち上がり返事をした。



千智「はい!」


リーナ「少し遅くなっちゃったけど、晩御飯にしましょう。」


千智「晩御飯?」


リーナ「そうよ。私が作ったので良ければだけど。」


千智「ありがとうございます!お腹空いてたんすよ(笑)」



 リーナさんに着いていき、食卓に案内された。

 テーブルの上には肉料理の他、パンや野菜も用意されていた。


 …どれも美味しそうだ…。


 まさか料理に目を奪われる時が来るとは…!!



千智「スゴい…。」


リーナ「そう?」


千智「…はい。胃袋が求めているのが解ります…。」


リーナ「それはどうも。嬉しいわ。」



 リーナさんは席に着く。それに続いて向かい側の席に俺も座った。そして料理を口へと運ぶ。


 …旨い…!!旨過ぎる…!!


 久し振りに料理で超絶の驚愕を受けた。中学の時に食べた父親の再婚相手の作ったイチゴタルト以来だ。

 驚いた俺は思わず口に出してしまう。



千智「めちゃくちゃ旨いっすね…!!」


リーナ「ありがと。料理には少し自信があるわ。」


千智「昔作ってたんすか?」


リーナ「えぇ。外に出ても何も無かったから籠って作ってたの。」



 なるほど。昔からある腕前って訳か。

 しかしながら本当に旨いな…。

 俺は口に肉を頬張りながら感動していた。

 ふと気になった事があったから食べ物を飲み込み、リーナさんに質問する。


千智「でも、食料ってどうやって調達してたんすか?」


リーナ「町で大量に買ってきた小麦粉やお水を保管してるの。」


千智「へぇ!でもお肉や野菜は?」


リーナ「野菜は町で買ってきた種を植えて城の裏で栽培してる。肉は森の中にいる魔獣を加工してるわ。」


千智「ま、魔獣?」


リーナ「えぇ。城の周りに大抵の魔獣が触れれば即死の結界を張ってあって、そこに掛かった魔獣を厨房で加工してる。」


千智「な、なるほど。」



 見掛けによらず結構怖い人だな。


 それに魔獣の肉ってこんなに旨いんだ…。


 …すげぇ。本当にすげぇ。


 特殊潜在能力とかヤバそうだな…。とか思って見ようとしてるけど見えないんだよなぁ。

 じっとリーナさんを見つめているとリーナさんは俺の思考に気付いたらしく、平然とした顔でお茶を飲みながら話し出した。



リーナ「私の能力値は私自身も解らないわ。」


千智「…そうなんすか?」


リーナ「えぇ。生まれてこのかた、計ったことすらない。」


千智「じゃあ、俺の測定器を着ければ見れるんじゃないっすかね?」



 リーナさんに右腕の測定器を貸し出す。それをリーナさんは右腕に着け、測定された能力を見る。

 そこにはこう記されてあった。


 【リーナ】Lv.? HP89/100 (闇神族)(魔女)(?)


        測定不可

 

 …測定不可?どう言う事だ?


 俺の頭の中でに大きな疑問が出来る。

 魔女族は解るけど…【?】って何?

 リーナさんは魔女族であり…死神…だけど、死神って出るはずの所が出なくて、全能力は測定不可…。


 ……解らん。いささか解らん。


 首をかしげ顎に手を置き装置を見つめる…。

 やっぱり解らん。

 世界って、まだまだ不思議な事がいっぱいあるね!!あはははは!!


 リーナさんは装置を外すと俺に返してくれた。



リーナ「とりあえず、これは返すわ。」


千智「あ、あぁ…了解っす。」


リーナ「さて、夕飯も済んだし、この部屋を出てすぐの左手の部屋が浴室だから、入浴したら今日はもう休みなさい。」



 そう言ってリーナさんは食器を片付けた。


 …風呂にまで入れるだなんて…最高か?


 言われた通りに浴室に向かった。更衣室と思われるスペースは洋風でお洒落、広さは8畳ぐらいとちょいちょい広め、家具は特になく、脱衣した服を入れる籠とタオルやちょっとした服が置かれてあった。

 少し戸惑いながらも籠の中に着ていた服を入れる。その横にはタオルと男物と見られる服が畳まれてあった。



千智「リーナさん…。」



 全裸になった俺はモザイクのガラス張りの扉を開け、浴室に入った。 


 湯煙で視界がボヤけてる中、俺の目に入ったのはライオンの様な生き物の大理石制オブジェの口からお湯が出ている浴槽、縦50cm横45cm程の四角い鏡の横には銀の装飾のシャワー、浴槽を除いた広さは7畳程、浴槽は人が5人程入るスペースがあった。周りには軽い窓と通気口があり、まるで高級ホテルを連想させる様な浴室となっていた。

 鏡の前にある椅子に座り、髪と体を洗うと湯船に入った。そして湯船の快楽と温もりに浸る。



千智「ふぁ~!!き"も"ち"ぃ"~!!」



 湯船に入るだけで出生の喜びを感じれるだなんて、風呂って本当にすげぇよな。顔が惚けちまうぜ。


 …思えば、長く感じた出来事も一日と言うあっという間の時間だったなぁ~。


 死神の間に行って…ここに飛ばされて…ギルドでシミュレーション受けて…ミリリアに濡れ衣着せられて…この城まで逃げてきて……………。


 明日からギルドを受けた奴等が来るのかなぁ~。…疑問に思うまでもないな。来るに決まってる。


 …俺の能力…か。


 つっても、まだまだ知らねぇ事とか慣れてねぇ事もあんだよなぁ~。ま、何とかするしかねぇな。

 それにしても、リーナさん…、好い人だな。

 いきなり訪ねた俺を敵視することなく入れてくれた上、ご飯やら風呂まで用意してくれて、しかも部屋と着替えまで…。


 本当に…好い人だな…。


 美人だし、優しいし、親切だし…。


 …明日からは…俺がリーナさんを守る…!!


 まぁ、元はと言えば俺がこの城に降りる所を見られたのが不味かったんだけど(汗)


 …罪滅ぼしも兼ねて…だな…。


 しばらく湯船に浸かった後、浴室を出てタオルで体を拭き、用意してくれてあった服に着替えて更衣室を出た。すると、向かい側の【物置き】と書かれた部屋から出てきたリーナさんと鉢合わせになった。



リーナ「湯加減は良かったかしら?」


千智「はい!夕飯から風呂から…何から何まで本当にありがとうございます!」


リーナ「ふふ。良いのよ。今日はゆっくり休みなさい。」


千智「はい!おやすみなさいっす!」



 リーナさんは軽く微笑み、【おやすみ】と残し浴室に入っていった。

 自室に戻り能力値を見直す。

 

【葛城千智】Lv.48 HP89/∞ (異国の民)

《火魔力:27(上限∞)》《水魔力:22(上限∞)》

《風魔力:23(上限∞)》《光魔力:18(上限∞)》

《闇魔力:28(上限∞)》《打撃魔力:58(上限∞)》

   《未解放特殊潜在能力:不明》

《解読能力》《浮遊》《能力透視》


 ちょっとだけレベルが上がってるな。それに潜在能力も追加されてる。


 …この先どんな事が待ってんだろうなぁ。

 ま、見てみねぇと解らねぇ世界ってやつか。

 不安と少しの期待を胸に持ち、俺はいつの間にか眠りに着いていた。

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