第6話 と言う事で、俺は魔王になった…(涙)
千智「何してんだ!?」
死神「うるさいわね!!関係ない人間とかを殺しすぎたって死神議会から追放されたの!!」
…理由、おかしくないっすか?
関係ない人間とかを殺しすぎた?
…この時点でこの死神がどれだけクズなのかが解る。
何故なら、俺もその関係ない人間の一人であり、被害者であるからだ。
呆れて怒りが消えかける。
しかしその死神を見てると無性に腹が立つ。
俺の顔は自然と引釣り、拒絶反応を見せる。
死神「何見てんのよ?」
千智「うっせぇよアホ死神が…。」
死神「は!?元はと言えばあんたにも責任はあるんだからね!!」
俺に責任?
何を言ってるんだ?
元々俺がここの世界に来た経緯はお前が俺を勝手に殺して適当に流したからだろ…。
ってか、何でこの世界に来たんだよ…。全く迷惑な話だぜ…。
さっきから拒絶の顔が直らねぇ。
…俺やっぱコイツ嫌いなんだわ。
何て言うんだろ、怒りはあるけど、その…それを感情にする間でもないって感じ。
死神「とっととその鎌とパンツ返しなさいよ!!」
千智「あ?勝手に俺の事殺してここに送っておいて何言ってんの?」
死神「黙りなさい!」
千智「チッ…鬱陶しいなぁ…。俺とお前は赤の他人だろ?黙って罪でも償っとけよ。」
本当に鬱陶しい。心の底からヘドが出そうだ。
…いや待てよ、何でアイツ得意気な顔してんだ…?
とても嫌な予感がする。
死神は俺の事を蔑む様な顔で薄ら笑いを浮かべた。
次の瞬間、死神は涙を流しながら周囲に聞こえる様な声で叫び出した。
死神「コイツは…この人間は魔王になろうとしてるわ!!」
千智「…は?」
俺が魔王?何を言ってるんだ?本当に意味が解らない。
…じゃあ…何で周りは俺に冷たい視線を向けてくるんだ…?
死神「コイツは私の所に来た時に…グスン…この世界で魔王になって…グスン…支配してやるって…!!」
役員「何だって!!」
千智「…え?」
本当に何を言ってるのか解らない…。
でも…この周りの視線は…明らかに…明らかに…!!
不味い事になった…!!さっきまでの冷静さは俺にはもう無い。
動揺してるんじゃない…!!冤罪を挽回しようとしてるんだ…!!
次第に俺は焦りを見せ始める。
千智「な、何言ってんだ!!」
死神「皆騙されないで!!コイツは卑劣で汚い人間…いや、魔王よ!!」
イケメン役員「そうだったのか…!!」
千智「…えぇ(汗)」
何てこったよ…。この世界、少なくとも今この場にいる人達全員の敵になっちまった…(涙)
おぉぉぉぉぉいぃぃぃぃ(汗)
ふざけんなよぉ(汗)
突拍子もなくて信じられんけどさぁ~、俺が22年間の人生で経験してきた感じだと、この視線はマジで敵に回された時の冷たさだな。
…とんでもない事になったぞ…。
次第に俺は焦りと同時にさっきまで見せなかった動揺まで出てきやがった。
千智「へ、変な嘘を流すな!!」
死神「しかもコイツ…この世界を支配した後に女は俺が全て食い尽くす…年なんか関係ないからな!!って…!!私…止めたのに…!!」
役員(女)「きゃぁぁぁぁぁ!!」
その場にいた女全員が叫び、獣を見るかの様な目で見てくる。
こう言う時は冷静になって抗議するのが先手なのだとは思うが、人生で初めての経験であり、初めての異世界シリーズだからやはりどうしようもない。
そして何より腹が立つのが、大して顔も良くなく、スタイルも腐ってる様なブスが本気で拒絶反応見せてるのを目の前で見てる事だ。
それに混ざって最初の方で会ったクソ気ダルそうにしていたあの5番ゲートの女役員までもが、ダルそうな様を見せずに拒絶してくる。
何なんだよマジで…(涙)
役員(女)「これだから男は…!!私達の敵なのよ!!」
千智「チッ!!」
待て、落ち着け、取り乱すな。高々ブスが思い込んだ台詞を吐いてるだけじゃないか…。
顔を引釣り、《💢》が額に表示された状態の笑顔で平然を装う。
しかし拳がプルプルと震えている。
…落ち着くんだ…俺…(涙)
役員(女)「いやぁぁぁ!!今私の事を性的な目で見てきたわぁ!!」
千智「うるっせぇぞクソブスッ!!てめぇ何勘違いしてんだ!?仮にも俺が魔王になったとしてもてめぇ等みてぇな思い込み勘違いブスは食わねぇよッ!!黙っとけカスッ!!」
役員(女)「きゃぁぁぁぁぁ!!」
…とうとうやっちまった。でも何故だろう。心の底からスカッとする。
そんな俺を死神は上目使いでクソ煽るような顔をして笑って見ていやがる。
…もう殺っちゃっていいっすかねぇ…。
…ちくしょう…(涙)
何であんな目に会ったにも関わらずここに来てまでこんな目に会わなくちゃいけねぇんだよ…(涙)
怒りを通り過ぎて思わず泣いてしまう。
そんな俺をもろともせずに警備員の様な男が七人掛かりで俺を取り囲む。
警備員「貴様…!!平和な町に現れた魔王めが…!!今ここで貴様の首を狩らせてもらうぞ!!」
千智「クソ…!!」
警備員「俺達警備員の職種を嘗めんなよ…!!」
さっきから不味かったが、本格的に不味くなってきた。
ざっくりと警備員の能力情報を見る。
すると全員がレベル80~100ぐらいでその他の能力値も割りと高い。正直、今の俺がやりあった所で確実に負けるだろう。
ましてや、相手は七人、俺は一人だ。
…千智…この状況をどう打開する…!!
周囲は警備員に塞がれてる…!!
強行突破?力で捩じ伏せられる。
下に逃げる?俺は地下移動は出来ない。
天井を見上げる。そこにはガラスが張られ、外からの光が入ってくる構造になっていた。
…これしかない…!!
想像しろ…連想しろ…念じろ…!!
飛べ…飛べ…飛べ…飛べ…!!!
警備員「掛かれぇぇぇぇッ!!」
千智「今だッ!!」
俺は思いっきり地面を蹴ってジャンプした。
すると勢い良く飛び上がり、天井のガラスを突き破った。
このまま飛んでどこかに逃げよう…!!
とは言っても最初は慣れていない。ガラスを突き破った瞬間、一瞬だけ落ちそうになった。
だが、終われている立場であり、この世界の敵となった。と言う状況を考えたら集中力がめちゃくちゃ研ぎ澄まされた。
やっぱりチート能力って便利だな…。こう言う状況になっても飛んで逃げれるんだぜ?
…マジで堪ったもんじゃねぇな…(涙)
あれ、何で涙なんか出てくるんだろ…(涙)
不馴れに飛びながら俺は泣いていた。
…ちょっと待て、何か後ろに嫌な気配がするぞ…!!
後ろを振り向く。そこにはさっきの警備員の、一人が追い掛けて来ていた。
警備員「飛んだからって良い気になるんじゃねぇッ!!」
千智「チッ!!しつけぇな!!」
追い掛けられるってこんなに怖いんだな。鬼の形相でこっちを睨んでくる。
…漏れそうだ。等と言っている場合じゃない。
向こうに何か仕掛けられる前に仕掛けないと…!!
でも殺すのはちょっと…!!
ならば風魔力に頼るか!!
警備員「逃げきれると思うなッ!!」
千智「申し訳ないがリタイアしてくれ!!」
俺は警備員に突風を飛ばし、警備員をなぎ払った。
警備員「うわぁぁぁぁ!!」
千智「悪く思うなよッ!!」
警備員はそのままバランスを崩し下に落ちていった。まぁあそこまで飛ぶのに慣れてたら受け身の一つや二つぐらい取れるだろ。
…チッ…!!不味いな…俺も限界が来たっぽいぞ…!!
そう言えば、少しは休憩したとは言えシミュレーション直後であることは間違いなく、HPも7から15ぐらいまでしか回復してなかったはずだ。その状態で飛んで風魔力使っちまったから無理もないか…!!
苦い顔をしてよろめきながら飛んでいると町の外れに古城が建っているのが見えた。
仕方ない…あそこに行くしかねぇか…!!
その古城に向かって降りる。
受け身を取り慣れていない分、少し強めに体を打ってしまった。
痛いな…心も体も…全部…(涙)
でも、こんな所で死んで堪るか…!!
あの死神に良い思いをさせる訳にはいかねぇんだよ!!
足を引きずりながら痛みを我慢し、古城を目指す。
今思えば、何で俺こんな事してるんだろ…。
あの死神に殺されて、あの空間に連れてこられて、能力をもらって、この世界に送られて、シミュレーション受けて…また死神に会って…濡れ衣着せられて…。
小さな頃からじいちゃんに【男ならちょっとやそっとの事で泣くな。強くなれ。】そう言われてきたが、今は素直に泣かせて欲しい。自分で言うのはなんだが、心身共にかなりイカれた。痛みを我慢しながら古城を目指して歩くなんてな…。今までに無い展開だな…。
古城まで辿り着くと誰かが居るのかも解らないぐらい古いのが解った。
西洋風の見た目に玄関には馬のエンブレム。玄関先の大きな柵はボロボロで簡単に開くし、そこらかしこに雑草や蔦が絡まっている。本当の外壁は白なのだろうが、古くて劣化してるのか、黒ずみが目立ち、所々にヒビが入っている。
しかし無言で入って誰か居ても嫌だな。確認はしておくか。
馬のエンブレムの付いた扉を叩く。
千智「あのぉ!!すみません!!誰かいませんか!!」
呼び掛けても返事がしない。やはり誰もいないのだろうか?
千智「あのぉ!!すみませぇぇぇん!!誰か…」
俺が再び呼び掛けると扉が【ギギギギギ…】と重苦しい音を発てながら開く。まるで古城が【何様だ?】と俺に問い質しているようにも聞こえる。
そして中から黒の少し薄汚れたドレスの様な服を着た金髪で長髪、透き通るような白い肌に綺麗に揺らめく青い瞳、しかしその顔は笑っておらず、凛として落ち着いている様子の女が出てきた。身長は俺より少し高く、スラリとしたスタイルをしていた。
…良い…。
おっと、こんな時に何を考えてるんだ。そんな俺に女は静かな声で話し掛けてきた。
女「…何か用?」
千智「あの…」
俺が話そうとすると女は俺の目を黙って見たまま動かなかった。
千智「えと…」
女「用件は解ったわ。入りなさい。」
千智「え…」
俺は女に言われるまま古城に入った。
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