第5話 と言う事で…おいおい、タイトル回収はどこに行った?
ゴーレム「ブォォォン!!」
千智「やってやるよッ!!」
先手必勝。ゴーレムがこちらに向かって攻撃を仕掛ける前にゴーレムに技を使う。
ゴーレム「ブガガガッ!!」
千智「
ゴーレム「ガガガァァァッ!!」
俺の放った技がゴーレムを圧しきり、ゴーレムの肩から腰辺りにかけてデカいダメージを与えた。
その衝撃か、ゴーレムの片腕が地面に重い音を発てながら崩れ落ちる。
そして最初のゴーレムと同じように蒸気を発しながら真っ赤に発光する。
パターンは同じか。ならばさっきみたいに打撃魔力に集中し、火力をぶつけて粉砕すれば何とかなる…。
ゴーレムの動きを良く見ながらタイミングを合わせる。
奴がこっちに力を込めたパンチを撃ってきた所に俺のパンチをぶつければ奴の掛けていた力と俺の力が重なって火力も倍ぐらいにはなるだろ…!!
自分で言って良いのか解らないが、さっきの岩石を喰らってから俺の思考がキレキレになってる。
それ程まで追い込まれているのだろう。自分自身で解る気がする。
ゴーレム「アンガァァァァァァァッ!!!」
千智「まだだ…まだ力を集中させろ…!!」
ゴーレムとの距離、力の掛け合いを見定める。
ゴーレム「グオォォォォ!!」
千智「ここだッ!!」
ゴーレムが拳を思いっきり俺にぶつける。それに合わせて俺の拳がゴーレムにぶつかる。
手のデカさでも俺の10倍以上ある。そんなもんに俺の小さい手が当たってどうなるだろうか。
普通なら粉々に砕けて俺は死んでるだろう。だが今は違う。俺の引き出した打撃魔力がゴーレムを粉砕した。
衝撃で足元にクレーターが出来ている。良く見ると至る所がボコボコだ。
手に痛みは感じない。アドレナリンとエンドルフィンのお陰だ。
重たい体とよろめく足を立て直す。
千智「ハァ…ハァ…ハァ…!!残りは一体だけだな…!!」
最後の一体を迎える。
…………………………………………。
悪いが尺の都合で割愛させてくれ(笑)
流れは一体目、二体目と同じ。
二段階に発光して、最終的には打撃魔力で粉砕したって感じだ。
今回は闇から水に発光してたなぁ。
多分だけど、俺の攻略は普通のやり方と違う。
だって、普通に攻略するならまず、最初と二回目の発光の弱点を突いて、最後の状態になってからメインの魔力で倒すって感じなんだろうけど、俺の場合は最初と二回目の発光は良いものの、最後は打撃の火力だけでゴリ押しして粉砕してる。
実際にゲームでも何回かゴリ押し戦法はやったけど、まさか自分自身でやることになろうとは…。
とりあえずこのシミュレーションから出たくて堪らない。
ボロボロの体でゴーグルを外そうとするとガイドの音声が流れる。
ガイド「シミュレーション終了です。お疲れ様でした。これよりゴーグル脱着します。そのままお待ちください。」
何清々しい声で言ってんだよ…。こっちとら死ぬかと思ったんだぞ…!!
とは言っても、やり方が解らなくて適当に腕を振ってhardモード選択しちゃった俺が悪いんだけどさ。
肩をガクリと下げ、猫背になりながら膝が笑っている。
もう苦笑いしか出ねぇよ。
体のあちこちも痛いし…。
それだけ疲れたって事だな。
考えてもみてくれ。駆け出しの冒険者並の初心者がいきなりこんなhardモードやるんだぜ?俺はチート能力で各魔力をそれなりにすぐ引き出せたのと、打撃魔力があったから何とかなったけど、本当に初心者なら死んでるって。
そうこうしてたらゴーグルが外れた。
自分の体を見る。しかし外傷や服の破損等は見られない。
なるほど。シミュレーションってだけあって、ダメージを喰らうのは体の内部だけって事か。
ともかく、クリアできたのは良かった。レベルも相当上がっただろう。
直後、右腕に着けた能力確認装置を見る。
【葛城千智】Lv.45 HP7/∞ (異国の民)
《火魔力:27(上限∞)》《水魔力:22(上限∞)》
《風魔力:23(上限∞)》《光魔力:18(上限∞)》
《闇魔力:28(上限∞)》《打撃魔力:58(上限∞)》
《未解放特殊潜在能力:不明》
《解読能力》
大分上がったな…。レベル45って、あのイケメン役員を越えたぞ。
そんなにスゴい経験値をもらえるのか、このhardモードは。
……そりゃそうか。当たり前だよな(笑)
とりあえずここを出よう。
ゴーグルを手に持ち、帰る支度をする。しかし周りを見て絶句した。
一方。ルークはそろそろ千智が戻ってくるだろうと思って出迎える支度をしていた。
ルーク「今日はありがとうな!!」
男「ハハハ!!良いってことよ!!」
ルーク「部屋の強度は相変わらずか?」
男「そうだぜ!!シミュレーション内でどんな爆発が起ころうが、対象者がどんな攻撃を繰り出そうが、あの部屋は無傷!何かあるとすれば戦いの衝撃でホコリが出るぐらいだな(笑)」
ルーク「さっすがだなぁ!!アドメルの火力を何とか防いだだけあるな(笑)」
男「そうだな(笑)あの部屋に傷を入れたのはアイツとルークの二人だけだぜ(笑)」
ルーク「そうか(笑)今度来た時は気を付けながらやる(笑)」
男「よろしく頼むぜ(笑)」
ルークと店の男は仲が良く、ずっと笑っていた。
千智「…どうしよう…(汗)」
その頃、俺は部屋を見渡して青ざめながら本気で焦っていた。
ゴーレムのシミュレーションとは違った、死ぬどうこうの焦りじゃない。その、何とも言い表せない焦りだった。
部屋中に打撃魔力の衝撃でヒビが入ったり穴が空いたりしている。
…不味いよね。これ。
この世界に来てからまだシミュレーションしかしてない。だからもちろんの事、お金やその他は持っていない。あるのは死神の鎌とパンツだけだ。
…こんなので許してくれる訳ないだろ!!(涙)
何年ぶりかに抱いた感情だ。最後に抱いたのは確か…中学の時に宮下君の気に入ってたシャーペン借りた時にペン回ししてたら地面に落として、それを松岡先生が踏んでぶち壊した時だったな…。
懐かしい…。
待て待て、思い出に浸っている場合じゃない。
あの時は別の買ってそれで済んだけど、これは別の買うとか弁償とかでは済まん…。
下手したら…。
これ以上は怖くて何も言えない。
言えるとすれば俺があの店の男にとんでもない事をされている光景だ。後は想像にお任せする…。
俺は部屋を出る覚悟を決める。
………よし。行こう。
出口を目指して歩く。体の内側はしんどいけど、そんな事を気にしている場合ではない。
歩くスピードをいつもの二倍くらいにする。
…表情や態度に出ないようにしないと。
でも冷や汗は止まらない。もう笑顔で切り抜けよう。
エントランスに着くとルークと店の男が出迎えてくれた。
ルーク「おう!お疲れさん!」
男「どうだった?スゴかっただろ!」
千智「はい!それはもう!!とんでもなくスゴかったです!!(とんでもないの意味合いが違うけどなぁ!!)」
今の自分の顔が気になる。
…バレてないかな…?
表情に出やすいタイプって事もあって余計に焦る。
男「じゃ、ゴーグルは回収するぜ!」
千智「はい!ありがとうございます!」
ルーク「汗なんかかいて、よっぽど楽しかったのか?(笑)」
千智「そうなんだよ!!思わずはしゃいじゃってさ!!ハハハ!!」
汗を突っ込まれた瞬間思わず体が反応してしまった。
SEはまさに【ビクッ!!】が似合うだろう。
男「そりゃ良かったぜ!!また来てくれよ!」
千智「はい!是非とも!!」
ルーク「じゃあ出るか!!」
千智「そうだな!!」
俺とルークは店を出た。
安心感と不安感の波が俺を襲う。
作り笑顔ってこんなに大変なものだったっけ?
とにかく何事もなく店を出られたのはデカい。
それだけでも十分だった。
外はもう夕方。オレンジ色に染まる町が綺麗で、俺は思わず見とれてしまった。
ルーク「どうしたんだ?」
千智「いや、綺麗だなって…。」
ルーク「そうか!千智は異国の民だからこの町も初めてだったな!」
千智「うん(笑)」
ルークは笑顔で俺と会話をしてくれる。
本当に優しそうな笑顔で。
ルーク「この町、イヴェンタは夕日が綺麗でなぁ。いつ見てもうっとりしちまう…。」
千智「…そうだな…。」
その時のルークの姿は、夕日に照らされ、美しい容姿が更に綺麗に見えた。
そしてどことなく寂しげで優しさに満ちた表情をしていた様に見えた。
…俺もこうなりたい…。
まさか、この物語の主人公はルークなんじゃないかと思わされる程似合っていた。
…いや違うんだけどさ。
ルーク「そう言えば、経験値は上がったか?」
千智を「あ、うん!それなりには!」
ルーク「そうか!それは良かった!easyかstandardを選んだんだろ?」
またしても体が反応してしまった。
千智「う、うん!!もちろんだぜ!」
…バレてないかな…(汗)
ルーク「なら良かった!(笑)」
千智「ハハハ!!」
話ながら最初の建物に戻っている時にふとある事を思い付いた。
…相手の能力情報を装置を見ずに見れないかな…?
道行く人の情報を見てみようと目を凝らす。
結構凝らす。
ルークにバレない程度に。
すると何となく見た対象の情報が見えてきた。
【ルナ】Lv.12 HP80/100 ( 神族)
《火魔力:2(上限 )》《水魔力: (上限 )》
《風魔力: (上限 )》《光魔力:2 (上限 0)》
《闇魔力: (上限15)》
《未解放特殊潜在能力: 》
《神の加護》
【デニス】Lv.32 HP95/100 (火神 )
《火魔力:45(上限60)》《水魔力: (上限35)》
《風魔力:1 (上限 )》《光魔力:2 (上限2 )》
《闇魔力:12(上限1 )》
《未解放特殊潜在能力:無し》
…なるほど。しっかりとは見えないけど、チラホラとは見えてきた…。
便利だな。チートって。
そうしてる内に建物に着いた。
ルーク「とりあえず家とかを確保して来ると良い!4番ゲートだ!異国の民だから支給されるはずだぜ!」
千智「わかった!本当にありがとう!!」
ルーク「おう!俺は基本的にここにいるからいつでも来いよ!!」
千智「わかった!」
そう言って俺とルークは建物に入る。
俺は言われた通り4番ゲートに向かう。
しかしその時、5番ゲートに見覚えのある人物がいた。
この先ずっと、忘れる事も無いだろうと思える人物が…。
考えるよりも先に口が動いてしまった。
千智「てめぇ…!!」
死神「…あ!!」
そう。俺を殺した死神だったのだ。
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