第4話 と言う事で、この謎バトル展開を開きます。

 …そうだ!!…これだ…!!

 俺は不覚にもここがシミュレーションの世界であり、痛みが無いって事に気が付く。



千智「反撃開始だぁぁぁぁッ!!」



 ゴーレムの脇に回り込んで拳をぶつける。しかし手先に何やら違和感を感じる。



 一方。ルークは和気藹々と男と話を続けていた。



ルーク「そういや、前にレベルが高い冒険者が言ってた【痛覚も追加してくれ】って話し、どうなったんだ?」


男「あ!あれはhardモードにだけ付けたぜ!とは言え、多少は軽減されてるけどな!!」


ルーク「なるほどな!確かに初心者向けにはしんどい設定だもんな!!」



ルークはとても良い笑顔で会話を弾ましていた。



 ……拳に強めのデコピン喰らったぐらいの痛みが走る。



千智「…え?」



 直後、ゴーレムの拳を喰らい吹き飛ばされた。そして痛みが俺を襲った。



千智「痛ってぇぇぇぇぇぇぇッ!!(涙)」



 ちょっ!!待って!!痛いぞ!!例えるなら世界で活躍しているプロレスラーのビンタぐらい痛かったぞ!!


 その時俺は地面に倒れたまま悶絶していた。



千智「洒落にならねぇ…!!…あ!!」



 そしてある武器が俺を救う。

 そう。死神の鎌だ。

 鎌を持ち構える。


 …って軽!!


 驚愕の事実だ。戦闘するのに構えると、以前よりも軽く感じる。…これなら敵無しだッ!!



千智「来いよ…デカぶ」


ゴーレム「ブォォォン!!」


千智「ひょえ…」



 嘘だろ…鎌がすっ飛ばされた…。

 待て、冷静になれ…俺の力…!!

 …やりたいことを連想する…!!そっか!!


 火に対して水の攻撃を仕掛けようと念じる。



千智「水の魔力水の魔力水の魔力水の魔力水の魔力ッ!!」


ゴーレム「ブォォォン!!」


千智「て、てあぁぁぁッ!!」


ゴーレム「ブボボボボ!!」



 震えながらもゴーレムの足に水魔力を出来る限り詰め込んだ拳をぶつけたが…


 …効いてる?何かよろめきながら後ろに下がっているぞ…!!


 …来たな…コレ…!!

 


千智「見せてやるぜッ!!真の反撃って奴をよぉぉぉぉぉぉぉッ!!」



 凄まじい勢いで走り出し水の魔力に集中する。

 今の俺は超最高の気分だぜッ!!後は俺の想像力を爆発させるだけだッ!!



千智「ウルティメイトアクアドレイクッ!!」



 スゴい…!!


 今の俺にこんな攻撃が出来るだなんて…!!しかもゴーレムに効果抜群だ…!!


 これはこれは…俺のアルティメット中二病ソルジャーが最高潮を迎えてしまうな…!!



ゴーレム「ブォォォン!!」


千智「動きが鈍くて助かったぜ!!」


ゴーレム「ブガァァァン!!」


千智「ボルテックウォーターグランドッ!!」



 連想した攻撃が次第に形になってきてやがる…!!これがチートってやつか!!


 しかし、直後に再びピンチを迎える。

 


ゴーレム「ブォォォン…。」



 さっきまで赤かったゴーレムの色が白色になって周りに覇気を帯びていやがる…。


 ……どう言うことだ?


 ……いや、そう言うの事だろ…。


 ………すんっません!調子に乗りました!!(涙)



ゴーレム「ブォォォン!!」


千智「ぎゃぁぁぁぁッ!!」



 ゴーレムの拳が再び地面にめり込む。

 考えろ…!!光の弱点…!!


 …闇ですッ!!


 即座に闇の魔力に集中する。

 だがこれは好都合。俺は元々闇とか火とかの方が好きであり、連想するのは得意なのだ…!!


 最強の反撃の開始だ…!!とか何とか言いつつ体の震えと冷や汗は止まらない。



ゴーレム「ブォォォン!!」


千智「サドンダークネスエクスフィアッ!!」


ゴーレム「ブボボボボ!!」



 ゴーレムは再び後退り、よろめく。


 …なるほど…!!


 一つ確信付いた事があった。

 俺の能力。つまりチート能力は、発想力が莫大に壮大であり、尚且つ具現化を鮮明にすれば即座にどんな攻撃でも撃てるのだ。

 ならば、遠距離からの攻撃も可能なんじゃないか…!!


 ゴーレムとの間に距離を起き、腕を目一杯前に出して手の平に力を集中させる。



ゴーレム「ガガガァァァッ!!」


千智「サイコネスブラッド…レボリューションッ!!」


ゴーレム「ブボボボボォォォォォッ!!」



 出し切れる限りの波動を手から撃つ。

 そして目の前が闇色の閃光に包まれゴーレムが爆発した。

 因みに、俺が言っているこの技の名前みたいなのは適当に言っているだけであり、たぶん、いや、普通に黙ったままでも何を言っても撃てる。


 …でも雰囲気って大事じゃん!(笑) 


 一方ゴーレムは片腕が無くなり全体的にボロボロになってもこちらに向かってきた。

 全くタフな奴だな。   


 …俺の火力が低いだけか。(涙)


 しかしさっきとは色が変わって真っ赤に発光し、蒸気がふんだんにブシューーーッ!!と音を発てながら出ている。


 …ヤバいんじゃないか…?これ。

 


ゴーレム「アンガァァァァァァァッ!!!」



 マジでヤバいな。シミュレーションとは言え、相手は相当マジギレしてる。

 それよりもさっきはプロレスラーのビンタぐらいで済んだけど、今のコイツの攻撃を喰らったら死ぬぞ。


 …エグくないっすか?


 エグいっすよね?


 とか何とか考えてる所にゴーレムの攻撃が飛んでくる。


      【ピヒュンッ!!】


 …何すか今の目から出たビームみたいなの…。

 足元を見る。そこにあったのは焼け焦げた匂いと共に目に入る超高温マグマの穴だった。


 ……………(涙)


 思わず泣いてしまった。またしても体の震えが止まらなくなる。



ゴーレム「ブォォォン!!」


千智「いやぁぁぁぁぁぁッ!!ルークッ!!ルーーーーークッ!!」



 その頃、ルークは軽く背伸びをしながら店の男と会話を続けていた。



ルーク「それにしても本当に静かだなぁ!」


男「当りめぇよ!!何たって防音システムもバッチリ!!部屋の中でどんな爆発が起きても聞こえてこないぜ!!」


ルーク「そうだな!!」


男「あぁ!監視する装置とかはまだねぇが、いきなりhardモードやって死んだり、部屋の中で厄介事起こす奴なんかいねぇだろえしな!!」


ルーク「hardモードをいきなり選ぶのは命知らずだな(笑)」



 ルークは楽しそうに男と笑っていた。



 ………チクショウ!!声まで枯れてきやがっ

た…!!

 あのビーム見てからどれぐらい叫んだか自分でも解らん…!!


 それと同時にとてつもない絶望感が襲ってくる…!!


 初めてだ…ここまで体が震えて作り笑顔すら作れないなんて…。


 …いやこれ読んでるお前等もあんなの見たら絶対にこうなるって!! 


 何か打開策を…打開策を…!!


 …クソ!!もう考えてる時間がねぇ!!



ゴーレム「ガァァァァァァァッ!!!」


千智「チクショウ!!こうなりゃ自棄(やけ)だ!!!」



 咄嗟に拳に力を込め、ゴーレムのデカい拳にぶつける。

 するとどうだろうか。拳にそれなりの痛みは感じたもののゴーレムがボロボロと崩れ始めた。


 何が起こったのかは正直俺にも解らない…。全身の震えが止まらない中でも冷静さを取り戻しつつ、ゴーレムを警戒しながら考える。


 …そう言えば…俺の能力に《打撃魔力》ってのがあったよな…!!


 そう言うことか!!


 理解した。一か八かの賭けに出た俺のパンチがゴーレムに痛烈ヒットしたのだ。

 奇跡と言って良いのか俺の力がよっぽどのものだったのかは解らんが、とにかく一体目のゴーレムは倒したみたいだ。


 …だが、問題はまだある…。



ゴーレム「ブォォォン!!」



 後ろにまだ二体いるのだ。

 次の一体は緑色に光っていた。

 緑って事は…風魔力の色…!!風の弱点…!!風の弱点…!!



ゴーレム「ブォォォン!!」


千智「これだッ!!」



 ゴーレムの攻撃に合わせて即座に横に退避する。そして先程の闇魔力の容量で火魔力を繰り出す。



ゴーレム「ブォォォン!!」


千智「エレメンタルバーニングッ!!」



 ゴーレムに向かって凄まじい熱気を帯びた火炎を放射する。



ゴーレム「ガガガァァァッ!!」



 それなりのダメージはあるようだ。

 自分で言うのもなんだがさっきの闇魔力よりも慣れている気がする。


 俺の表情に少しばかり余裕が出てきた。全身の震えも収まりつつある。



千智「パターンを掴めば…火力が少なくても何とかなるだろ…!!」


ゴーレム「グオォォォォ!!」


千智「グハッ!!」



 でもやっぱり攻撃を喰らうとマジで痛い。

 洒落にならんぐらい痛い。

 でも痛いからって引き下がってるとたぶん相手にやられる。シミュレーションと言えども死ねる。


 だから持ち前の根性で歯を食い縛ってでも立ち上がり、顔を引釣りながらでも必死に戦う。


 ……中学の時に武道をやってて良かった。改めてそう実感が沸いてくる。



ゴーレム「ブォォォン!!」


千智「チッ!!…ええと…何たらかんたらファイヤーッ!!」


ゴーレム「ガガガッ!!」



 一体目のゴーレムと同じく、戦闘タイプが変わり、緑色の発光が青色になった。


 となれば水魔力の弱点…!!


 …風魔力かッ!!


 見てろよ…!!最高の想像力でてめぇのボディに風穴開けてやるぜ…!!


 戦闘の構えを取り、技を出す体制に入った。



ゴーレム「ゴガァァァァァァァッ!!!」


千智「疾風しっぷうまい攻牙旋風拳こうがせんぷうけんッ!!」



 何もない宙の空間からゴーレムに向かって正拳突きをする。すると拳から鋭い風が放たれ、ゴーレムの腹部当りに大きな窪みが出来た。


 空手とかはやったことないし、人の事とかをろくに殴った事もない。だから何が正しいパンチとかは知らんが、それなりのダメージを喰らわせているのを見る限りだと、そこそこ形にはなっているんだろう。



ゴーレム「ブォォォン!!」



 しかしゴーレムはまだ倒れない様だ。

 さっきから技の名前出しながらインパクト強そうなの撃ってるけど、火力不足なのかゴーレムが固いのか定かではないが何か悔しい。


 少しガッカリとしながら体制を立て直しファイティングポーズでゴーレムに挑む。



ゴーレム「ガガガァァァッ!!」


千智「なッ!!」



 ずっと拳をぶつけてくるだけだったゴーレムが、急に岩石を思いっきり投げてきた。そして俺はそれを喰らってしまう。

 俺は地面に倒れてしまった。


 ……………………ッ!!


 一瞬気絶しかけた…。

 でも意識が朦朧としてる…。

 何だこれ…。

 初めてだ…こんなに重たい鈍痛を頭に喰らったのは…。


 …俺は一体何をしてるんだろう…。死神に殺されて…こんな世界でこんなシミュレーションして…レベルアップ?チート能力?何の為にこんな痛み抱えてんだよ…。


 何の為…?何の為………!!


 ………異世界物で斬新且つ新鮮味のある展開を作っていく主人公になる為だ…!!


 よろめきながら立ち上がり深呼吸をして意識を取り戻す。

 ゴーレムは腕をブンブンと振り回しながら助走を付けていた。

 …申し訳ないが…こんな所でお前みたいなシミュレーションに負けてる場合じゃねぇ…!!

 息が乱れて体はガタガタでも戦う意志だけは保ち、構えた。


 今の姿がどんなのかは解らない。周りから見れば腑抜けた構えなのだろうか?不細工になった顔をしているのだろうか?眉間にシワを寄せすぎて不自然な表情になってるのだろうか?


 関係ない…。今の俺にはそんな事なんか関係ない。

 今はただ…戦うだけだ…!!

 

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