第3話 と言う事で、まず先にすべき事を実行します。

 俺は葛城千智22歳!

 ある日突然死神に殺されて…って、いらねぇなこの下り。

 気になる人は第1話から読んでちょうだい(笑)


 さてと、イケメン役員からギルドの確認やら何やらに行くと良いって言われてその現地に来た訳であり、顎に手を置き、こうして壁に貼られたギルドの依頼書を見ている。


 …何のこっちゃさっぱり解らん。


 本来ならギルドを受けてレベルなり何なりを上げて仲間を増やすんだろうが、それはもう他の作品やらゲームでめちゃくちゃ見てきた。どれぐらい見てきたかと言うと、少年誌のバトルマンガでサブキャラが主人公に【やったか!?】と声を投げ掛けると大体笑いながら敵が無傷で出てくるぐらい見てきた。


 とりあえずどんなのがあるか…どれどれ。


【初心者向け!シミュレーションで経験値稼ぎ!】

【緊急!町外れに現れたバイオインセクトの討伐】

【上級者向け!インパイアデビルスコングを倒して高級食材をGETしよう!!】

【誰か俺と結婚してください。】

【高収入!たったの三十分間の間男の人と話をしているだけで稼げます!!(延長の場合にも十分に付き昇給!)】


 なるほど、全部は見てないけど、恐らく食料調達やら害虫駆除やらがメインって訳か…。


 ………平和だな。あのアホ骸骨が秩序が乱れまくってるって言ってたからてっきりクソ強い魔王とか魔獣がいるのかと思ったけど、たぶんこう言うので冒険者とか元々力を持ってる奴等とかが成し遂げて報酬金を貰って生活して調達してきたものを食べて生計立ててるって感じか…。


 うん。いっぱい見てきた。どれぐらい見てきたかと言うと、少年誌のバトルマンガでサブキャラg

 とりあえず何をしたら良いんだろうか。



男「あれ?見ねぇ顔だな。新入りか?」



 唐突に話を掛けてきたのは、肩、前腕、腰、脛に鎧を付け、金髪の天然パーマで推定身長175cm程の脱いだら凄そうと言う言葉が似合いそうな好青年と言っても良いレベルのイケメンだった。


 その人にここまで来た経緯を話した。すると優しげな顔をして接してくれた。



男「なるほど。異国の民って事か!俺はルーク!よろしくな!ルークって気軽に呼んでくれ!」


千智「はい!俺は千智っす!よろしくっす!!」


ルーク「かしこまるなよ(笑)ところで千智。異国の民って事は、まだ初心者だよな?」


千智「あ、そうだね!(笑)」


ルーク「ならその初心者向けの経験値シミュレーションに行くと良い!!」


千智「これ?」


ルーク「あぁ!俺も一緒に行ってやるぜ!」



 ルークはそう言うと俺を連れて外にあった体育館の様な少し古くてどこか懐かしい感じのする建物に案内してくれた。


 中は中々広く、入るとそこには受付の様なカウンターが一つあり、周りは洋風な壁紙と軽いオブジェだけで、他には音も何もなかった。


 受付に近付くとカウンターにいた一人の小太りで威圧感のある三十代ぐらいの男がルークに話し掛けてきた。



男「おう!ルークじゃねぇか!」


ルーク「よう!元気そうだな!」


男「おうよ!…ソイツは?」


ルーク「コイツは千智!聞くところ、異国の民らしい。初心者だから経験値シミュレーションに連れてきたって訳だ!」


男「なるほど!よろしくな千智!」


千智「あ、はい!どうも!!」


男「じゃあ早速だが、これを付けてこの奥にある8番の部屋に入ってくれ!おっと、初回はタダだから安心してくれよな!」



 そう言って男は俺に少し大きめだが重量はそれ程感じないぐらいのVRゴーグルの様な物を渡してきた。


 …そっか、シミュレーションならこう言うの付けるよな。 

 そして案内通りに奥にあった8番と書かれた個室に入った。しかしそこは広い真っ白の空間、大体横に20m、縦に30m、天井まで50mぐらいあるかなり広い部屋で、俺がここに来る前に行った死神がいた空間を白くしただけの様だった。


 ………いかがわしい店じゃねぇよな…?


 まぁ何事もやってみないと解らないが、初回無料はクソありがたい。

 今思えば俺はここに来たばかりの言わば初心者の駆け出し冒険者。金やらその他を持ってなくても当然だ。ましてや、服装は生前のままのリア充爆発しろTシャツとジーンズのみだ。


 ゴーグルを付けてゴーグルの横にある電源ボタンを押す。すると目の前に仮想空間が広がり、立体音響で女性ガイドの声が聞こえる。



ガイド「シミュレーションへようこそ。これより貴方には仮想空間を使った体験型シミュレーションバトル、【レベルアップバトル】に参加していただきます。まず、難易度を選択してください。」



 難易度を選ぶ?どうすれば良いんだろ。とりあえず目の前には

       《easy》

      《standard》

       《hard》

 と書かれた文字が浮かんでいる。

 ……どうしよ。操作が解らん。

 まず何をすれば良いの?ボタンとか無いし…。

 戸惑いながらも俺は適当に手を振ってみる。すると目の前に人間の手に見立てた腕が出てきて俺の動きに合わせて動き出す。

 そしてガイドが喋りだした。



ガイド「…hardモードですね。こちらの難易度はとても難しいものとなっておりますのでお気を付けてプレイしてください。」



 ………今何て言った?【hardモードですね。】って言ったのか?

 不味い、口元が緩みながら震えている。額から冷や汗すら流れてきた。

 そんな俺をもろともせず、シミュレーションは進んでいく。そして目の前には赤く流れるマグマ。それにマッチングするような黒い空、赤黒く嫌な光を放っている岩石がいくつもあり、その向こう側に3体の真っ赤なゴーレム。それも身長5m越えの巨体だ。これに加えて熱そうな景色が広がる……待て、何かこの部屋熱くないか…?しかも焦げ臭い…!!

 


 一方。ルークは椅子に座りお茶を飲みながら和気藹々と受付の男と話をしていた。



ルーク「ここのシステムは相変わらずなのかぁ?」


男「そりゃそうだ!何たって俺の所のシミュレーションは世界一!難易度も選べてその中でもhardモードは最高に難易度が高い!それ一つでもクリアすればめちゃくちゃな経験値が手に入るんだぜ!!そ・れ・に…!!最近取り入れた温度変更システムと感覚変更システムによって体感温度が上がったり感じる匂いやら何やらが変わったりするんだぜ!!」


ルーク「おぉ!!随分とスゴくなったなぁ!!千智もレベルアップ間違いなしだな!!」



 ルークと男はとても良い笑顔で話をしていた。

 


 千智「やべやべやべやべやべぇ…!!どうしよう!!」



 その頃、俺は物凄い勢いで体の震えを発し、前歯をガタガタと鳴らしていた。

 周りから見れば非常に情けなく惨めで不格好な男だろう。だが今はそんな事を気にしている場合ではない。


 マジでヤバい。どうしよう。そうこうしてる内に一体のゴーレムがこっちに向かって思いっきり走ってきた。その姿はまるで数日間何も食べていない獣が目の前にある食料を狙っている様な走り方だった。…いや、そんなの見たこと無いけどさ!!


 その目の前のゴーレムが拳を握り締め勢い良く俺を目掛けてパンチをしてきた。



千智「う、うわぁぁぁぁぁッ!!」



 思わず叫びながら横に飛ぶ。

 随分と腑抜けた声だと自分でも解る。だがそんな事を言っている場合ではない。

 そのゴーレムが殴った地面を見た。そこには直径1mを越えるぐらいのクレーターが出来ていた。


 …やべぇ。漏れたかも…。


 自分が情けなくて仕方無かった。…いや無理もないってこんなの!!!

 ゴーレムは再び俺に牙を剥く。表情は解らないが、とにかく凄い威圧だ。

 俺は後ろに後退る。しかし何かに背中が当たる。俺は振り返りシミュレーションの景色を見る。そこには赤黒い景色が広がっているだけだった。


 ……壁だッ!!


 おいおいおいおいおい嘘だろ!?逃げる場所もねぇじゃん!!(涙)

 目の前には拳を振りかぶるゴーレム。後ろにはシミュレーションとは全く関係ない壁。


…終わった。


 いや待てよ。シミュレーションなんだよな…!!だったら…!!


 俺は思い付いた。このタイミングでゴーグルを外せばもう一回やり直せるかゲームオーバーとかになるだろ!!と。

 半泣きで体を震わせてる俺はゴーグルを外そうとする。だがゴーグルが外れない。


 …何でだ!?


 …あッ!!電源ボタン!!


 次に電源ボタンをガタガタと震える指先で押す。次の瞬間、視界の左下に小さく文字が標示される。

《このシミュレーションはリタイア、やり直しは出来ません。自身のHPが0になるか一時間以上の長時間稼働による機械の自動休止をお待ちください。》


 ………は?


 な、何これ…言葉ってこんなに難しかったっけ? 


 待て…!!だったらドアを開ければ…!!


 壁を伝うと運良くすぐにドアノブの感触を感じた。そしてドアノブを回す。


 …あれ?開かない?


 頭の中がこの部屋の様に真っ白になる。

 半泣きになった俺はドアを叩く。するとガイド音声が流れる。



ガイド「シミュレーションが終了するまでは、部屋の鍵は解錠されませんので、ご注意ください。」



 ポカンと口を開け、絶望に浸った目を見開き冷や汗と共に涙と鼻水が流れてくる。体は相変わらずガタガタと震えているままだ。 



ゴーレム「ブフォォォォォン!!」



 何だよそのSE!!

 …いや…まだ策はある…!!

 そうだ…!!これだ…!! 

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