第2話 と言う事で、俺は飛ばされました。
よう!!俺は葛城千智22歳!
前回俺は死神に殺された末、散々な目に遭って謎の異世界に飛ばされちまったんだ!!
さぁ…これからどんな冒険が待ってるんだ…!!
………下らん御託はここまでだ。って事で、クソ死神とアホ骸骨の手によってこの目の前にある巨大なゲートが聳え立っている世界にぶっ飛ばされちまった。飛ばされる前に俺は死神と骸骨に【俺の望む事が何でも出来る力。】ってのと死神の鎌とパンツを要求した。鎌とパンツは今手元にある。つまり、ちゃんと望んだものをくれたって事だな。
…と言うことは、だ。俺が言ったチート級の力もあるんじゃねぇかなって事を考えながら10分近くこのゲートの下で瞑想していた(笑)
……とりあえず、ゲートの中に入ってみる…か。
ゲートの下に着いた俺はふと上を見上げる。そこには何て書いてあるか解らないような文字が書いてあった。
本当に力を貰ってるなら…俺がやりたいことが出来る…か。
その文字を見つめながら【あの文字を解読しろ…あの文字を解読しろ…。】と心で唱え続ける。するとものの数秒でその文字が何て書いてあるか解った。
【イヴェンタ】
イヴェンタ?この世界の名前か?…って言うか、マジで力貰ってんじゃん。今こうして冷静を装っているが内心めちゃくちゃビックリしてる。だって、今俺は文字が読みたくて集中していた。それがどうだ?本当に読めちまった。
………………スゲェェェェェェェッ!!
ガッツポーズを体制低めに取って豪快な顔で喜ぶ。
色々な事を試したいが、今はこの世界の事を知るのが先手だろう。…とりあえず入るか。
ゲートを潜った瞬間、兵士の様な甲冑を付け、鋭い目付きの男二人組に止められた。
兵士「誰だ?」
千智「えっ、いや、葛城千智です。」
兵士「は?」
千智「いや、葛城千智です。」
兵士「異国の民じゃないのか?クソだせぇ服着てるし。」
兵士「なるほど。おいどこから来た?」
千智「えっと、日本です。」
兵士「…やはり異国の民か。よし、まずはあそこに見える旗の立った建物に行って手続きをしてこい。」
千智「…うっす。」
初めての世界と言う事もあり、少々動揺している。しかし特に揉め事も無く、ただただ建物に言ってこいと言われただけだったから俺は言われた通り建物を目指して歩く。
…だせぇはねぇだろだせぇは。このシャツはあれだぞ。イベント限定の【リア充爆発しろ】Tシャツなんだぞ。
それより、この世界の光景を見て驚きが隠せない。口をあんぐりと開けた状態で思わず眺めてしまう。
手を使わずに火を起こしているおっさん。指先でヒョイと操るだけで洗濯を干している人妻(推測)。デコピンだけで薪を割っている青年。クシャミをした瞬間、勢いで空中に吹き飛ぶ子供。
これは現実か?俺は夢を見てるんじゃないだろうか?試しに腕をつねってみる。
………クソ痛い。
そうこうしてる内に建物に辿り着いた。そして建物に入る。するとそこは先程と同じく驚きが隠せない光景が広がっている。
壁も無いのに表示されている文字や、板の様な物に乗って浮遊している役員、めちゃくちゃ筋骨隆々なのに虫にビビりまくっている男。
千智「何だよここ…!!」
役員(男)「どうされましたか?」
その光景を見つめる俺に高身長で黒髪の爽やかなイケメン役員が優しい声で話し掛けてくれた。
千智「いや、あの、初めてなんですけど…」
役員(男)「かしこまりました。ではそこに見える5番ゲートの役員の所へ向かってください。」
そう残しニコりと笑うとスラリと長い足を綺麗に揃え、元いた2番ゲートに歩いていった。
…イケメンだ。俺が女なら堕ちてただろ。正直羨ましい。
言われた通り5番ゲートに向かう。しかしそこにいた役員はさっきの爽やかイケメン役員とは正反対で、少しボサついた茶髪にヨレヨレでボタンをしっかりと閉めていないカッターシャツ、顔とスタイルは悪くは無いが、十秒に一回ぐらいのペースでクソダルそうにアクビをキメている女役員がいた。
…何だコイツ。
元々そう言う類いの人間が好きではなかった。いや、好きな人なんかいないと思うけど。
少し目尻を上にあげ拒絶の顔をしていると、女役員がダルそうに話し掛けてきた。
役員(女)「ん~?何?何か用?」
何だその態度は…!!何処と無くあの死神に似ている…。って考えると無性に腹が立つ。
だが、腹を立てていても仕方がない。額に表示された《💢》マークを浮かべたまま作り笑顔で女役員に先程の爽やかイケメン役員が言っていた事を説明する。
役員(女)「あ~、能力の測定ねぇ~。じゃそこの円の中に入ってぇ。」
相変わらず気ダルそうな態度だな。
案内通りに5番ゲートの横にある赤く人が一人収まるぐらいの円形の線が引かれてある場所に立つ。すると円の線上から俺の頭の先に掛けて円形の光がゆっくりと走る。
《ピピピッ!》
恐らく測定が完了したんだろう。それっぽい音が鳴る。直後、ついさっきまでアクビをキメていた女役員がいきなり叫び声を発した。
役員(女)「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
正直ビビった。
女役員を凝視していると、さっきの爽やかイケメン役員が驚いた顔をしてこちらに向かって走ってきた。
役員(男)「ど、どうかされましたか?」
役員(女)「どうもこうも見てよこれ!!」
役員(男)「これ…ってえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」
…何をそんなに驚いてるんだ?今のあんた等はまるでギャグマンガに出てくるキャラクターが驚いた時みてぇに目玉ガン開きにして鼻水垂らして口がこれでもかってぐらい開いてんぞ?
何をそんなにアホ面こいてんだ?
役員(男)「この能力値は…!!」
役員(女)「私が見てきた能力値でもこんなのは見たこと無かった…!!」
千智「あの、一体何を…」
俺が口を開くとイケメン役員が冷や汗を流し、めちゃくちゃ真剣な顔をして俺に説明してくれた。
役員(男)「い、良いですか、葛城千智さん。」
千智「え?あ、はい。」
役員(男)「まずは僕の能力値を見ていただきたい。」
イケメン役員は右腕に付けてあった四角い液晶パネルの様な物が付いた腕時計型のブレスレット?を見せてくれた。
直後、その液晶からブォン。と音が鳴りブレスレット上部空中に大体A4の紙を横にしたぐらいのサイズのモニターが表示され、そこにはこう記されてあった。
【リガルス】Lv.35 HP67/100 (風神族)
《火魔力:5(上限30)》《水魔力:10(上限30)》
《風魔力:25(上限50)》《光魔力:10(上限25)》
《闇魔力:2(上限10)》
《未解放特殊潜在能力:無し》
千智「何すか?これ?」
役員(男)「これはこの世界の住民が付けている能力値を確認為の装置で、僕は《風魔力》の使い手なのでこの能力が高く、未解放の能力はもう無いって言う事を表しています。」
千智「未解放?」
役員(男)「はい。大抵の特殊な力を持つ者は、この未解放特殊潜在能力と言う欄に何らかの力が表示され、基本的には一つか二つで未解放特殊潜在能力は無くなります。ですが…」
イケメン役員は俺の腕に同様の装置を付け、同じ手順で俺に俺自身の能力値を見せてくれた。
【葛城千智】Lv.1 HP57/∞ (異国の民)
《火魔力:1(上限∞)》《水魔力:1(上限∞)》
《風魔力:1(上限∞)》《光魔力:1(上限∞)》
《闇魔力:1(上限∞)》《打撃魔力:1(上限∞)》
《未解放特殊潜在能力:不明》
《解読能力》
千智「…はい?」
役員(男)「我々の能力やHPに上限があるにも関わらず、貴方の能力値、HPには上限が無い…。それに未解放特殊潜在能力も不明で、何より今だかつて見たこと無い《打撃魔力》等と言う能力までもが表記されています…。どう言うことだ…。」
イケメン役員は相変わらず冷や汗を流し、真剣な顔をして俺の能力値を見つめていた。
そんなにスゴいのか?
………いや、スゴいだろ。全体的に見ても上限が無くて未知の能力まで付いてる。
………あの死神と骸骨…。
ここに来て初めてあの二人に感謝を覚えた。
そんな事を考えているとイケメン役員が笑顔で俺にある提案をしてくれた。
役員(男)「貴方程の能力の持ち主であればきっと上位ランクの能力者や冒険者にすぐに追い付けるでしょう…!!」
千智「あ、はぁ。」
役員(男)「そこにギルドの依頼書等が貼られてある部屋があります!そこに行ってみてください!」
いや待て、このパターンはあれだろ。ギルドを確認しに行ったら他の冒険者とかと仲良くなって仲間フラグが立つやつだろ。
…勘弁してくれ。これ以上既視感のスゴい展開を開くのは…。
それに、まだ俺も自分の力を知らないし慣れてもない…。展開を変えていくにも無理ってものがある。
額に手の平を付け、ため息と共に重い足取りを進める。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます