第103話 隠し味(9月26日)

 テレビ東京のドラマ「孤独のグルメ」の九期目が最終回を迎えた。

 取り上げるのが少々遅くなってしまったが、本作らしい終わり方であったのではないか。

 ただ一人の男が食に向き合い、店に向き合い、己に向き合う。

 そこには本来劇的な要素など存在しえず、手を合わせて箸を取り、再び手を合わせるまで穏やかな時間が流れるのみである。

 書き並べてみると主演の松重氏が以前語られている通り、何が面白いのだろうかと思わざるを得ない。


 敢えて理由を探るのであれば、その起伏の無さが今の時代に調和していたのだろう。

 少なくとも種々の刺激に溢れる一日を送った後に、ただただ頷きながら飯を食う姿を見るのは心地よい。

 頭の中で雄弁に語り、眉間で渾身の演技もされているのだが、主軸はあくまでも変わらない。

 それがいかに尊いことか……このような時節だからこそ強く感じてしまう。


 否定することは容易な事であり、それは時に人を酩酊させるほどの刺激を与える。

 私も時に飲まれてしまい、自他を傷つけてしまう。

 だからこそ、頷くというのは難しいことであり、それを思い出させてくれる存在というのは有難い。


 今期は終わってしまったが、果たして次作はあるのだろうかと主演の松重氏の年齢を拝見しながら考えさせられる。

 とはいえ、その姿を見たいという思いは変わらず、次なる出会いがどのようなものであるのか期待して止まない。


【本日の出来事】

◎照ノ富士 新横綱で優勝

 あまり稀勢の里以来という言葉が独り歩きすると、早々と引退してしまいそうで怖いのだが、しっかりと務めを果たしたことは確かである。

 それに対して大関は……という思いはないでもないが、そうしたものを晴らしたのも新横綱の一言である。

「土俵の上で頑張っている姿を見せるのが、お相撲さんの仕事」

 含蓄に富んだ優しい言葉である。

 真摯に土俵へ向かう力士の姿をまた見たいと思わせられた。

◎ドイツで総選挙の投票始まる

 長きに亘ってドイツを率いてきたメルケル首相が退くということが取りざたされているが、日本であればこれほどの長期となれば独裁と言われるのだろう。

 長期政権といえば小泉元首相や安倍元首相の名前がさっと浮かんで来るものの、これを足しても届かぬのだから驚かされる。

 ただ、長期政権には問題もある代わりに対外的な安定を得ることができる。

 果たして今後のドイツがどのようになるのか、安定を得られるのか、見ものである。


【食日記】

朝:ヌク

昼:鯛のひつまぶし、あおさと鯛の味噌汁、串カツ、太刀魚の塩焼、梨のゼリー

夕:赤ウィンナー、馬肉炒め、どん兵衛鴨出汁蕎麦

他:おーいお茶

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