第97話 武士は食わねど高楊枝という泰平(9月20日)

 この週末で合わせて六百キロほどを車で走り込んだのであるが、これほどに走り込んだのはどれくらいぶりのことであったろうか。

 ほとんどは景色を眺め、一人で走り回るだけであったのだが、一日目の最後にガス欠を起こしかけたというのが私らしい。

 結果としては無事に大通りまで出ることを得、難なくロードサービスに助けていただくことができた。

 助けられては無事ではないだろうと言われてしまいそうだが、山の中であれば間違いなく電波も届かず身動きも取れずという形で終わっていたことだろう。

 いやはや余裕のある給油を心がけねばと帰り道で反省したのは言うまでもない。


 補給を無視しての強行というのは個人でも危険なものであるが、集団ともなればそれは破滅へ向かう道のりとなってしまう。

 後が続かぬような戦いを仕掛ければ後はやせ細り、潰えていくより他にない。

 たとえ優秀な兵士が前に控えていたとしても同じことであり、戦うどころか生き残ることすら難しくなる。


 これを戦時中の日本の光景として過去のものと捉えるのは個人の自由であるが、少子高齢化というのはこれと全く同じ状況ではなかろうか。

 人的資源という考え方をすれば、その供給が途絶えてしまえば社会の維持はできなくなる。

 コストカットによる一時的な戦術的勝利はやがてエジプトを抜けなかったロンメル将軍と同じになってしまう。

 そのようなことを思いながら、まずは助かった自分の身に胸を撫で下ろしつつ、コンビニの放つ煌々とした在り方を呆然と眺めていた。


【本日の出来事】

◎照ノ富士に土 大栄翔金星

 カーラジオで耳にしながら、思わず声を上げてしまった。

 これだけ相撲で興奮したのはいつぶりだろうかと思ったが、よくよく考えてみると先場所の千秋楽も同じ興奮を覚えたのを記憶している。

 番狂わせが面白いのではなく、力士同士のぶつかり合いが愉しいのだと同時に思い知らされる。

 館内を静かな熱気で包む闘志溢れる取り組みを、これからもぜひ期待したい。

◎あいりん地区 日雇い三割減

 セーフティーネットが縮んでいくのは非常に危険なことである。

 先日、ホームレスに心無い言葉を駆けた人物が話題となったが、情けは人の為ならずである。

 こうして私が三食に――というと誇張となるが、ありつけるのも単に幸運が重なってのことである。

 自らの不運を信じるからこそ、幸運に溺れることのなきよう注意深くあろうと思う。


【食日記】

朝:ファミチキ、抹茶ラテ

昼:二色ざる蕎麦(田舎、更科)、ご飯、沢庵、和風オムレツ、きつねそば

夕:いりやき鍋、日本酒

他:おーいお茶

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