第77話 三段腹にならぬよう気がける齢となりにけり(8月31日)

 豚の三枚肉といえばどうしても角煮などにしてしまいがちであるが、スライスにすれば様々な利用法が思い浮かぶ。

 串に刺して炙れば焼きとんになるが、これは序の口で、野菜炒めや煮物にも合わせやすい。

 うどんと合わせることなども考えられ、その脂の持つ旨味が出汁となり見事に料理の懐を深くしてしまう。

 食日記の方で書こうとしたのであるが、長くなりそうであったのでこちらで堂々と書くこととした。


 それにしても夏のこの時期を乗り切るには活力が必要となるため、豚肉というのは何とも心強い。

 獣肉に馴染みの薄かった江戸の武士さえ薬食いと称して口にしていたというからその効能は以前より折り紙付きであったのだろう。

 食日記で一時期とんかつが頻出したのを覚えている方もいらっしゃるかもしれないが、備えるとなると牛で、戦うとなると豚の方がより身体に効く。

 どこぞの少女よりなんてことを、などと後ろ指をさされてしまいそうであるが、そのような罵詈雑言に負けていては世間の荒波を耐えてはゆけぬ。

 堂々と肉に食らいつくこととしよう。


 話が逸れてしまったが、この三枚肉を使う上で最大の問題点は切り分ける必要があるというところである。

 豚バラのスライスを用いるのが一般的なのであろうが、それではあの独特の歯ごたえと油の溶けだしを楽しむことができない。

 程よく五ミリ程度に切り分けて用いると、焼き豚でも角煮でも味わえぬこの三枚肉の底力が堪能できる。

 これが手間なのであるが、その手間の先が極楽であれば避ける訳にもいくまい。


 簡便というのは何とも頼もしい言葉であり、疲労に心労の重なる日々においてこれほど有難いものはない。

 ただ、時にはそうしたものを脇に置き、手間をかけるというのも悪くはない。

 そうした中に今の徒然があり、忙中に閑という言葉が輝く。

 それを野菜炒め用カット野菜の空袋を眺めながら書く。

 これもまた徒然である。


【本日の出来事】

◎「水道屋本舗」に業務停止命令

 一人暮らしをする中で得た知見に、水道の工事トラブルを避けたければ落ち着いて管理会社や自治体の紹介する業者に当たれと聞いたことがあるが、その問題を文面で目の当たりにすると中々に衝撃的であった。

 どこか眉唾のように思っているところがあったのかもしれないが、事実は小説よりも奇なりと言ったところであろう。

 それにしても、このような業者に業務停止命令がどの程度有効であるのか、疑問が残る。

◎こだまに「子連れ専用車両」 JR東海

 飲み屋であれ、乗り物の中であれ、小売店であれ私は子供がいることに然程の抵抗は感じないらしい。

 むしろ、子供の声が街から消えたことに不安を感じ、それを書き起こしたことすらこのコロナ禍においてはある。

 子供ははしゃぐのが仕事であるし、大人はそれを見守るのが仕事と思っているのだろう。

 駅構内で気炎を上げる酔っぱらいや車内で大鼾をかく呑兵衛に比べれば可愛らしい。

 これを自省という。


【食日記】

朝:ヌク

昼:月見そば

夕:牛丼(肉だく)、大根と豚三枚肉の甘煮、日本酒

他:おーいお茶

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