第70話 夢路の飯(8月24日)
旅先で頂く食事を考えるとき、その土地の名産品をいただきたいという気持ちが以前は強かったものであるが、最近はもう少し柔軟になったような気がしている。
とはいえ、ここ一年半ほど関門海峡を越えたこともないため、どこまで信用できるものかは不安であるが、少なくとも昔はバタバタと名産品に首を突っ込んでいたように思う。
転職先を探すべく熊本を訪ねた際も帰りに辛子蓮根を食べたものであるし、大阪で当時はアレルゲンと考えていたためタコ抜きのたこ焼きをいただこうとしたほどである。
それが今では湯布院で福島の食を楽しんだり、福島では場末のおでん屋で長崎の話題を聞いたりとその地の方が味わう食を楽しむようになってきている。
全てがそうという訳ではないが、選択肢の幅が広がったというのは確かであり、以前のように飢えた獣のような尖り方はなくなった。
路地に一つ入るだけで、観光客向けの店から離れられることも多く、そこに躊躇いなく入るようになったのはやはり酒の力が大きいのかもしれない。
酒に酔って縛られる私はその対価として好き勝手に飲み回るという自由を得たのかもしれない。
それと同時にそのような自分への自己陶酔にふりまわされているのかもしれないが、人に迷惑を書けぬ限りはそれもまたいいものだろう。
地の名産を味わうのも楽しいが、その地の人の話を色々と伺えるというのは、思わぬ話を伺えるというのはそれだけで酒が旨くなる。
旅の醍醐味と言っても差し支えあるまい。
そのような旅にまた出たいものであるが、今は状況が許さぬ。
せめて心の旅をと彷徨うばかりであるが、その一片が文字として湧き上がってくるというのはいよいよ心して耐える時期が来たということだろう。
【本日の出来事】
◎東京パラリンピック開幕
開会式のスピーチを多く語る必要もなかろうが、それでも、橋本会長の「初めて同国で二度の夏季パラリンピックを開催した」という一言には少しうち震えた。
間近で観戦するよりも、この意義を子供に説明しながら賛否の意見を説いた方が余程に教育上よろしいのではないか。
ただただ、精一杯の熱戦を期待するばかりである。
◎新横綱照ノ富士 明治神宮にて土俵入り
一つの時代の幕開けと単純に喜ぶことができた小中学生の頃とは異なり、今は一つの時代の終焉が近づいているという寂寥感の中にいるのは私が年を取ったということか。
思えば稀勢の里が横綱に昇進した際も喜びと同時に寂しさが湧き上がってきたものである。
横綱にはただ二つの道があるのみである。
常に強くあれ、と願うばかりである。
【食日記】
朝:ハンバーガー
昼:おにぎり弁当、鶏南蛮そば、野菜ジュース
夕:茄子とひき肉と高菜のパスタ、ウィスキーお湯割り2、ブランデー漬け生クリームどら焼き
他:おーいお茶
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