第66話 少しばかり心付けを(8月20日)
ここ暫くは外で飲むこともできぬため、家でしっぽりと晩酌を重ねているのだが、そうした時に池波正太郎氏のエッセイは非常に心強い。
今は望めなくなった美味もある中で、一定の世界観が広がるというのは流石の一言に尽きるが、それだけで目の前のしがない食事も少し艶を帯びるように思える。
江戸とは違い、そう遠くはない過去のはずであるが、私が生まれる前ということもあり、どこか一枚の絵画を見ているような気分である。
ただ、ひとつだけ気になるのは「安い」という表現である。
無論、旨い飯が安くで頂けるのであればそれに越したことはない。
余裕のあるほど給与のある生活など夢のまた夢であり、食日記を見ていただければ分かる通りその日の気分に合わせるとは言っても、カップ麺が昼の定番である。
一品おまけでつくとなれば飛び上がってしまい、とても平生ではいられなくなってしまうほどである。
池波氏も、器量を尽くした先の一品の値に対して恐らく感動しているのであり、それ自体はおかしな感動ではない。
しかし、これを字面の通りに受け取ってしまい、ただただ外食を高いものとする方が出てこないか不安である。
そも、仕事とは対価であり、それがなければ相手も心を尽くしての持て成しなどしようはずがない。
下手な値切りなどは特にそれを促してしまいかねず、私も可能な限り避けるようにしている。
流石にあまりの商品に出くわした際には白旗を揚げそうになってしまうが、幸いなことにそのような事例は少ないため助かっている。
公務員に対する仕事もまた、同じではなかろうか。
我々の税金で働いている以上、という声も聞こえてくるかもしれないが、共に貧しくなる必要はないのである。
むしろ、気持ちよく使ってもらって金を還流させてもらった方が、余程我々に戻ってくるものも多くなる。
不正や汚職などが目についてしまいがちであるが、全ての企業において民間が澄み渡っているという訳でもない。
繰り返しに近くなるが、共に金持ちとなるよりもともに貧しくなる方が容易である。
彼らへの正当な報酬こそが余剰を作り、それが周りにゆとりも与える。
外食すらままならなくなった役場周りの食堂に閑古鳥が鳴くように、私達の生活にもその影が差すのはいただけまい。
【本日の出来事】
◎熊本県下 初のコロナ自宅療養者死亡
目を引く表題で読者を得ようとするのは新聞でも本でも同じであるが、本件の場合には入院に切り替えようと保健所が打診したところ、飼い犬の世話の都合がと断ったそうである。
誰にも預けられぬ孤独感というのはあるのだろうが、死んでしまえば以後世話する者もいなくなってしまう。
せめて残された犬が無事であることを、祈るばかりである。
◎たけのこの里 商標登録
きのこの山の方は登録されていないようであるため、これまた一つの火種になるのだろうなと苦笑してしまった。
それにしても、お菓子の意匠というのは商標登録があまりないということで、第一にそれに驚かされてしまった。
明らかに個性的な造形をしていると思うのだが、私だけだというのだろうか。
◎笑福亭仁鶴師匠 死去の報
これで尖り切ってしまった世の中のいざこざを、丸く収めて下さる方がいなくなってしまった。
ご冥福をお祈りする。
【食日記】
朝:ヌク
昼:ヨーグルト、おにぎり弁当、鶏南蛮そば、野菜ジュース
夕:マカロニサラダ、チキンカツ、ウィスキーお湯割り3
久しぶりに揚物をしたのだが、多目の油で焼いたと言った方が正確であるかもしれない。
ポット式の鍋で揚げているため油の跳ねも少なく、片付けも快適であった。
これならば揚物も繰り返せると自信を得たのだが、腹の肉と相談しながらにはなりそうである。
他:おーいお茶、リポビタンD
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