第62話 地獄への道は善意で舗装されている(8月16日)

 悪事を試みる祭典が終わった。

 私は「熱帯夜に冷房を利かせて熱い肴で冷たい酒をやる」という悪事と「ノンアルコースビールにアルコールを添加する」という悪事を働いたが、この解釈が人によってまちまちであったのが非常に面白かった。

 そもそもからして肝臓に悪いのが私の作品であるため、それは今回差し引いてあるのだが、我ながらもう少し良い案はなかったのかと思ってしまう。


 それにしても、悪事を謳いながら善事を働くことを悪事とする動画も散見されたが、これもまた人の在り方として面白い。

 人は悪事と共に善事を成すものであるのだが、いざ悪事を定めて成そうとするとき、中々心に思い浮かばぬものである。

 これを性善説の表れとするのが、そも性善説にある人間の妄言なのであるが、その実は悪意というのは人に言われて擡げてくるものではない。

 あくまでも、自然発生的にこれを成そうという思いが湧き出てくるものであり、豊富な知識と経験があってこそ初めて意図的に成すことができる。

 つまり、思考の訓練が必要であり、人はそう簡単に悪一辺倒となることはない。


 それは一方で、人というものが容易に悪の道に進みうるということを示すものでもある。

 一つのきっかけで悪の直感が経験の海から引き摺り出され、それに突き動かされてしまった時、人は悪という蠱惑的な道を進む。

 私も経験がないとは言わない。

 そして、私に石を投げられる人がそう多くはないことも知っている。

 だからこそ、大切なことはその道を水から切り離せたかではないかと思う。


 とはいえ、物書きとなってからの私は善という道を外れようとしているため、ある意味では悪の道を進み続けているのかもしれない。

 そうなると、後ろ指差されるというものであるが、なに、善というものの正体が私には魑魅魍魎の先に見えぬためそれもまた楽しく感じている。

 このままでは地獄に行くことはできず、つまらぬ世界に至るやも知れない。


【本日の出来事】

◎東京エレクトロン最高益を公表

 半導体事業が好調とのことであるが、ここ一年の潮流を見ればさもありなんと頷かざるを得ない。

 ただ、盛者必衰は世の常であり、いずれ繁栄は過去のものとなる。

 無論、それが今の私に想像できるかと言われれば難しいと答えざるを得ないが、その夢が泡沫のように消え去ったことを知る私は、結果だけは想像せざるを得ない。

 その時、どのような営業を進めていくかを考えるのは企業の仕事であり、私はそれを傍観して酒の肴にするのみである。

◎名古屋市長 給与三か月カットへ

 給与を貰わぬということは、その間の仕事の責任を負わぬということである。

 

【食日記】

朝:スナックサンド(たまご)

昼:飲み干す一杯京都醤油ラーメン、梅ひじきおにぎり、酢鶏、野菜ジュース

夕:茄子と高菜の和風スパゲッティ、卵かけご飯、ウィスキーお湯割り3

他:おーいお茶

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