第7話 テレビを捨てて世捨て人(6月22日)
思い返してみると、私が自宅でテレビを見るという習慣を失ってから十年ほどが経つ。
就職をして実家を離れた際にテレビを買い求めなかったところから始まるのであるが、初めこそ少々の不安を感じていたものの今ではすっかりその生活が馴染んでしまっている。
無論、これには環境の変化もある。
私が就職した頃に比べて定額で見られる映像作品も増えており、リアルタイムを訴求しない限りはおよその出来事を後追いすることができる。
唯一、大相撲中継だけはその瞬間を見たいと思うことがあり、時に宿や街頭の大型スクリーンの映像を見に出かけることもあった。
それさえもインターネットで見られることを知ったのはつい最近のことである。
広島の街角で固唾を飲んで白鵬・稀勢の里戦を見守ったのも今では懐かしい。
さて、このような話をしているといつもの偏屈が始まったと周りから思われるようであるが、そうした好奇の視線にも慣れきってしまっている。
このテレビ離れの本質はテレビというものさえも天秤に乗せて必要性を量るという姿勢から生じている。
まず以って然程にテレビが必要であるのか、という話である。
例えば、気になる情報を得たいと思ったときには、新聞を買い求めれば詳細を知ることができ、また情報を吟味することができる。
速報性を重んじるのであれば、まずはネットに流れてくる情報から判断することも可能である。
無論、インターネットに溢れる情報は玉石混交であるため確りと吟味をする必要がある。
熊本地震の際に流れてくる情報も確かにデマが多かった。
私があまり即時のリツイートを行わない理由はここにある。
言葉を扱う端くれである以上、その情報の取り扱いは慎重を成されるべきであろう。
では、果たしてマスメディアの扱う「情報」も安全性が担保されたものであるのだろうか。
ここで鵜呑みにするという言葉が出てくるのだが、情報を扱う際には情報を丸のみにしようとしては消化不良を起こしてしまうことが多々ある。
鵜飼いの鵜と同じであれば人の手によって無理矢理その口から取り出されてしまい、そうした事故も防げるのであろうが、我々はそれを自ら行わなければならない。
もしくは飲み込む前に調理なり吟味なりをするべきなのであろうが、生放送で次々と情報が流される場合、その余裕を失うこともある。
生放送でなくとも、日々同じように情報という本流に流されていては、それを口にすることに夢中となってしまいよくよく飲み下すこともできなくなってしまう。
そこで「正しい」とされる情報に呑まれてしまえば、思考はどうしても一つの方向へと流されてしまう。
報道の自由という言葉があるが、これは文章を扱う者の端くれとして最大限に保障されるべきだと考えている。
しかし、それと同時にメディアから情報を得る私達にはまた「報道からの自由」という考えがあっても良いのではないか。
自由とは好き勝手にするということではなく、あくまでも「自ら」に「由る」ということである。
報道が良い悪いと断罪する姿勢を持つことを私は否定しないが、同時に私は一歩引いた状態で判断をしていきたいと思っている。
ただ、ひとつだけ注意があるとすれば流れに掉さす行いは、なかなかに生きづらいらしいということである。
慣れてしまえばさほどでもないように思っているのだが、実際に試されたいと思った方は注意が必要である。
なに、これもまた情報の一つに過ぎないのであるから。
【今日の出来事】
◎旭川医大侵入で北海道新聞記者逮捕
本来であれば大学の自治性や言論の自由を鑑みて、個人的には然程に問題としないところではある。
むしろ、大学は開かれた場所であるべきという私の考えに則れば、この逮捕は行き過ぎということになる。
ただ、このコロナ禍でやるべきことであったかは甚だ疑問である。
新たな生活を喧伝するマスメディアは、しかし同時にマスク無しでの会食のシーンをフィクションではなくロケの映像として流す。
これも、このコロナ禍で流すべきであったか甚だ疑問である。
少なくともこの取材に新人と思しき女性を送り出した体制を、私は決して信じることはできない。
◎アナウンサー ワクチンの一度目接種を経て「これで人に移すリスクが減った」
ワクチンは確かに抗体を作ることで、病原体への耐性を増すものである。
しかし、今回のワクチンは二回接種が求められており、それまでは油断を許されずそれ以降も他者への感染に気を配るべきという話をしていたのはどこであったか。
私はテレビを殆ど見なくなって十年ほどが経つが、どうやらこの十年でワイドショーはワクチンの持つ意義を説明する意思を失ったらしい。
私がテレビを離れる前から、そうした傾向はもしかしたら続いていたのかもしれないが。
【食日記】
朝:ヌク
昼:日清デカうま 豚キムチ、梅ひじきおにぎり、鶏唐揚げ、野菜ジュース
夜:夏野菜のかき揚げ2、ちくわサラダ2、鶏唐揚げ、淡麗ロング缶1、ウィスキーお湯割り3
他:タリーズブラック1
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