第224話 エルフの里2
「スケルトン
フォルトたちは、ブロキュスの迷宮から、エルフの里へ向かっている。しかし、スケルトン
「ところで……」
セレスの周りには、獣人族の護衛が三名居る。その三名は、集団を囲むように周りを警戒していた。カーミラ以外の身内も、同じように警戒している。
「邪魔だな」
「何か、仰いましたか?」
「い、いや。何日ぐらいかかるかなと」
「そうですね。歩きですと五日ぐらいですか」
「遠いね」
「森の奥地ですから」
フォルトは木々の間から空を見る。そこ視線の先には、巨大な大樹が見えていた。それは、世界樹である。その大樹の根元に、エルフの集落があるのだ。
「大きいな。大陸に根を張っていると聞いたが?」
「はい。エルフが誕生する太古より存在する大樹です」
「なんか、
「世界樹の上には天界があり、根の先には冥界があるとか」
日本で聞いた世界樹も同じような意味合いだ。実際には宗教や神話を通し、世界が一本の木で成り立っているという概念やイメージを伝えている。この世界では、本物の大樹として存在をしていた。
「天界と冥界ねえ」
天界は神々が存在する世界と言われている。魔界は悪魔王や悪魔が存在する世界だ。そして、冥界は死んだ者の魂が集まっている世界である。
他にも、精霊が存在する精霊界。妖精などが存在する妖精界がある。一つの大きな世界に、小さな世界が混在している感じだ。日本などは、その大きな世界とは別の大きな世界という認識で間違いないだろう。
「あ、頭が……」
「どうかされましたか?」
「えへへ。考え過ぎでーす!」
「ははっ。難しい話を聞くと、長く持たない頭なのだ」
「だ、大丈夫ですか?」
「平気、平気。痛くはないからな。考えるのを放棄しただけだ」
「は、はぁ……」
(神話やらは嫌いじゃないけどな。いつもは何も考えてないから、脳みそが悲鳴をあげてしまう)
「あ……。そうそう。森司祭について聞きたいんだけど?」
「はい。何をでしょうか?」
「森司祭って、何を信仰してるの?」
「自然神ですね。名前はありませんよ」
「ないんだ」
「自然とともに生きるのが、われらフェリアスの民です」
「なるほどね。でも、信仰系魔法は使えるんでしょ?」
「もちろんです」
「なら、実際に存在するのか」
「見た事はありませんが、世界樹が自然神に近しい存在です」
「そういう考え方なのね」
世界樹は、自然神の
「セレスさんって、弓の腕は天下一品とか?」
「天下一品かは分かりませんが、得意ではありますね」
フォルトは、セレスが背負っている弓を見る。ただの木の弓だが、彼女はエルフなのでアバターとして
「へえ。エルフの中でも、すごいの?」
「うむ。セレス様の弓の腕はすごいぞ!」
セレスと話していると、近くに居る護衛の獣人族が、話に割り込んでくる。おまえに聞いたんじゃないと言いたいが、割り込まれたので
「どれぐらい、すごいの?」
「ちょっと待て。前方に……」
「うん?」
話に割り込まれたうえに、ちょっと待たされるようだ。それに文句はない。なぜならば、魔力探知で待たされる理由を知っている。
「あれは、チョンチョンですね」
「チョンチョン?」
「人の顔をした魔物ですよ。こちらに気づいていませんね」
セレスの話を聞きながら、前方を見てみる。すると、人の顔をした魔物が、耳を使って飛んでいた。耳で飛べるのかと思いつつ、少々前に出て対処を考える。
すると、フォルトの横を何かが通り過ぎていった。その何かは前方のチョンチョンへ命中し、それとともに奥の木へ刺さったのだった。
「あれ?」
「ふふ。倒しましたよ」
「あ……」
後ろを見ると、弓を構えたセレスが居た。いつの間にやら持っていた弓で、矢を射たようだ。
彼女はレイナスのような、長い金髪をなびかせた女性である。
(これは……。やっぱ、セレスでいいか? でも、総司令官だから要人だよな。護衛も居るし。フェリアスとは敵対したくないしなあ)
「どうしました?」
「いや。すごいなと思ってな」
「エルフなら、これぐらいはやれますよ」
「あ……。そうなんだ」
セレスへハマりそうになったが、エルフなら誰でもやれるそうだ。ならば、当初の予定通り、品定めは継続である。
「では、ここで休憩をしましょう」
「野営ですか?」
「途中に集落などありませんからね」
それから
「そうそう。到着したら、クローディアさんに会わせて」
フォルトは何かを思い出したように、セレスへ話しかける。
「クローディア様ですか?」
「手紙を送ってきたのが、彼女だからさ」
バグバットの事は口止めをされている。それに、依頼された女王の件も伝えられない。その上、クローディアから頼まれたらと言われている。
頼まられなければ手伝う必要はないが、それでは彼に借りを返せない。なかなか悩ましい依頼ではあるが、まずはエルフの里へ向かうのだった。
◇◇◇◇◇
「あの……。フォルト様」
そして、エルフの里へ到着する。道中ではチョンチョンのような魔物が出たが、護衛の獣人族が戦ったり、セレスの弓で仕留められていた。フォルトたちは何もしていない。当然、手伝う気もなかった。
「なんでしょうか?」
到着後は、セレスの家に泊めさせてもらった。エルフの里には宿屋がない。基本的に他種族は訪れないので、必要がないのだ。
たまに来る者は、各種族の重要人物である。そういった者たちは、城と称した遺跡にある貴賓室や、担当のエルフの家に泊まる。
「あ、あのですね」
世界樹の根元にある遺跡がエルフの城だ。内装はドワーフが改装しており、遺跡とは思えない造りになっているらしい。
その遺跡の周りには、一般のエルフが使う木造の家々が建っている。エルフは、遺跡を中心に生活をしていた。
「少々、声を落としてもらえればと……」
「あ、聞こえちゃいましたか」
セレスの家は、一般のエルフが使う木造の家である。しかし、一人で住むには大きい。彼女を訪ねて来る者も居るため、その者たちを泊める部屋がある大きさだ。フォルトたちも、泊まらせてもらっている。
「えへへ。激しかったですもんねえ」
(だって、里へ来るまで身内を抱いてないし……。道中は添い寝ぐらいしかやれなかった。護衛も居たし、見せられないよ!)
今は客室で話をしている。カーミラも一緒だ。他の身内は、与えられた部屋で休んでいる。もう
五日間は
「混ざりたかったですか?」
「い、いえ。そういう事ではなく。外から苦情が……」
「ああ」
木造の家なので、声が漏れていたらしい。ガルド王の屋敷でも漏れていた。防音技術は魔法だけなので、声が大きいと聞こえてしまう。技術が発展していない異世界の、悪いところである。
「そう言えば、セレスさんの家族や恋人とかは?」
「家族はターラ王国の森ですね。恋人は居ません!」
「ターラ王国?」
「帝国の西側にある小国群の一国です。エルフの集落があるのですよ」
「ほうほう。生まれも?」
「そうですね。最近、帝国が攻め込みましたが」
「じゃあ、心配じゃない?」
「いえ。森には手を出していないと聞いています」
「へえ。それは、信用できるの?」
「どうでしょうか……」
セレスの表情を見ると、人間を信用していないようだ。フォルトを人間と認識しているので、それ以上を言わないだけだった。
しかし、人間を信用していないのは、セレスだけではない。昔から確執があるので、フェリアスの住民は、人間を信用していない。
「まあ、あれだ。信用しない方がいいよ」
当然フォルトも、人間を信用していない。しかし、セレスの身内の話なので、それ以上は言わない。彼女を手に入れれば別だが、まだ迷っている。
「え、えっと。お昼にしましょうか?」
「なら、みんなを連れてこよう。カーミラ、呼んできて」
「はあい! 呼んできますねえ」
「きさま。あれでは足りんぞ」
「そ、そうか。
「仕方がない。今日は誰かに会うのだろう?」
「そうそう」
「その話は、食事をしながらで」
「そうだね。腹が減った!」
そんな事を話していると、給仕のエルフが食事を運んできた。専門の給仕ではなく、ただの手伝いだそうだ。貴族然とした生活をしていないので、来客がある時は、手の空いている誰かが担当してくれるらしい。
「うまそうだ」
「森の幸ですが、お口に合えば」
「では、いただきます」
(うまいけど、量が……。後でカーミラに運んでもらおう)
フォルトの
「それで、クローディアさんには?」
「夕方には時間を取るそうです。城へ連れてくるように言われました」
「早いね」
「待っておられたようですよ?」
「そうなんだ。時間が空いちゃったから、悪い事をしたな」
「日時は決めていませんでしたからね。大丈夫ですよ」
シュンたちを優先したため、エルフの里へ来るのが遅れた。待っているとは思わず、彼らが帰った後も自堕落をしてしまった。しかし、反省はしない。セレスの言う通りなのだから。
「時間も中途半端だし、仮眠をします。後で起こしてもらえれば」
「分かりました。声をかけますね」
そして、飯を平らげてから、与えられた部屋へ戻る。
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Copyright(C)2021-特攻君
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