露見
「そこにいるんでしょ?早く出てきて」
布団の上に横たわる
しかしその目つきは鋭く、天井板の一点を刺し、穴越しにぼくと視線が交錯する。
強い磁力で引っ張られているかのように、ぼくは目をそらすことができない。
しばらく呼吸をするのも忘れて、彼女と見つめ合った。
どれくらい時間が経っただろう。
もしかしたら、ほんの僅かな時間だったかもしれない。
全身に冷や汗をかいたぼくは、観念して天井裏から姿を現した――
犬のような大きさで鼻先が長く、体毛は白っぽい。
手足が短く、狸によく似た生き物。
それがぼくだ。
「なんだ
布団から起き上がり、驚きもせずに彼女は言った。
「な、なんで……」
その反応にぼくの方が混乱してしまう。
「この辺は大昔から
今日しくじるまでは、完全に気配を消していたのにすごく鋭い。
冷静にぼくの姿を観察していた彼女が、何かに気づいて僅かに目を見開いた。
「あなた……。いつかの天気雨の日に会ったわね」
驚きつつも、ぼくは鼻先をひくひくさせて頷く。
彼女は顔にかかった髪を手のひらで払った。少し得意げな表情だ。
「ぼくの姿を見ても、ちっとも驚かないんだね」
恐る恐るぼくが問いかけると、呆れ顔で彼女はため息をついた。
「そんなの、決まってるじゃない」
そう言うと、彼女はすらっとした身体を回転させ、見事なバク宙を披露する。
白く長い手足は、宙をひと回りすると短く毛だらけになり、細くくびれた腰は、ふさふさの毛に覆われた胴体へと变化した――
「あたしも、同じ穴のムジナよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます