露見

「そこにいるんでしょ?早く出てきて」



布団の上に横たわる麻珠まみの姿。



しかしその目つきは鋭く、天井板の一点を刺し、穴越しにぼくと視線が交錯する。


強い磁力で引っ張られているかのように、ぼくは目をそらすことができない。


しばらく呼吸をするのも忘れて、彼女と見つめ合った。



どれくらい時間が経っただろう。



もしかしたら、ほんの僅かな時間だったかもしれない。

全身に冷や汗をかいたぼくは、観念して天井裏から姿を現した――






犬のような大きさで鼻先が長く、体毛は白っぽい。


手足が短く、狸によく似た生き物。




それがぼくだ。




「なんだむじなか。てっきり狸かと思ったわ」


布団から起き上がり、驚きもせずに彼女は言った。


「な、なんで……」


その反応にぼくの方が混乱してしまう。


「この辺は大昔から狐狸こりが多い土地なの。時々妙な気配は感じてたから、まさかとは思ったけど。ホントにいたのね」


今日しくじるまでは、完全に気配を消していたのにすごく鋭い。


冷静にぼくの姿を観察していた彼女が、何かに気づいて僅かに目を見開いた。


「あなた……。いつかの天気雨の日に会ったわね」


驚きつつも、ぼくは鼻先をひくひくさせて頷く。

彼女は顔にかかった髪を手のひらで払った。少し得意げな表情だ。


「ぼくの姿を見ても、ちっとも驚かないんだね」


恐る恐るぼくが問いかけると、呆れ顔で彼女はため息をついた。



「そんなの、決まってるじゃない」



そう言うと、彼女はすらっとした身体を回転させ、見事なバク宙を披露する。


白く長い手足は、宙をひと回りすると短く毛だらけになり、細くくびれた腰は、ふさふさの毛に覆われた胴体へと变化した――





「あたしも、同じ穴のムジナよ」

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