第132話 突きとめた正体
ヴァネッサ・ルーガンが潜んでいると思われる教室は残り三つ。
そして、俺たちもちょうど三人。
俺が考えついた作戦は、三人がそれぞれ一斉に教室内へ雪崩れ込むことだった。これならばどこかの教室で必ずヴァネッサを見つけられるはず。仮に彼女でなくても、ポルフィが見たという人物の正体に近づけるはずだ。
極力音を立てないようにして、俺たちはそれぞれ決めた扉の前に立つ。
ポルフィの目が完全に泳いでいるが……こればっかりはこらえてくれよ。
「――今だ!」
俺の合図で、一斉に教室内へ突入。
当たりを引いたのは――
「ここにいたのか」
俺だった。
「あなたは……?」
ヴァネッサは一瞬だけ戸惑ったように眉をひそめたが、すぐに冷静さを取り戻し、無表情のまま俺に尋ねる。
「初めまして――だよな。俺はハーレイ・グルーザーっていう者だ」
「グルーザー?」
おっ。
どうやら、グルーザー家については知っているようだ。大方、うちの優れた弟や妹の影響なのだろうけど。
「君と話がしたくて、昇格試験のあとからずっと追っていたんだ」
「それでここまで……悪趣味ね」
ひどい言われようだ。
それから、事態を把握したポルフィとマイロのふたりも合流。
改めて、俺はヴァネッサに質問をぶつけてみた。
「どうして旧校舎なんかに?」
「そんなのどうだっていいでしょ? あなたに答える義務はないわ」
取り付く島もないって感じの応対だな。
すると、その態度にカチンと来たらしいポルフィが詰め寄った。
「あなたねぇ、こんな時間にこんな場所にひとりでいるなんて疑わない方がおかしいってものよ!」
「疑う? 私には何か疑いがかけられているのかしら?」
「俺たちは君が黒騎士ではないかと疑っているんだ」
「っ!?」
真正面から、俺はヴァネッサに本題をぶつけた。向こうとしては想定していなかった質問らしく、大きな動揺が見て取れた。
「随分と驚いているな」
「……荒唐無稽な話だと呆れているだけよ」
「ふーん、そうなのか」
「……何か言いたげね」
「いや、黒騎士という言葉が何を指しているのか分かっているんだなって思っただけさ」
「っ!?」
再び、ヴァネッサの表情が強張る。
どうやら、いきなり本題をぶつける作戦は成功したらしい。
もちろん、最初から【嘘看破】のスキルは発動させているため、そちらからもボロを拾い上げられる。ただ、スキルに関しては情報がいっているのか、そう簡単には口にしなかった――だからこそ、不意打ちが生きたのだろうな。
「ガインさんやガステンさんを襲ったのは君だな?」
「…………」
沈黙。
だが、黙っていても、俺たちの追及が止むことはない。
このまま騎士団に連行しようかと思った――その時、
「厄介な連中に絡まれているようだな、ヴァネッサ」
この場にあってはならない、五人目の声がした。
――いや、五人だけじゃない。
どこからともなく、新たに三人の男たちが室内に姿を現した。
「なっ!?」
「い、一体どこから!?」
ポルフィもマイロも、ハッキリと姿を確認するまで気づかなかったようだ。
空間魔法の応用か……?
いずれにせよ――大ピンチだ。
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