第133話 急襲
気配もなく、突然姿を見せた三人の男たち。
その人相からして学校関係者ではなさそうだ……あと、いつの間にか俺たちとの距離を縮めていたところから察するに――恐らくその道のプロだろう。
「真ん中のおまえは知っている。グルーザー家の出来損ないだな?」
「っ!?」
……久しぶりに真正面から悪口を言われたな。
昔は割といろんな場面で似たような言葉をぶつけられていたから慣れた部分もあったけれど……最近はとんとご無沙汰だったから耐性が弱っているらしい。
つまり――ちょっと傷ついた。
「双子の方が紛れていると処置に厄介だったが、おまえは確か辺境領主である叔父夫婦のもとへ養子に出されたんだったな。……それならまあ、多少手荒なことをしても平気そうだ」
「っ!」
双子の方って……マシューとロレインのことか。
三人組のひとりの口ぶりだと、どうやらグルーザー家が関与している案件ではないようだ。
それを聞けてホッとしたようなしてないような――いや、普通にうちの家も風評被害に遭う可能性が高いから、ないならないでいいんだよ。
――って、今はそれどころじゃなかった。
なんとかしてこの窮地を脱しなければ。
「逃げだそうとしているなら無駄だぞ。――まずはおまえの首からいただく」
こちらの返答をまたず、真ん中の男が俺に向かって飛びかかってきた。
「くっ!?」
咄嗟に身を翻して、男の攻撃をかわす。
「ほぉ、さすがはイカサマを使った上位クラスの連中を倒してきただけのことはある」
男はそれだけボソッと呟いてから再び俺に攻撃を仕掛けてきた。他のふたりも交戦状態となり、互いにフォローし合って戦うのは無理そうだ。
このままでは三人ともやられてしまう。
咄嗟にそう察した俺だが、同時にイチかバチかの手も思い浮かんだ。
男の連続攻撃をかわし、体勢を整えると、俺はスキルを発動させる。
【言語強化】
二度にわたる昇格試験の末に、俺はこのスキルの神髄へと近づいていた。特に、アーニー・ライローズ戦では窮地に陥った俺を救ってくれた、いわば「とっておき」だ。
「頼むぞ……」
襲い来る男は、きっとこのスキルを知らない。
それはそうだろう。
俺自身、まだ半信半疑の力なのだから。
それでも、ここでやるしかない。
ありったけの力を込めて、俺は腹の底から声を出す。
これが俺の言語スキル――最大の力だ。
「燃え上がれ!」
大きな叫び声が、旧校舎に轟く。
そして……俺の手にしていた剣は、真っ赤に燃え盛る炎に包まれていた。
「なんだと!?」
飛び込んできた男へ、俺は手にした燃える剣で斬りかかる。
この事態はさすがに想定外だったようで、男はもはやかわすこともできない距離と体勢だ。
「おおおおおおおおおおおっ!」
生まれた隙を逃さまいと、俺は渾身の力を込めて剣を振るった。
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