第85話 次なる対戦相手
Cクラスへの昇格をかけて試験に臨んだレオンという男子学生を訪ねるため、俺とポルフィは診療所へと向かう。
ちなみに、負傷していたマイロは無事に学園へと復帰し、次の昇格試験に向けてすでに始動していた。
それからもうひとつ。
驚くべきというか……まあ、こうなることは目に見えていたのだが――ロバート・シャルトランが退学となった。
厳密に言うと、自ら学園をやめた――つまり、自主退学という扱いとなっている。
無理もない。
あれだけのハンデを背負いながら敗北したのだ。
シャルトラン家からすれば、顔面に泥を塗りたくられたに等しい屈辱だろう。それに……親としても、出来の悪い末息子の世話はもう懲り懲りだと思ったのか。
いずれにせよ、ロバート・シャルトランは相応の報いを受ける形となった。
しかし、この出来事はよからぬ方向に影響が出るのではないかという懸念もある。
……少なくとも、これから俺たちが訪ねるレオンという学生は、俺がロバートと戦った時のように、不正が行われていた可能性が極めて高い。
きっと、深く落ち込んでいるのだろう。
そう思いながら、病室を訪ねてみると、
「ふん! ふん! ふん!」
レオンと思われる男子学生が、ベッドの上で腹筋をしていた。
「「えっ?」」
その様子に、俺とポルフィは呆気にとられる。
「む? 誰だ?」
ここでようやく来客に気づいた男子学生が、こちらへ声をかける。
「あっ、えっ、えっと、俺たちは今日から新しくDクラスに来た者で――」
「おおっ! あの昇格試験を突破してきた猛者たちか! 俺はDクラスのレオン・ラザフォードだ! よろしくな!」
若干の暑苦しさを感じつつも、全体的には爽やかさの勝る挨拶をしてくれたのは、こちらがにらんだ通り、Dクラス随一の実力を誇るレオンだった。
「怪我の方は?」
「ほとんど治ったよ。ここの医者の腕がいいのだろうな。はっはっはっ!」
この回復の速さ……治癒魔法を使っているということもあるのだろうが、彼自身の持つ体の頑丈さとかも関係していそうだな。ハキハキとした喋りに活力が溢れ出ている眼差し……絵に描いたような健康優良児って感じだ。
「Eクラスから昇格してきたということは……もしや次の昇格試験も受けるつもりで?」
それまで明るかったレオンの口調が、急に重苦しいものとなる。
「……あぁ」
「私も受けるつもりよ」
「そうか。……ならば、これだけは覚えておいてくれ」
「な、何だ?」
「対戦相手が――アーニー・ライローズという男子学生だったら、すぐに棄権するんだ」
アーニー・ライローズ。
……ライローズ家の子息か。
あそこもまた、あまり評判のいい家じゃないな。
「そうやって注意喚起するということは……君が昇格試験で戦ったのも?」
「アーニーだ。――ヤツは危険だよ」
「危険?」
その言葉に引っかかりを覚えた。
昇格試験の相手が危険……そりゃ確かに、不正を働くことはあるが、基本的に命のやり取りがあるわけじゃない。昇格するかしないか――その二択のはずだ。
……だが、そのアーニー・ライローズとの戦いは、少し状況が異なるらしい。
「彼は優秀な男だ。ハッキリ言って、実力はBクラス上位に匹敵する」
「!? じゃ、じゃあ、なぜCクラスに?」
「ヤツは望んでCクラスにいるのさ。――格下の相手を見下し、ボロボロになるまで痛めつけるために」
「なっ……」
どうやら、次の対戦相手になるかもしれないアーニーという学生は……本当に危険人物のようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます