第84話 上位クラスの罠
Dクラスの中心人物だった男子学生――レオン。
彼もまた、俺たちと同じように昇格試験に挑んだ。明るくて誰にでも優しく、それでいて実力も伴っている。
Dクラスの誰もが、レオンの勝利を確信していた。
――が、実際はまったく予想外の結末を迎える。
レオンは昇格試験を挑んだCクラスの学生に手も足も出ず、完敗。
それどころか、一方的に攻撃を食らい、診療所送りになったという。
より詳しい情報が欲しかったので、俺はこの昇格試験を見ていたロッソとケリーというふたりの男子学生から話を聞くことにした。もちろん、同じく次の昇格試験を受けるつもりのポルフィも一緒だ。
授業後。
俺たち四人は寮近くにある噴水の前に集まった。
すると、すぐにロッソという男子学生が口を開く。
「悪いことは言わない……次の昇格試験は見送るんだ」
「「えっ?」」
半ば予想通りだったとはいえ、まさか本当にそう言われるとは……よっぽどひどい戦いだったみたいだな。
俺はその戦いの内容をふたりから聞く。
最初はどんな苛烈な戦いだったのかと身構えたが――端的に言うと、俺とロバートのような戦いだったということが分かった。
つまり、相手にはこちらの攻撃が一切通じないが、逆に向こうからの攻撃はしっかりダメージが入る。
俺は逆転をかけて一か八かの手に出たが……レオンにはそうした切り札がなかったらしく、結果として惨敗を喫したという。
「ひでぇことをしやがる……」
「あぁ……」
その戦いを間近で見ていたロッソとケリーは、下唇を噛みしめて悔しさをあらわにした。
聞くところによると、このふたりとレオンは親友だったらしく、お互いに切磋琢磨して上のクラスを目指そうと約束していたらしい。ロッソとケリーはまだ実力不足を痛感して今回の昇格試験への参加を見送ったが、自信のあったレオンは参加に踏み切ったという。
「あの時、俺たちが止めていれば……うぅ……」
ついにケリーは泣きだしてしまった。
それにつられるように、ロッソも嗚咽を漏らす。
「……違うわ」
俯き、泣き始めたふたりへ、ポルフィがそう言い放った。
「悪いのはあなたたちじゃない! 卑怯な手を使って勝とうとする連中よ!」
正論だ。
実際の戦場なら、甘言だと一蹴されるかもしれないが、ここは純粋に鍛錬の成果を見せ合う教育機関。そこでも勝利至上主義を掲げ、自分たちの優位性を存分に発揮して地位を守ろうとする――こんなことで、若い力が育つはずがない。
このまま、権力者たちの好き放題にされていては、日々努力している真面目な一般学生がバカみたいじゃないか。
「……そうはさせない」
「えっ?」
「ロッソ、ケリー、安心してくれ。――俺がレオンの仇を討つ」
「し、しかし――」
「大丈夫。俺も似たような手を使われてきたから……対策は講じられるはずだ」
「き、君のところでもそのようなことが……」
このままにはしておけない。
俺は打倒Cクラスを目標に掲げると、対策を練ることにした
そのためにも――会ってみたいな、レオンって男子学生に。
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