第83話 新しいクラスへ

 昇格試験から一夜が明け、俺とポルフィのふたりは今日からDクラスの所属となる。

 ――って、言葉にすると簡単だが、正直、まだ実感が湧かないな。


 それと、心配事もある。

 Dクラスにおける俺とポルフィの扱いについてだ。


 実家が権力者であるロバートとその取り巻きを倒して昇格した俺たち――けど、もしDクラスの学生たちが、他の取り巻き同様、ロバート・シャルトランの息のかかった者たちだとしたら……考えるだけでげんなりしてくる。


 それなりの報復があるのかどうか。

 この点もちょっと怖いところだ。


 そうした不安があったため、俺とポルフィは事前に話し合い、ともに教室へ向かおうということにしていた。ふたり揃ってなら、対処のしようはあると考えたからだ。……それに、仲間がいることで、互いに精神的なダメージも少なく済みそうだし。


 と、いうわけで、恐る恐る新しい校舎の新しい教室へと入ったわけだが、


「おっ! 来たぞ!」

「いやぁ、よくやってくれたな!」

「感心したぜ!」

「戦いは壮絶だったって聞いたぞ!」

「おかげでDクラスは平和になった!」

「いい気味だぜ、ロバートのヤツは!」

「あいつにはみんな迷惑していたからなぁ」


 入るやいなや、俺たちはDクラスの学生たちに囲まれた。彼らの表情はとても晴れやかなもので、そこに敵対心は感じられず、俺たちを讃える言葉を口にする。


 予想外の反応に、俺もポルフィも面食らった。

 どうやら、ロバート・シャルトランの評判は最悪だったみたいだな。


 クラスメイトたちから歓迎されていると理解した俺たちは、ホッとすると同時に、すぐさま次なる目標に視界を向けていた。


 そう。

 次の昇格試験についてだ。

 今から一ヶ月後――夏の長期休校の直前になるな。


 対戦相手はCクラスの学生……当然ながら、昨日戦ったロバートたちよりも実力的には上ということになる。――って、そういえば、


「あ、あのさ」

「うん?」

「このクラスからCクラスへ昇格した学生っているのか?」


 俺はそれが気になって尋ねてみたのだが、


「「「「「…………」」」」」


 先ほどまでの喧騒が嘘だったかのように、クラスメイトたちは沈黙。

 あ、あれ?

 俺なんか聞いちゃいけないこと聞いちゃったのか?

 重苦しい沈黙が流れる中、


「いたよ」


 ひとりの男子学生が声をあげた。


「君たちと同じように、レオンってヤツがCクラスへの昇格をかけて試験に挑んだんだ」


 その男子が話し始めたのを皮切りに、他のクラスメイトたちもそのレオンという男子学生について語る。


「レオンはこのクラスでもっとも優秀な成績を収めていたんだ」

「それだけじゃなく、優しくて頼れるクラスのリーダーだった」

「なのに……」


 徐々に、クラスメイトたちの声色は力を失っていき、再び沈黙が教室を包んだ。

 ちょうどその時に教師がやってきて授業が始まったため、それ以上の詳しい話は聞けなかったが……一体、そのレオンという男子学生に何が起きたのか。


 これは授業後にもう一度話しを聞く必要がありそうだ。

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