第86話 危険人物
アーニー・ライローズ。
俺がDクラスへ昇格する際に戦ったロバート・シャルトランも大概だったが、こっちはまったくベクトルのことなる危険性を孕んでいる。
Dクラスでもっとも優秀なレオンが、Cクラスへの昇格をかけてアーニーと戦ったらしいのだが……結果としては手も足も出なかったという。
それもそのはずで、アーニーの本来の実力であれば、もっと上位クラスを狙えるという。
だが、彼はCクラスに残っている。
その理由は――弱者をいたぶるため。
自分よりも実力が大きく劣る相手だけを選び、実力差を見せつけて相手を倒す。それがヤツの楽しみらしい。
ただ、最初に戦ったレオンは超ポジティブタイプの人間だったので、負けたことに対してそれほど悲観はしていない様子。これがもし、普通のメンタルの学生だったら……二度と立ち直れなくなってしまうほどの精神的なダメージを受けていたかもしれない。
「そ、そんなヤツを相手にしなくちゃいけないなんて……」
いつも強気なポルフィでも、さすがに恐怖を抱いたようだ。
Dクラスへの昇格試験の際には、ロバートが俺を指名したから戦ったけど……もし、ポルフィとアーニーが戦うことになったら、最悪のケースも考えられる。
「…………」
それも踏まえた上で、俺はある質問をレオンに投げかけた。
「レオン……」
「どうした?」
「もし、俺が昇格試験を受けようとしたら……アーニー・ライローズは試験に出てくると思うか?」
「……断言はできないが、その可能性は極めて高いと思う」
やはり、か。
弱者をいたぶることに喜びを感じているアーニーは、Cクラスの学生よりさらに劣るDクラスの学生相手に、自分の力を見せつけるため喜んで試験に出てくるだろうと予想する。他の学生からしても、負けたら降格の危機となる昇格試験には挑みたくないだろうし、アーニーを止める者はいないだろう。
それを踏まえた上で、俺は提案を持ちかけた。
「……ポルフィ。今回の昇格試験は俺だけに任せてくれないか?」
「えっ?」
「俺が――必ずヤツを止める」
昇格試験をふたりで受けた際、確実に俺がアーニーと戦えるとは限らない。
むしろ、ヤツの性格を考慮したら、女子であるポルフィと戦いたがる可能性が高いと思われる。
ポルフィには申し訳ないが、ここは俺が単独で挑み、ヤツを退ける――そう考えていた。
「……そうね。あの反則男にも真っ向から立ち向かって倒したハーレイなら、きっとそのアーニーって変態も倒せるはずよ!」
「自信はあるのか?」
「正直に言えば、よく分からない。……けど、負けるつもりは毛頭ないよ」
「そうか……」
レオンは大きく息を吐いてから、
「その強い意志――受け取った! 俺がヤツとの戦いで得た知識をすべて授ける! だから、どうかヤツを倒して健全な昇格試験が行われるようにしてくれ!」
「もちろんだ!」
健全な昇格試験、か。
それを実現させるためには、アーニー以外にも倒さなくてはいけないヤツがたくさんいそうだ。
でも、ロバートやアーニーのような貴族を倒していけば、その足掛かりにはなるだろう。
「今回は応援に回るわ! 頑張ってね、ハーレイ」
「おう!」
ポルフィの意思も受け継ぎ、俺は次の試験が行われる一ヶ月の間にもっと強くなるべく鍛錬を開始するのだった。
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【お知らせ】
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https://kakuyomu.jp/works/16816927860376109239
今回の新作はタイトルにある通り!
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以上の要素がお好きな方はぜひ読んでみてください!
そうでもないという人もこの機会にぜひ!
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