第13話 秘められた能力

 父上はサーシャの申し出に驚きを見せつつ、「これは長年に渡るグルーザー家とレヴィング家の確執を消し去るためのいいきっかけになるかもしれない」と目を輝かせていた。

 そう思うと……責任重大だな、俺。



 その日の夜。

 屋敷へ戻ってきた俺は、スキル進呈の儀を行ってくれた庭師であるガスパルさんのもとを訪ねるため、庭園に足を運んだ。


「ガスパルさん、ちょっといいですか?」

「おや? どうされました、ハーレイ様」


 木陰で休憩中だったガスパルさんに、俺は言語スキルの能力について尋ねた。


「あなたが授けてくれた言語スキルですが……人との会話がしやすくなる他に、効果はあるんですか?」

「ほっほっほっ! もちろんありますとも」


 それから、ガスパルさんは俺に言語スキルについていろいろと教えてくれた。

 能力を簡単に分けると、


【会話補正】

【言霊強化】

【詠唱吸収】

【会話記録閲覧】

【嘘看破】

【言語統一】


 以上六つ。


 その中にある【会話補正】という能力が働いているおかげで、俺は他の人と会話ができるようになったという。

 森の中で遭遇した赤いオークやゴブリンたちと会話ができたのは【言語統一】という能力のおかげ。人外との会話だけではなく、まったく違う言語を話す他国の人々とも、問題なく理解することができるとのこと。確かに、このスキルはあちこちで商売する商人にとっては重要なものだ。

 残る四つの能力――【言霊強化】、【詠唱吸収】、【会話記録閲覧】、【嘘看破】については、発動するかどうかはまだ分からないという。


「基本的にひとつのスキルに付随する特殊な能力というのは平均して六つほどと言われておりますが……その六つすべてを使いこなせる者は滅多におりません。せいぜいふたつか三つでしょうな」

「そうなんですか?」

「えぇ。そんな言語スキルの中でもっとも取得率の高い能力が【会話補正】であり、これはほぼ確実に身につきます。ゆえに、ハーレイ様にピッタリだと旦那様も思われたのでしょう」


 確かに、俺のためにあるようなスキルだ。


「しかし……まさか、【言語統一】まで使いこなせるとは驚きですが」

「俺も最初は驚きましたよ」


 正直、他の四つの能力もどんなものか大変気になるところだ。

 自動で発動したふたつの能力とは異なり、残り四つは恐らく任意で発動するものであると推測される。

【言霊強化】と【詠唱吸収】は、名前からして戦闘用だろうか。

【会話記録閲覧】と【嘘看破】については今すぐ使えそうだが……


「……ちょっと試してみます」

「えっ?」


 俺はガスパルさんにそう告げると、目を閉じて意識を集中。

 すると、真っ暗な視界に白い文字が浮かんできた。

 これは――


《基本的にひとつのスキルに付随する特殊な能力というのは平均して五つほどと言われておりますが……その五つすべてを使いこなせる者は滅多におりません》

《そうなんですか?》

《えぇ。言語スキルの中でもっとも取得率の高い能力が【会話補正】で、これはほぼ確実に身につきます。まさか、【言語統一】まで使いこなせるとは驚きですが》

《なるほど……》


 す、凄いぞ!

 さっきの会話が文字におこされている!


「ガスパルさん……」

「はい?」

「どうやら。【会話記録閲覧】の能力も備わっているようです」

「なんと!?」


 これにはガスパルさんも驚きの声をあげる。

 かつて、冒険者ギルドで鑑定士をしていたというガスパルさんがこれほど驚くのだから、相当珍しいんだろうな。


「……ハーレイ様」

「うん?」

「あなたは……きっとグルーザー家がはじまって以来の大物になりますよ」

「ははは、だといいけどね」


 ガスパルさんの励ましを受けると、俺は大きく伸びをする。

 言語スキル、か。

 もっといろんな可能性を試してみたいな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る