第14話 レヴィング邸へ
※次回より20:00投稿となります!
翌朝。
サーシャの言った通り、屋敷には俺を迎えの馬車が来た。
その数――なんと五台。
俺の想像を遥かに越える好待遇が待っていた。
「レヴィング家にとって、大切な客人になりますので」
風格漂う執事の男性が一礼して告げる。
護衛ってこと?
そんな厳重にしなくてもいいんじゃないか?
スキルがあるとはいえ、今はまだただの学生なんだから――って、思ったが、一応この家も名家なんだよな。父上が村人と一緒になって汗だくになっている光景を目の当たりにしていたから忘れていたよ。
俺はオリバーさんという執事に連れられて馬車に乗る。
ちなみに、両親は同行せずに家で待つこととなった。
一応、犬猿の仲だからなあ……うちとレヴィング家は。
子ども同士はまだそういったわだかまりを感じていないけど、大人はいろいろと思うことがあるのだろう。それでも、俺が行くことを許可してくれたところを見る限り、父上はレヴィング家に対して思い直そうとしているようにも映った。
王都へ行く道とは反対方向だったので、窓から見える景色はとても新鮮だった。途中で大きな湖があり、野生動物たちが気持ちよさそうに日光浴をしている。今度、あの湖へ釣りにでも行っていみたいな。
およそ一時間の馬車移動は、そんなことを考えている間に終わってしまった。
到着したレヴィング家の屋敷は俺の想像を遥かに超越する大豪邸だった。
屋敷の玄関へたどり着くまでには色とりどりの花が咲き誇る噴水つきの庭があり、メイドたちがお手入れに汗を流している。白塗りの屋敷は屋敷でとにかくデカい。
「ようこそ、レヴィング家へ」
馬車から下り、庭園の真ん中を突き進んで屋敷を目指す。
その途中で、
「あ」
庭園に設置された白いテーブルとイス。そこには、読書に夢中となっているひとりの少女がいた。かたわらにいるメイドさんが淹れてくれたお茶を飲むため、少女はティーカップへと手を伸ばす。
俺はその光景に釘付けとなっていた。
まるで、一幅の絵画のような……まさしく絵になる構図だった。
透き通る青色の髪。
薄い桃色の唇。
陶器のような肌。
俺と同い年のはずなのに、とんでもなく大人っぽく見える。
「どうかされましたかな?」
俺の足が止まっているのを心配したオリバーさんが声をかけてくれたけど、俺はすぐに反応することができなかった。オリバーさんは俺の視線から、その原因を突きとめる。
「サーシャお嬢様が気になりますか?」
「っ! あ、い、いや、そういうわけじゃ!」
「いやいや、お嬢様の美しさを前にしたら誰だってそうなります」
ニヤニヤしながら話すオリバーさん。
その時、サーシャがこちらに気づき、優しく微笑みながら手を振ってくれた。
それに対し、俺も無言のまま手を振り返す――と、
「やあ、待っていたよ。――娘の命の恩人よ」
野太い声が、背後から聞こえてきた。
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