第11話 戦い終わって

次は18:00ごろ投稿予定!



「ありがとう。君のおかげで助かったよ」


 一点の曇りもない笑顔でグランさんは俺に礼を言う。


「無事で何よりです」

「君は強いんだな。エルシーの話だと王立学園の生徒らしいが……」

「は、はい。今年で二学年になります」

「私の同級生ですよ! あっ、申し遅れました! 私はエルシー・ファーガソンという者で、こちらにいるグランさんの姪になります」


 グランさんの脇からひょっこりと顔を出したエルシーがいろいろと情報を加える。


「こら、おまえはもう少し危機感を持て。彼がいなければとっくに死んでいたんだぞ」

「も、申し訳ありません……」


 俺が言うのもなんだけど、あれは確かに無茶だったよ。


「おっと、すまない。まだ名乗っていなかったな。俺の名はグラン・ファーガソンだ」

「俺はハーレイ・グルーザーです」

「「!?」」


 一瞬にして、空気が変わる。

 エルシーやグランさんだけでなく、その場にいた兵士たちの顔が険しくなったのだ。

 そこで、ハッと思い出す。

 彼らの装備から、恐らく騎士団の関係者も複数名入っていると思われる。だから、知っているのだ――グルーザーの名を。そして、グルーザーの当主が、騎士団のことをどう見ているのかも。


 重苦しい空気が流れる中、


「お見事な腕前でした、ハーレイ殿」


 エルシーはそう言って俺に頭を下げた。


「あなたのおかげで私はこうして生きながらえた……感謝します」

「そ、そんな、俺は――」

「エルシーの言う通りだ」


 動揺している俺の前に、グランさんがやってくる。


「君の活躍がなければ、エルシーだけでなく、我々の命も危うかった……礼を言わせてくれ」


 そう言って、グランさんも深々と頭を下げる。

 同じく国防を担う者同士でありながら、騎士団を目の仇としている魔法兵団のトップの息子を相手に――その行為は信じられないものであったが、周りの兵士たちはグランさんの行動を見てそれに続いた。全員が俺に礼を述べて頭を下げたのである。


「しかし妙だな……王都から護衛をしてくれた兵士たちも決して弱くはないのに……そもそも赤色をしたオークなんて初めて見たぞ」


 やっぱり、赤いオークは珍しいのか――って、そうだ。


「あの、グランさん」

「うん?」

「あのモンスターたちは誰かの命令で動いているようです」

「何? なぜそんなことが分かる?」


 そう聞き返されたが……なぜ分かるも何も――


「あのオークが喋っていたじゃないですか」

「オークが?」

 

 怪訝な表情を浮かべつつ、グランさんの視線は周囲の兵たちに向けられる。

 だが、誰もが首を横へ振った。

 まさか……オークの声は俺にしか聞こえなかったのか?

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