舞台裏 #1



 時は少し遡り――一昨日の朝。



「陛下、調べた限りここから少し離れた街に人身売買をされている貴族がいました」


「そうか、明日そこに行こう。その貴族の名は?」


「はい。元ユオブ族であるユオブ子爵です。生業のほとんどを人身売買しているらしいです」



 ――ユオブ族。それは先先代から続く人身売買をしている種族だ。先先代であるお祖父様は人身売買それを嫌っていて会議で何度も提案したそうだ。だが、貴族から『これを辞めたら生活できません!』と言われたらしく……その話は進まなかった。


 そして先代。

 私の父も人身売買を廃止することに全力を注いだ。だが、調べている途中遠方からの帰りの馬車で事故死してしまった。だから、これは俺の代で終わらせたいと思っている。


 翌日、側近であるレオナルドと共に人身売買が行われている街へやってきた。



「陛下、あれです」



 レオナルドが指差した方には荷物用の馬車に見える限り5、6人ほどが鎖に繋がれ売られているようだった。そのそばで金髪の20代くらいの男性が売り込みをしている。あれがユオブ族の長の息子か……。



「どうしますか? 降りられますか?」


「あぁ、そうだな。何かあった時のために準備しておけ」


「仰せのままに」



 俺は王宮の馬車を降り、店に近づいた。



「いらっしゃいませ、旦那」


「……あぁ」



 ユオブの息子は、俺に『オススメ』を勧めてきた。今日は下見だけだ。だから一旦帰ろうと思った……アレンと目が合うまでは。



「一通り見せてくれ」



 そう言うと、店主は何かを言っていたがそれは無視をして一人ひとり見ていく。早くこの子たちを助けてあげたい。


 一通り見終わり、最後の1人を見た。それがアレンだ。アレンの瞳に見惚れた。それに微かに感じる魔力……しっかりとしたドレスを着たらきっと他の令嬢に劣らない美しさがありそうだ。



「彼女を買わせて貰おう」



 買わせて、なんて言いたくない。だが、彼女を連れ出すにはそれしか方法がなかったんだ……。














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転生して人生どん底だったはずが、国王陛下に見初められて甘やかされてます。 伊桜らな @koto_yuki

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