第2話 王宮の侍女



 朝目が覚めると、まだ日の入り前だった。いつもならボロボロのワンピースに鎖に繋がれている時間帯だ。


 なのに今は綺麗で肌触りがいい寝間着を着ている。こんな気持ちいいのはこの世界に来て、初めてだ。



「夢、じゃない……」



 昨日は夢だと思った。昨日まで、ミッシェルさんの元で役立たずの奴隷として売り物だったのに……今はこんな素敵な部屋で過ごしている。


 いつもなら、この時間は――ううん、今はそんなこと考えるのはやめよう。私は再び目を閉じて、眠りについてしまった。



「……アレン様、アレン様!」



 誰かに名前を呼ばれ、重たい瞼を無理矢理開ける。



「あっ、お目覚めですか? アレン様、おはようございます」



 目を開けると、黒髪を三つ編みにした黒のワンピースにエプロンをつけた少女がいた。


「えっと……あの」



 昨日も見た気がする……だけど名前はわからない。



「申し遅れました、私はユーリと申します。アレン様の専属侍女でございます」


「せんぞく、じじょ……?」


「はい。お世話係、といいますか……」



 私の? 私のことをお世話してくれる人?


 なんで?



「何故、私のお世話を? 私は、その……買われたんですよね?」


「はい、それはリオン様もおっしゃっていました。ですが、私はあなたを元奴隷なんて思っていませんよ。私はアレン様のお世話を任されているんです……さぁ、お着替えしましょうね」


 

 ユーリはドレスを私に着せると化粧台の前に座らせ、髪を櫛でとかす。



「今日のお召し物、リオン様直々にお選びになったんですよ」


「えっ」


「ふふっお似合いですわ」



 すると、ドアが2回ノックされユーリが「はい」と返事をする。



「おはよう、アレン。よく眠れたかい?」


「……はい。とても」


「それは良かった。そのドレスもよく似合っておる」



 男性にそんなこと言われたことなくて顔の体温が熱くなる。



「あ、ありがとうございます。ユーリが髪も綺麗にして下さったので……」



 恥ずかしくなって俯くと「だ、大丈夫か?」と覗き込まれ一歩下がる。



「だ、だ、大丈夫ですっ!」


「ならいいが……朝食に行こうか」


「はい……あの、私もご一緒していいんでしょうか?」



 私なんかが、こんな高貴な方と一緒に朝食を取るなんていいのだろうか。



「いいに決まっているだろう。私がアレンと食べたいんだ……そうだ、この部屋で食べようか」


「へっ? そんな……」



 それは断ろうとリオン様に言おうとしたが、もう既に遅し。ユーリはリオン様に言われ、もう出て行った後だった。







 




 





 







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