第28話 一件落着
それからハクロはおばあさんに差し入れを渡し、世間話をし、認知症テストをして問題がないことを確認すると、帰り支度にかかった。
「えっ、もう帰っちゃうの? これから狼が来るんじゃないの?」
「ハア? 狼が、何しに来るんだよ」
そこで王子は、狼がおばあさんと赤ずきんちゃんを飲み込んで、それを通りすがりの狩人が救出するであろうという詳細な未来予想を語った。
身振り手振りも交えて壮大に告げられた予言はしかし、ハクロの心には響かなかったようだ。
「狼の口が人間丸のみにできるほど大きいか? 腹に入った時点で、食い千切られて肉片になってるだろ。取り出す頃には胃液でドロドロだ。しかも無麻酔で腹切って、起きねえのかよ。それ以前に、人間二人入れたら腹はち切れてる。どんだけデカい狼だよ。だいたい、狩人も寝込み襲うなら溺死を装うような回りくどいことせずに、その場で捌いて食えよ、もったいない」
「いや、でも、狼……。狼が来ないと話にならないじゃないか」
「ワケわかんねえこと言ってっと、口の中に石突っ込んで奥歯ゴシゴシ言わせっぞ」
ついでに流れに枕して、耳もよく洗っておいてください。
こうして二人は帰路についた。既にハクロの頭の中はプリンでいっぱいだ。
何なら脳みそプリンだ。脳プ。
そんなハクロに、王子が水を差す。
なめらかプリンを作るには、蒸し焼きにするのがポイントだ。
「でもハクロ、気を付けないといけないよ。男はみんなオオカミなのだから」
「だったら、俺もオオカミで仲間ってことじゃねえか」
……あ、そうでした。
「じゃあ、このカチューシャつけて?」
「却下」
森は今日も平和です。
~第四章・赤ずきん おわり~
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