第12話 金の斧 et 銀の斧


「あなたが落としたのは(A)金のまりですか? それとも(B)銀の鞠ですか?」


「あ、その話はもう終わったんで。大丈夫です~」


 正直な木こりがバカ正直に教えてあげる。


 女神、再び水中へ。


 気を取り直して、もう一度。

 泉の水面が泡立って、中から女神が現れた。


「あなたが落としたのは(A)金の斧ですか? それとも(B)銀の斧ですか?」


「えっ……、ええっと……?」


 木こり困惑。彼はバカ=正直というより、どちらかといえばバカ>正直なのだ。

 正直に答えたいところだが(C)どちらでもない、という選択肢にない回答が彼の頭では導き出せない。


 金の斧と銀の斧を見比べて、無い知恵を必死に絞る。傍から見れば損得勘定をしているようにも見える。


「よく考えろ、ジャック。おまえは木こりだろう!」


 悩むジャックの顔を見て、ハクロが説得にかかった。さすが本作のヒロイン(男)、曲がったことは許さない。


「おまえ、金の密度を知ってるか? 鉄のだ。つまり、めちゃくちゃ重い。そんな斧、おまえに振り回せると思うか?」


「え? えっ?」


 混乱するジャック。畳みかけるように、小人の赤松も口を添える。


「それに金ってのは、けっこう硬度が低いんだぜ。よく金メダルかじるフリするだろ。それだけキズが付きやすいってワケよ。そんなもん、樹木の伐採に適していると思うか?」


「えぇーーー!?……?……?…………」


 あわれジャック、知恵熱に倒れる。


 ちなみに第一問の正解は(A)金の鞠だが、もちろん純金製ではない。


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