第2話 目覚めた姫君


「なにしやがんだ、テメエ! 人がせっかく気持ちよく昼寝してたってのに!」


「えっ? ……あ。うん……。あっ……え?」


 解説しよう。

 王子はまず、ずり落ちるドレスに着目していた。正確に言うと、ドレスそのものではなくだ。まあそれは仕方ない、王子だって男の子だもん。


 だがドレスの下にはなんと、さらに服を着ていた。オーソドックスな生成きなり色の半袖シャツだが、オーバーサイズで、起き上がると肩の位置がだいぶ下がる。

 あと、よく見るとボタンを1コ掛け違えているのも何気なにげにポイント高い。


 そして、薄手シャツのさらにその下は……ペッタンコだ。あら残念。

 まあ、それはいい。これからまだまだ育つチャンスはある。お任せあれ。王子はひとり、大きくうなずく。


 そこへ浴びせられたのが、上記の暴言だ。おやおや、お転婆てんばなお姫様だなあ、なんていう生易しいレベルじゃない。


 顔を上げると、姫君がにらんでいる。ひつぎの中に座って、めっちゃにらんでいる。

 美人が怒ると怖い。


「あ、あの……、お姫様……?」


「ハア? 誰が『お姫様』だ、ふざけんな。俺の眠りを返せ!」


 ワンチャン、ボクであることを期待したが、あえなく敗れた。


「ええっと……、キミはもしかして、男……なのかな?」


「なに言ってやがんだ。俺が女にでも見えんのか?」


 どこからどう見ても、二度見三度見しても、美少女なんですけど。


「もしかして……男の?」


 王子、新ジャンル開拓の予感だ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る