第51話 ノア兄ちゃんとの別れ

「好きなんだろ…?ちゃんと、伝えているのか?」


「え…と…。うん…。」


動揺しながらも、きちんと返事する。


「ていうか、何でノア兄ちゃん、私の気持ち知ってるの?」


「まぁな…。見てれば、分かるよ。見てれば…。」


優しい笑顔で、私を包んでくれる。

チラリとノア兄ちゃんとのキスの事が浮かぶ。


「ノア兄ちゃん…、」

「あの時はごめん…!」


私の声とノア兄ちゃんの声がぶつかる。


「俺、熱でどうかしてたんだ…。ほんと、ごめん…。」


「う…ん。」


「さくらは、もちろん、セイラムも俺にとって大事な存在なんだ…。それなのに…、ごめん…。」


うなだれるノア兄ちゃん…。


「うん。」


とだけ、返事した。


「…はぁぁぁ。……、大きくなったな…、さくら…。」


布団に拳を当てる。でも、表情は明るい。


「俺さ…。優さんの治療、受けてみようと思うんだ。」


真っ直ぐノア兄ちゃんの顔を見る。

ノア兄ちゃんの顔には、迷いはない。


「優さんの治療?」


初めて聞く。


「あぁ…。この間、優さんが入って来て俺に提案してくれたんだ…。」


治療に使われる薬は、マザーカミラが地球特有の熱病に効くように作ったモノらしい。つまり、ノア兄ちゃんの為に作られた薬。

投薬方法は、点滴で1日1回から始め、経過が良好であれば3日に1回、月1回、年1回まで、間隔をあけることができるらしい。

ただ、定期的に投薬する必要がある為、優さんの家から離れられないらしい…。


ノア兄ちゃんとの別れが、現実的なものとなる。


優さんから、今のセディオン星のレクチャーをセイラムと一緒に受けるが、何も頭に入ってこなかった。

セイラムもチラチラとこちらを見ているようだったが、それに対しての反応をする気にもなれなかった。

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